番外編 Part3 カナエの回想Ⅱ
翌朝
公用車は約束通りの時間に私を迎えに来ました。
中央魔法研究所の広大な敷地内には独身寮が点在しており、独身職員は格安の家賃で住む事ができます。
他の多くの職員と同じように、私も格安の家賃にひかれて独身寮に住んでいました。
私を乗せた公用車は静かに独身寮を出発すると、慣れ親しんだ道を中央魔法研究所の本館に向かって走っていきます。
ところが車は到着直前に方向を変え、本館脇の小道を、さらに奥に進んでいったのです。
それを知った私は少なからず驚きました。
その先にあるのは、セーフハウスだけです。
中央魔法研究所の奥にセーフハウスと呼ばれる施設が存在する事は、以前から知っていました。
ただしセーフハウスのある区域は、一般職員の立ち入りが禁止されているため、当然私も中に入るのは初めてです。
私のような一般職員には、セーフハウスの目的や、中に誰が住んでいるかといった情報は知る由もありません。
セーフハウスにも職員はいるはずですが、他の職員との接触は全く無いため、姿を見た事すらありませんでした。
『少女はセーフハウスに住んでいるのだろうか?』そんな事を私がぼんやりと考えている間に、セキュリティゲートを通過した車は、セーフハウスの正面玄関前に到着しました。
セーフハウスの外見は、小さなホテルの様にも見えます。
運転手に促され、車を降りた私がセーフハウスの正面玄関からロビーに入ると、そこにはタナカ所長が待っていました。
「よく来たね、昨日は機密保持のため自己紹介出来なかったが、私はこのセーフハウスの責任者であるタナカリュウイチだ。
今日からここが君の職場であり住居になる。」
「どうぞよろしくお願いします。ただ住居が変わる事を聞かされていなかったので、自宅に戻って引っ越しの準備をしたいのですが・・・」
「ああ、それについては全く心配しなくていい。
すべてこちらで準備する。
まず最初に言っておきたいのは、これから君がこのセーフハウスで見聞きした事は、外部の人間に絶対に口外してはいけない。
たとえ家族や研究所本館に勤務している友人でもダメだ。」
「分かりました。」
「次にセーフハウスの職員は、それ以外の職員とは出来るだけ接触しない事が求められる。
そのため君は今後、勤務中に許可無くセーフハウスの外に出る事は出来なくなる。
もちろん休暇はあるし、家族に会う事も可能だ。
外出の自由が奪われるわけではないので、そこは安心して欲しい。」
タナカ所長の説明を聞きながら、私は大変な職場に来てしまった事を痛感していました。
今までの生活・人間関係は全てリセットされ、気軽に移動する事も出来ない。
普通に考えれば息が詰まるような環境ですが、それでも私は不思議な事に不安を感じませんでした。
「それでは君が相手をする少女の部屋に案内しよう。
彼女は、このセーフハウスにゲストとして滞在している。」
セーフハウスの最も奥、2つの有人セキュリティゲートを通過した先に、彼女の部屋はありました。
そこで私は彼女、ハルカワシオリに出会ったのです。




