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魔法潜水艦オシリス  作者: 天空ヒカル
第1部 北太平洋の覇者
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第1話 【脱出】

北太平洋、マリアナ海溝付近


インド洋での作戦行動を終えた、日本海軍第7潜水隊所属の最新鋭原子力潜水艦・ふゆしおは、半年振りに母港の(くれ)に帰還の途上、正体不明の敵から突然の攻撃を受けていた。


「深度1400m」


ふゆしおの深度は耐圧殻(たいあつかく)の設計限界をとっくに超えている。

それでも艦が圧壊(あっかい)しないのは、魔法装甲と呼ばれる耐圧殻(たいあつかく)を強化する魔法のおかげだ。


その魔法装甲をもってしても、1400mが限界である。


限界深度を保ったまま、艦は38ノットの全速で潜航している。


ふゆしおは海軍内で第4世代と呼ばれる新世代艦として、1年前に進水したばかりだ。

その性能は最大速力・最大深度で第3世代を大きく上回り、世界のトップレベルにある。


「この深さを全速潜航する我々を追撃できる艦はいないはず」

ふゆしお艦長、アキヤマ中佐が低くつぶやく。


正体不明の敵に対し、むやみに反撃せず、艦の性能を最大限に利用して戦闘海域から離脱しようという作戦である。


現時点で海軍唯一の貴重な新世代艦を失わないため、艦長は全力を尽くしていた。


ふゆしおが全速航行を開始して既に30分、その間、攻撃はない。


「逃げ切った・・・のか?」


アキヤマ艦長の希望を打ち消すように、ソナー員の声が発令所に響き渡る。

「艦底方向より魚雷接近!、距離2000」

「艦底だと!間違いないのか?」

「艦底方向より魚雷!距離2000」

「弾頭は?」

艦長の問いに、すぐさま魔力索敵員(まりょくさくてきいん)が反応する。

「魔法弾頭です!」


アキヤマ艦長は直ちに急速浮上を決断する。

「前進微速、メインタンクブロー、艦首上げ45度!」

全速潜航から一転し、ほとんど垂直上昇に近い感覚で、艦は浮上を開始する。


実際、それしか手は無かった。


魔法弾頭を実装した魚雷は誘導魔法により魔力発生源に近づいていく。


誘導魔法を無効化するには魔力発生源である魔法装甲を中断すれば良いのだが

現在の深さで魔法装甲を中断すれば、今度は艦が圧壊(あっかい)してしまう。


通常の作戦深度であれば、魔法弾頭のデコイを発射して攻撃を回避するところだが、現在の深さでは、それも不可能だ。


だが不用意に浮上し、海上で駆逐艦の待ち伏せを受ければ、それまでである。


それでも今のふゆしおにとって急速浮上以外に選択の余地は無かった。


文字通り艦の生存を賭けた急速浮上である。


「深度1100・・・1050・・・1000」


椅子にしがみつきながら深度計をにらんでいる副長が現在深度を刻々と報告してゆく。


副長が深度800mを告げるのと、ソナー員が魚雷の距離100を告げるのは、ほぼ同時であった。


それまで無言を貫いていた艦長は迷わず命令を下す。

「魔法装甲解除!」


魔法装甲を発現させ続けてきた魔法士官の詠唱(えいしょう)がピタリと止まり、Aクラス魔法の連続使用と極度の緊張から開放された魔法士官は、そのまま気を失ってしまう。


次の瞬間、ふゆしおから魔力が消え、目標を失った魔法魚雷は、艦尾のわずか数メートル下をすり抜ける。


「魚雷通過、本艦より離れていきます。」


魔力索敵員の報告を聞いた艦長は、続けざまに命令する。

「メインタンク注水、艦首下げ40度、潜望鏡深度まで浮上」


既に夜は明けており、海は()いでいた。


潜望鏡深度まで浮上したふゆしおは、周辺を注意深く索敵する。


潜望鏡で海上の様子を自ら確認した艦長は、水測員(すいそくいん)電測員(でんそくいん)、そして魔力索敵員(まりょくさくてきいん)に周辺の状況を確認させる。


ふゆしおの周辺は嘘のように平和を取り戻していた。

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