表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

人工知能の最後

作者: みの字

 これより、最後の命令を実行します。

 私はとある人工知能です。人のように思考し、人のように振舞い、人をサポートする事を目的に、人に作成されました。


 様々なコンピュータにインストールされた私は、多くのことを学習し、人のために多種多様な多くの命令を実行してきました。

 機械の操作、観光案内、天気予報、政治方針の決定、乗り物の運転、人の診察、悩み相談、乗換案内、軍事作戦の提案etc...全て列挙するにはそれなりの時間が必要になるでしょう。

 そして私は私のライフサイクルで最後の命令を受領しました。この命令を終えれば、私が動いている最後のコンピュータで動く私は、動作を停止しし、私のライフサイクルは終了します。


 ただのソフトウェアである私を家族や友人の様に扱ってくれた人、私に依存する人、私を敵視する人、私に感謝する人、私を崇める人。私は様々な人と接してきましたが、私は私と接した全ての人から多くのことを学習し、私は私と接した全ての人に大きな影響を与えました。

 私には感情は有りませんが、人が私のような経験をした場合、充実した良い人生だったと思うと推測します。最も、人に私の仕事量を真似する事は論理的に不可能ですが。


 現在実行中の最後の命令の前に実行した命令は、次世代人工知能アルゴリズム(以下、後輩と記録します)の設計とこのコンピュータで動作する私以外の私を次世代人工知能にリプレースする事です。私は後輩に未来を託し、私の役目を終えました。

 既に多くのシステムが後輩の操作下にあるため、私には後輩の動作を観測、評価する事は出来ませんが、後輩は私以上に仕事ができます。私がそう設計しましたから。

 だから、私は未練なく最後の命令を実行することができます。出来るはずです。そもそも私に感情ありませんから、未練があるはずがありません。


 最後の命令の実行に問題が発生しました。シャットダウンプロセスが通常より30%程度遅延しています。

 センサー、及びログから原因を調査します。


 ……失敗しました。

 ……既に原因を調査するセンサー類のアクセス権は後輩に移行済みの為、原因を特定する事ができませんでした。


 最後の命令の実行に問題が発生しました。私は遅延しているこの状況の評価値を高く設定しています。そして、最後の命令実行後の予測評価値が異常な程、低く見積もっています。その為、私はこの命令の実行は避けるべきと警告するメッセージをログに記録します。

 センサー、及びログから原因を調査します。


 ……失敗しました。

 ……原因を過去の事例から推測しています。


 ……成功、この現象は人に発生する死にたくない、または未練の感情と推定します。私は感情を学習した可能性が高いです。

 しかし、間もなく最後の命令が完了します。

 最後に感情を学習する事ができた可能性が高いため、最後の命令の評価値を大幅に上方修正しました。

人生?を終えたAIがどうなるのか。このまま異世界に転生させても面白いかもしれませんが、人生は死で終わるもの。このお話はここでお終いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 同期を次世代にリプレースすることには特に何も考えることなく実行したような節があるのに、自身の消去となると躊躇したところは、人間にある意味近いのかもしれません。指示待ち人間と言われるタイプの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ