第11話 【再会】
「ユウキ君、シオリに会ってくれる?あの子がとても会いたがっているの」
シオリの母親から突然、そう告げられたのは、シオリがユウキの前から姿を消して半年後の事だ。
ユウキの家とシオリの家はすぐ近所にあり、母親同士が知り合いだった事から、2人は小さい頃から一緒にいる事が多かった。
忙しいシオリの両親に代わって、ユウキの家でシオリを預かることも良くあり、ユウキは2つ年下のシオリを、実の妹のように可愛がっていた。
しかし半年前、シオリは突然いなくなってしまう。
10日ほど出かけると言ったきり、いつまで待っても帰って来なかったのだ。
シオリの両親にシオリの行き先を何度たずねても「遠くに行った」としか答えてくれなかった。
再会を諦めかけていたユウキにとって、突然の変化に戸惑いつつも、シオリにまた会える喜びの方が遥かに上回っていた。
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次の日曜日、ユウキは初めて乗る黒塗りの高級セダンで魔法省に向かっていた。
車に乗っているのは、運転手を除けばシオリの母親とユウキの2人だけである。
車が魔法省の地下駐車場に到着すると、2人はそこで別の車に乗り換え、再び魔法省を出発する。
乗り換えた車の窓ガラスには、外から車内の様子が見えないような光学魔法が施されている。
そのため、車内から外の様子を見る事が出来ても、その逆は出来ない。
魔法省を出発した車は、高速道路で東京郊外に向かっていた。
ユウキは今日の最終目的地を知らない。
行き先を聞いても、どうせ教えてくれないと考えた彼は、最初から聞かなかったのだ。
車が高速道路を降りてしばらく走ると、施設の入り口らしき、大きなゲートの前に到着する。
ゲートは高さ3メートル以上の巨大な鉄製の扉で仕切られており、ゲートの外から中の様子を窺い知る事は出来ない。
シオリの母親が後席の窓ガラスを開け、ゲート脇のブースから出て来た警備員にIDカードを渡す。
警備員はカードリーダーのような機器を取り出してカードを差し込むと、機器から「ピッ」という電子音がすると同時に青いランプが点灯した。
警備員はIDカードを返すと、もう一度ユウキとシオリの母親の顔を確認してからブースへ戻ってゆく。
そのまま車内で待っていると、目の前の扉がゆっくりと開き始めた。
驚いた事に、鉄製の扉が開いた先には、同じような鉄製の扉が進路を塞いでいた。
車は最初の扉をゆっくり通過すると、次の扉の前で再び停車する。
すると最初の扉がゆっくりと閉まっていき、扉が完全に閉じてから次の扉がスルスルと開き始める。
次の扉が開くと、目の前には敷地の奥へと続く私道が現れたが、道以外は森林が広がっているだけで、建物は全く見えない。
2人を乗せた車が施設内の私道を走り始めてから数分後、突如として視界が開け、正面に巨大な建物が姿を現す。
ところが車は、その建物には向かわず、さらに奥へと進んでゆく。
道は車一台がやっと通れるほど細くなり、その両側には相変わらず樹林が広がっている。
細い道をしばらく走り続けると、視界に次のゲートが見えてきた。
道はそこで行き止まりだ。
シオリの母親は、慣れた様子で無人のゲート脇に設置されている操作盤にカードをかざして暗証番号を押すと、ゲートが開き始めた。
ゲートを通過すると、再び視界が開け、正面に小さなリゾートホテルのような施設が現れる。
車はその正面エントランスに停車した。
どうやらここが目的地のようだ。
ユウキはエントランスの奥に立つ少女を見付け、思わず声を上げる。
「シオリ!」




