第12話 【完勝】
「つかまえた」
シオリは敵艦を魔力航行の支配下に置いてしまう。
一度そうなってしまえば、魔力航行のパワーは、スクリューの推進力など遥かに凌駕する。
「まず、敵艦の足を止める。」
「分かった」
ユウキの命令に従い、シオリは敵艦を停止させる。
全速潜航していた敵艦は、まるで車の急ブレーキがかかったように停止してしまう。
発令所内で立っていた敵艦の艦長は、つんのめるようにバランスを崩す。
ここに至り、ようやく敵艦のクルーも異常に気付いたものの、魔力航行の支配下に置かれてしまった時点で、もはや全てが手遅れである。
「何だ?一体何が起こったんだ?報告しろ!」
艦長の問いに対して、航海長が艦の現状を報告する。
「艦長、現在の速度は0ノット、本艦は停止しています!」
「何だと!原子炉はどうなっている?機関長!」
「艦長、原子炉は正常です。出力は全速を維持」
「ではどうして停止している!?何を言っているんだ?もう一度確認しろ!」
突然の事態に、敵艦は混乱状態に陥っていた。
「敵艦の停止を確認」
レイナの報告を聞いたユウキは、シオリに命令する。
「シオリ、敵艦を海面まで引き上げてくれ。引き上げたら通信アンテナを無効化する。」
「了解、敵艦を引き上げたら、アンテナを破壊する。」
引き上げる瞬間、敵艦内にもガクンというショックが伝わり、混乱に拍車がかかる。
「今度は何だ!?動き出したんじゃないのか?航海長!」
「艦長、本艦は急速浮上しています!このままでは30秒以内に海面に到達します!」
「直ぐに浮上を止めろ!」
「駄目です!舵が効きません!」
「馬鹿な!そんな馬鹿な・・・」
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オシリスの発令所では、レイナが敵艦の状況を刻々と報告している。
「敵艦は海面に到達」
「シオリ、アンテナは?」
「破壊した」
全ての準備が整った事を理解したユウキは、最後の攻撃命令を下す。
「シオリ、ひっくり返せ!」
「ひっくり返す」
次の瞬間、海面に引き上げられた敵艦はくるりとひっくり返り、艦橋が海中に没すると共に、艦底部分とスクリューが海面上に露出する。
それで全ての決着がついた。
異常を感知した敵艦の原子炉は、自動安全装置が働き、緊急停止する。
こうして反撃能力と逃走能力、更に通信手段までも失った敵艦は、完全に無力化されてしまった。
一方、攻撃側のオシリスはかすり傷一つ負っていない。
文字通りの完勝である。
「拿捕成功。レイナ、グレートヘイブンに報告してくれ。」




