第14話 【約束】
半年振りにシオリと再会して以来、ユウキは毎週のようにシオリの元を訪ねるようになった。
元々口数が少なく、外にも出られなくなったシオリのため、ユウキは自分から色々な事を積極的に話すようにしていた。
家の近所の様子、学校で流行っている事、好きな芸能人の話・・・
シオリはそんなユウキの話を楽しそうに聞いていた。
天気の良い日には、時々2人で裏山の探検に出かける事もあった。
広大な裏山は全てがセーフハウスの敷地であり、普段は全く人が立ち入らない。
2人はそこで野鳥を観察したり、サワガニを捕ったりしながら、日が傾くまで2人だけの時間を過ごしていた。
そんなある日、いつもなら山頂にたどり着いたところで戻っていた2人は、シオリの誘いで、更に先へと進む事にした。
山の自然は2人を優しく癒し、シオリにも笑顔が出てくるようになったその時、突然、2人は現実に引き戻される。
「あ・・・」
目の前に現れた、高さ3メートルを超える無機質なフェンスが、2人の行く手を塞いでいた。
カメラとセンサーが取り付けられたフェンスは、彼女に自らの立場を知らせるには十分である。
恐らくフェンスに触れただけで、警報が鳴り響くのだろう。
それはシオリを護る壁であると同時にシオリを閉じ込める壁でもあった。
シオリはフェンスを無表情のまま見つめている。
「シオリ」
「・・・・・・・」
シオリは返事をしない。
返事をしない事が、彼女の気持ちを雄弁に語っていた。
今日も普通に家に帰る事が出来る自分、でもシオリは・・・
そう思ったユウキは珍しく感情的な言葉を口にする。
「シオリ、ここから逃げよう!僕も手伝うよ!」
「ダメ、みんなに迷惑がかかる。逃げても家には帰れない。それに捕まったら二度とユウキには会えなくなる。」
「だけど!・・・そうだけど!」
「問題ない・・・私が我慢すれば問題ない」
ユウキは涙がこぼれそうになるのを必死にこらえる。
『シオリが泣いていないのに、自分が泣いてどうするんだ!』
まだ中学生の自分、シオリのために自分は一体何が出来るだろう?
ユウキは今の自分が出来る精一杯の約束をシオリと交わす事にする。
「いつか必ず、僕はシオリを自由にする。約束するよ」
「ありがとう・・・今はユウキがいてくれる。ユウキと一緒なら何も怖くない。」




