第2話 【アキヤマ艦長の憂鬱】
「第一種戦闘配備を解除、操艦を副長に引き継ぐ」
艦が辛うじて死地を脱した事を理解したアキヤマ艦長は、自室に戻り、改めて今回の戦闘を振り返る。
『なぜ敵は我々を見逃したのだ・・・?』
戦闘海域からの全速離脱中に魚雷攻撃を受けた以上、
敵艦は最高速度で潜航するふゆしおに追いついていた事になる。
一方、限界深度を潜航中のふゆしおには反撃能力が無い。
ふゆしおを容易に撃沈可能な状況にありながら
魔法魚雷を一回発射しただけで、あっさりと手を引いてしまう。
追撃戦としては極めて不自然であり、そもそも本気で攻撃する気があったのか、
理解に苦しむ行動と言わざるを得ない。
アキヤマ艦長は、潜水艦隊で将来が嘱望されるエリートであり
実際、極めて有能な指揮官でもある。
そんなアキヤマ艦長にとっても、今回の敵の目的は全く見当が付かなかった。
さらに驚くべきは、最後の魚雷攻撃が艦底方向から行われたという事実だ。
『敵は我々の下にいた。そこから攻撃したとしか考えられない・・・』
『水深1400m以下の深海で通常の作戦行動を行える艦が存在すると言うのか?』
「信じがたい・・・」
アキヤマ艦長は思わず独り言を漏らす。
それは、あまりにも軍の常識から外れており、アキヤマ艦長は自ら導き出した結論を受け入れられないでいた。
『司令部は私の報告を信用するだろうか・・・?』
アキヤマ艦長の漠然とした不安をよそに、ふゆしおは母港へと戻っていく。




