第13話 【歓喜と確信】
その頃、国防総省のチャーリー奪還作戦司令部は重苦しい空気に包まれていた。
サンディエゴ沖で犯人のクルーザーを発見してから既に1週間近く、アメリカ太平洋軍の総力を挙げた捜索にもかかわらず、逃走する敵艦の情報について何一つ得ることが出来ないまま、時間だけが過ぎていく。
焦りと諦めが司令部のスタッフを支配しようとした時、アンダーソン司令官の携帯電話に着信が入る。
電話の相手はタナカ少将だ。
「アンダーソン中将、我が軍は先程、北太平洋の公海上でチャーリー運搬中の潜水艦を発見、これを拿捕しました。」
「タナカ少将、本当ですか!撃沈ではなく拿捕で間違いないのですね?」
「拿捕です。現場の位置をお伝えしますので、引き渡しの準備を願います。」
「もちろんです。直ぐに準備します。」
現場の位置を確認し、電話を終えたアンダーソン司令官は、臨時司令部内のメンバー全員に聞こえるように大声で叫ぶ。
「諸君、同盟国である日本海軍がチャーリーを乗せた潜水艦を拿捕したぞ!作戦は成功だ!」
司令部は拍手と歓声に包まれる。
メンバーは互いに抱き合い、握手をする事で喜びを共有していた。
一方、アメリカ海軍に艦船の派遣を指示しようとしていたアンダーソン司令官には、どうしても気になる事がある。
通常、潜水艦の拿捕というのは、撃沈より遥かに難しい作戦である。
それをあっさりと成し遂げた艦船とは一体何者なのか?
『オシリス・・・』
アンダーソン司令官は、ワシントンD.C.のパーティー会場で耳にした名前を、不意に思い出す。
『オシリスは実在する。敵艦を拿捕したのはオシリスだ!』
それはアンダーソン司令官の勘というより、確信に近かった。
アンダーソン司令官は、オシリスについて今すぐ考え始めたい誘惑に駆られるが、それが許される状況でない事は、彼自身が誰よりも理解している。
オシリスへの関心を一旦振り払ったアンダーソン司令官は、海軍とホワイトハウスへの連絡を取り始めるのであった。




