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魔法潜水艦オシリス  作者: 天空ヒカル
第1部 北太平洋の覇者
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第12話 【2人の想い】

「シオリ!」


ユウキの声が聞こえたのだろう、シオリは直ぐに反応し、小走りで車に近づいてくる。


車を降りたユウキは、近づいてきたシオリの手をしっかりと握り締める。


「ユウキ、来てくれた」


「シオリ、本当にシオリだよね?」


「ウン、本物」


お互いに話したい事は沢山あるはずなのに、それ以上の言葉が出てこない。

2人は笑顔で見つめ合ったまま、お互いの手を握り続けていた。


しばらくして少し落ち着いたユウキは、シオリの母親が涙ぐみながら2人の様子を見つめている事に気付く。


「す、済みません」

急に恥ずかしくなったユウキは、握っていた手をパッと離してしまう。


そのタイミングで、1人の女性がユウキに近づいて来た。

「初めまして、ミカミユウキ君。私はコザクラカナエと言います。よろしくね」


「よろしくお願いします」

ユウキはぺこりと頭を下げる。


「ここで立ち話も何だし、中に入りませんか、お母様もどうぞ」

カナエに案内され、ユウキ達は正面エントランスから中へと入って行く。


そこはホテルのロビーのような空間で、外光がふんだんに取り入れられ、あちこちに植物が配置される事で、心地良い雰囲気を(かも)し出している。


他には誰もいないロビーのソファーに4人が腰を落ち着けたところで、カナエが口を開く。


「ユウキ君、ここはセーフハウスと呼ばれる場所の一つなの。今、シオリちゃんはここに住んでいます。私はシオリちゃんの身の回りを世話をしているけれど、他にもスタッフは沢山いて、シオリちゃんを護っているわ」


『シオリを護る?』

ユウキとしては、なぜシオリが護られなければいけないのか、理解できない。


いや、そもそも理解できない事だらけなのだ。

まだ中学生のユウキにとって、全てが理解の範疇(はんちゅう)を超えていた。


ユウキの怪訝(けげん)そうな顔を見たカナエはにっこりと微笑(ほほえ)むと、話を続ける。

「セーフハウスに訪問者が来るのは、とても珍しい事なの。外部の人間がここを訪れたのは、シオリちゃんの御両親を除けば、ユウキ君が初めてよ。

おっといけない、ユウキ君が話をしたいのは、私じゃないよね。

シオリちゃん、今日は天気も良いから、ユウキ君を裏庭に案内してあげたら?

お昼になったら帰ってきてね、皆でご飯にしましょう」


「分かった・・・、ユウキ、こっち」


正面エントランスの反対側、建物の裏側には、よく手入れされた庭が広がっていた。

シオリとユウキはロビーの端にある小さな扉から裏庭へ足を踏み入れる。


裏庭の中央には小さな池があり、魚が泳いでいる。

2人は池の周りを散策していた。


2人きりになっても、シオリは何も話そうとしない。

ユウキは思い切って、一番気になっている事を聞いてみる。

「さっきのお姉さん、ここがシオリの家だって言っていたけど?」


「うん・・・」


「シオリ、いつになったら帰ってこれるの?」


「・・・私は、帰れない」


「帰れないって・・・、じゃあ学校はどうするのさ?」


「学校には、通えない」


ユウキの足が止まり、思わず声が大きくなってしまう。

「何だよそれ!家にも帰れない、学校にも行けない、シオリはこんな所で1人で過ごすって事じゃないか、そんなのおかしいよ!」


そこまで言ってから、ユウキはハッと気付く

そんな事は、シオリだってとっくに分かっているのだ。

ユウキはすぐさま反省する。

シオリは感情表現が不得意なだけで、感情が無いわけではないのだ。

「ゴメン、傷つけるつもりじゃなかったんだ。」


シオリはユウキをじっと見つめて口を開く。

「だから、ユウキを呼んだ。

ユウキがいれば、私は1人じゃない」


シオリの言葉にユウキも笑顔で応える。

「そうだね。離れていても、僕達はいつも一緒だ」

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