番外編 Part2 オシリスで一番偉い人(完結編)
その頃、すっかり熱が下がったカナエは、クルーの食事が心配になり、そっと様子を見に来ていた。
『絶対安静って言われたけど、やっぱり心配よね・・・』
発令所に向かう途中で何気なくキッチンを覗いたカナエは、今朝まで整理整頓されていたキッチンの惨状を目の当たりにする。
「何ですか?これ・・・」
キッチンのあちこちに食器や食材が散乱し、床はなぜか粉まみれだ。
一体どうすれば、短時間でこれだけ散らかるのか、カナエには到底理解できない。
最初は驚きのあまり呆然としていたカナエだが、その表情は見る見る険しくなっていった。
その直後、作戦会議が続いていた食堂とキッチンをつなぐ扉がいきなり開き、眉をピクピクさせたカナエが食堂に入ってくる。
驚いたのはユウキである。
「カ、カナエさん、何故ここに? 絶対安静のはずでは!?」
ユウキの問いかけを無視したカナエは、抑揚のないトーンでゆっくりと質問する。
「キッチンで戦争でも起きたのかしら?」
「コザクラ一等兵曹、誤解があるようですが、あれはちょっとした手違いなのです。」
「そうそう、超頑張った成果って言うか、チョット散らかっちゃったけど・・・」
「へー、あれが『チョット』ですって?」
ミキとレイナが必死に弁明するが、完全に逆効果である。
ついにブチ切れたカナエはクルー全員に向けて、大声で言い放つ。
「あなたたち全員正座なさい!!」
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5分後、状況を把握したカナエは、深く溜息をつくと、クルーに説明を始める。
「事情は分かりました。
いいですか、こういう時のために、オシリスには暖めるだけで食べられる保存食が大量にストックされているんです。
まさか誰も知らなかったんですか?」
正座した全員が、うなだれながらコックリと頷く。
「だっていつもカナエが作ってくれてたし、そんなのあるなんて思わないじゃん・・・」
レイナが小声でボソボソつぶやく。
「レイナとミキさんには、明日から料理の勉強をしてもらいます!」
「えぇー!」
思わず声を合わせて抗議しようとする二人をカナエが制する。
「何か文句でも・・・?」
「わっ、分かったよ、カナエ」
「指示に従います、コザクラ一等兵曹」
もはや二人に逆らう気力は残っていない。
「よろしい。じゃあ少し待ってて、今ある食材で何か作るから」
「やったー!!」
叫び声を上げたレイナだけでなく、他のクルーも喜びを爆発させる。
普段は無表情のシオリも明らかに嬉しそうだ。
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『おいしい!』
それから1時間後、半日ぶりで食べるカナエの料理に、クルーの全員が感動していた。
完全な失敗作だったカレーは、カナエの手にかかると、カレー風味のシチューに見事に変身していた。
一方、炊飯に失敗したライスは海鮮たっぷりのピラフに生まれ変わっている。
「おかわり!」
大皿一杯のピラフをあっという間に平らげたレイナがおかわりを要求する。
さっきまでの非常事態がウソのように幸せそうなクルーの様子を見ながら、シオリがつぶやく。
「オシリスで一番偉いのはカナエだな、みんなを笑顔にできる。」
ユウキもそれに同意する。
「確かに、こんな事が出来るのはカナエさんだけだ。」
「おかわり!」
早くもレイナが2度目のおかわりを要求する。
カナエはレイナの食欲に苦笑しながらも、どこか嬉しそうだ。
こうして最大の危機を脱したオシリスの晩餐は、まだまだ続くのだった。




