第5話 【それぞれの思惑】
アンダーソン中将を乗せた車がホワイトハウスを出発した直後に、会議の結果を心配したハワード大佐からの電話連絡が入る。
「いかがでしたか?中将」
「会議は成功だ。チャーリー奪還作戦は承認された。概ねこちらのシナリオ通りに進んでいる。」
「スコウクロフト補佐官は、何か言ってきましたか?」
「ああ、彼は大層お怒りだったよ、大層ね・・・ただ彼が怒るのも当然だ。
もしこの事件が表沙汰になった場合、発足以来2年間、大きな失点の無かったヒューム政権にとって大きな痛手になる事は避けられない。
スコウクロフト補佐官を始めとした大統領側近は、事件が公表される事で、間近に迫った中間選挙に悪影響を与える事を最も恐れているのだろう。
チャーリーを取り戻し、事件を一刻も早く解決する事、それが我々軍人の使命だ。
それでは本日よりチャーリー奪還作戦を開始する。
ネバタでの核実験は正式に中止とし、残った核魔法兵器は全て陸軍が厳重に保管する。
今後しばらくは核魔法兵器開発の技術スタッフであっても、民間人に核魔法兵器は触らせない。いいな」
「分かりました」
「とにかく今回は時間が限られている。具体的な手順は君に任せる。」
「承知しました。核魔法兵器の保管の件はお任せください。」
「私はこれから国防総省に向かい、臨時司令部の司令官として、チャーリー奪還作戦を指揮する。
君は核魔法兵器の保管を終了させたら、直ぐに合流してくれ。」
ハワード大佐への指示を終えたアンダーソン中将には、同盟国への協力依頼というデリケートな仕事が待っている。
事の性質上、当然ながら通常の外交ルートは使えない。
「さて、どうするか・・・」
その時、旧知の男の顔が浮かんだアンダーソン中将は、早速車中から国際電話をかける。
「Hello, Ryuichi...」
この日、ホワイトハウスで決められたチャーリー奪還作戦は、世界各地の同盟国へ秘密裏に広がっていくのだった。




