番外編 Part2 オシリスで一番偉い人(プロローグ)
『おかしい・・・』
ある日のオシリスの食堂、クルー全員で昼食を取っていたユウキは、カナエの様子が普段と違う事に気付いた。
いつものカナエと比べて元気が無く、顔色も冴えない。
「カナエさん、顔色が悪いようだけど、少し休んだ方が良くないか?」
「心配ないよ、ユウキ君。」
カナエは短く返答すると、食後のお茶を用意をするために、キッチンへ移動する。
作戦行動を終え、帰途についたオシリスでは、クルーのやるべき仕事は少ない。
だがカナエは例外だ。クルーの生活をサポートする彼女だけが休みなく働いている。
『このままで大丈夫だろうか?』
ユウキがそんな心配をした矢先、キッチンの中から「ガシャーン」という音が聞こえてくる。
反射的に立ち上がったユウキがキッチンに駆け込むと、そこにはキッチンの床にへたり込むカナエの姿があった。
「カナエさん!」
駆け寄ったユウキに気付いたカナエは顔を上げると弱々しく微笑む。
「ごめんなさい、ちょっと目まいがして・・・いま片付けるね。」
「熱があるじゃないですか!」
カナエの額に手を当てたユウキは、艦長として直ちに指示を出す。
「カナエさん、今から一緒に医務室へ行きましょう。
ヨロイ少尉、後片付けを頼む。」
「承知しました」
ユウキに続いてキッチンに入ってきたミキが、早速片付けを開始する。
「さあ、カナエさん」
遅れてキッチンに入ってきたレイナとシオリが心配そうに見守る中、ユウキの肩を借りてやっと立ち上がったカナエは、ユウキに支えられながらキッチンを出て行った。
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カナエが倒れてから2時間後
オシリスの発令所に、カナエ以外のクルー全員が集められ、緊急会議が開かれた。
会議の冒頭、ユウキが現状を説明する。
「幸いコザクラ一等兵曹の病状は深刻ではない。私は艦長として48時間の絶対安静を彼女に命令した。
そこで問題はコザクラ一等兵曹が復帰するまでの48時間、我々の生活をどうするかだ。」
「食事ですね」
「そう、それが最大の問題だ。」
「食事については、私が担当するしか無いと考えます。」
「ヨロイ少尉、理由を聞かせてくれ。」
「消去法ですよ、艦長。この任務をオシリスの最高指揮官である艦長にお願いするわけには参りません。
航行の要となるハルカワ大佐も同様です。センジュレイナは問題外。となれば、残るは私という事になります。」
「ちょっと待った!問題外ってどういう意味だよ!」
レイナの抗議を完全に無視して、ミキは話を続ける。
「私の場合、コザクラ一等兵曹に比較すれば、技術的に問題はありますが、そこは気合でカバーします。」
「はーい、センセイ、ミキには絶対無理だと思いマース」
「センジュレイナ、食べもしない内に絶対無理とは聞き捨てなりませんね。」
「大体アンタが料理しているところなんて、アタシ見た事無いし、料理上手そうに見えない!」
「少なくとも、あなたより上手く作れる自信はあります。」
「ユウキ!ミキなんかに料理を作らせたら、食べた人全員、食中毒になるから!」
「センジュレイナを信じるか、私を信じるか、ミカミ艦長、ご決断を。」
レイナとミキがジッと見つめる中、ユウキは苦渋の決断を下す。
「・・・分かった。ヨロイ少尉、君に任せる。」
「ゲェー」
不満をあらわにするレイナを横目に、勝利したミキは満面の笑みを浮かべる。
こうして4時間後の夕食は、ミキが作る事になった。




