第3話 【深夜の急報】
午前1時
ポトマック川沿いにある、マンダリン オリエンタル ワシントンD.C.のツインルームで眠りについたばかりのアンダーソン中将は、無機質な電話の音で起こされる。
『何だ?こんな時間に・・・』
電話をかけてきたのは、核魔法兵器開発の技術責任者であるハワード大佐だ。
彼はアンダーソン中将が留守の間、ネバタ核実験場で核魔法兵器開発を指揮している。
ハワード大佐の報告はアンダーソン中将の目を覚まさせるのに十分な内容だった。
「お休みのところすみません、中将・・・チャーリーが盗まれました。」
「盗まれた?」
「はい、紛失ではなく盗難です。」
"チャーリー"とは今回の実験のために同時に開発された4個の核魔法兵器の内、4番目の個体のコードネームである。
「あの警戒厳重な施設から盗み出されるとは・・・核兵器の小型化が裏目に出てしまったか!?」
「はい、私も同じ考えです。」
「それでも起爆シークエンスの魔法式は暗号化されているから、盗まれても解読は不可能だろうが・・・」
「いえ、それがチャーリーは完成品ではなかったため、魔法式は暗号化されておりません。」
「何だと!!」
「核魔法兵器の製造手順として、一旦魔法式を暗号化すると元に戻せないため、最後に魔法式を暗号化して完成させるのですが、暗号化する直前のチャーリーが狙われました。」
「なんて事だ・・・」
「同じ部屋に別の個体も保管されていたにもかかわらず、そちらには全く手をつけていません。
犯人はチャーリーだけが暗号化されていない事を知っていたんですよ。間違いなく内部の犯行です。」
核魔法兵器は核分裂の原料であるプルトニウム239と、起爆シークエンスを魔法式にして封入した起爆ユニットの2つで構成されている。
この魔法式こそが、核魔法兵器の最高機密である。
魔法式が解読されてしまうと、後はプルトニウム239を入手するだけで、誰でも容易に核魔法兵器を製造する事が出来てしまう。
だからこそ魔法式は最先端の暗号技術により、厳重に護られているはずだった。
『暗号を解読するのではなく、暗号化される前に手に入れる・・・やられたな』
アンダーソン中将は自分達が完全に出し抜かれた事を、心の中で認めざるを得ない。
悔やんでも後の祭りだ。
今は一刻も早くチャーリーを取り戻す事が最優先である。
「直ちに全てのゲートを閉鎖しろ!核実験場から誰一人出すなよ。」
「もうやっています。しかし規制する以前に出てしまった者については、手の打ちようがありません。」
「犯人がまだ外に出ていない可能性も残っている。施設内を徹底的に調べろ。」
「分かりました。」
「私は明朝、事の次第を大統領に報告する。何かあれば直ぐに連絡してくれ。」




