第8話 【追いつめられるアメリカ】
事件の5日後、国防総省でチャーリー奪還作戦の指揮を執るアンダーソン司令官の下に、重要な情報がもたらされる。
「中将、ロバート・ホウが見つかりました。」
「本当か!」
「先程、アメリカ合衆国沿岸警備隊がサンディエゴ沖で停泊中のクルーザーを発見し、甲板上でロバート・ホウの遺体を確認しました。
沿岸警備隊が船内を徹底的に探索しましたが、残念ながらチャーリーは見つかりませんでした。」
「そうか・・・では、チャーリーは既に国外に持ち出されたと見て間違いないな?」
「はい・・・」
「よし、それでは大西洋ルートとカリブ海ルートおよび南北の陸上ルートの監視を大幅に縮小し、太平洋ルートの監視に集中させる。
チャーリーは今、船か潜水艦のどちらかに乗せられている。必ず捕まえるぞ!」
「了解しました!」
「なお今の情報については、『そのまま』同盟各国にも伝える。」
「『そのまま』ですか?」
「そうだ、『そのまま』だ。
今はチャーリーを取り戻すのが最優先だ。下手に隠す必要など無い。」
「分かりました、直ちに連絡します。」
『まだチェックメイトではない・・・』
ロバート・ホウの死亡により、アメリカ国内で彼を拘束し、背後関係を突き止める事は出来なくなった。
今や逆転勝利のためには、サンディエゴ沖でチャーリーを受け取った艦船を公海上で捕まえる以外に方法は無い。
つまりアメリカ陸軍単独での問題解決は、もはや不可能であり、アメリカ合衆国および同盟国海軍の協力が必須になった事を意味する。
アメリカ陸軍にとっては最悪の展開である。
陸軍に所属するアンダーソン中将は、元々は海軍を動かす何らの権限を持っていない。
しかし統合参謀本部直属である臨時作戦司令部の司令官を兼任する立場であれば、話は別だ。
チャーリー奪還作戦の臨時司令部が統合参謀本部直属である以上、一時的とは言え、アンダーソン中将は陸軍のみならず、海軍と空軍を動かす権限を手に入れた事になる。
最悪の場合に備えた、アンダーソン中将の政治工作が、ここにきて生きる事になった。
実行犯の死亡という圧倒的に不利な状況にもかかわらず、アンダーソン中将は決して諦めていない。
こうして追撃戦の舞台は、アメリカ本土から太平洋へと移動した。
逃走する潜水艦を太平洋で迎え撃つのは、アメリカ太平洋軍とオシリスである。




