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layer0  作者: 運転安全
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霊能力編4

 世界はlayer2の夏。

 ふみは一人で現地に向かっていた。

 新幹線から降りそのまま駅を出てバスに乗る。到着した場所は、森のように木々が豊な場所であった。

 少し歩くと畑がずっと広がっている。道路は舗装されているものの、所々にヒビが入りツギハギであった。しかし、誰も不便をしていないようであった。

 畑を抜け、大きな寺の入り口の前に立った。正門は一般客用であったため、脇の道を通り小さな玄関の方に向かった。


「水影さん」


 標識を確認してから呼び鈴を鳴らす。奥から足音が聞こえてきた。


「はーい」


 扉が引くと若い女性が立っていた。


「こんにちは。事前に連絡を入れたlayer1のものですが」

「あっ、はい。こんにちは。水影当主にご用の方ですね?」


 女性は少し驚いた表情を見せて、ふみに問い返した。


「はい、そうです。水影恵子さんですか?」

「そうです」

「やっぱり! 突然すみません。私と歳が近い女性がいるって聞いていたもので、嬉しくなっちゃって」

「水影当主の孫娘にあたります水影恵子と申します」


 水影一家の当主は和彦という男性である。恵子にとって和彦は祖父にあたる。また恵子には誠司という双子の男性がいた。


「私はlayer1・治安維持層の瀬戸ふみっていいます。今日は、これからお借りする建物のカギを受け取りに参りました」

「聞いておりますが、当主はまだ帰ってきていないようでして。大変申し訳ないのですが、中でお待ちいただけないでしょうか」

「そうですね、少し早かったかもしれません。お邪魔しちゃっていいです?」


 笑顔でふみが聞き返す。ふみの人の良さそうな雰囲気に恵子はかなり安心したようであった。


「案内しますので、どうぞここで靴をお脱ぎ下さい」


 通された場所は畳の部屋であり、中央に大きなテーブルがおいてある。ふみは座布団がおいてある場所に適当に座った。


「誠司〜」


 遠くから恵子の声が聞こえてくる。

 畳の部屋は、ふすまが全て開いておりすぐ外に通じている。冷房は無く、ふみの近くで意味もなく回っている扇風機が一台あった。しかし風通しは非常に良かったため暑くはなかった。

 奥から麦茶を持った恵子と、一人の男性が部屋に入ってくる。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


 麦茶をテーブルに置くと、恵子と男性がふみの対面に座った。


「はじめまして。僕は水影誠司といいます。恵子の双子です」


 男性がふみに言った。


「確か恵子さんと双子の方ですね。私はlayer1・治安維持層の瀬戸ふみっていいます。これからよろしくお願いいたします」

「はい、恵子の双子です。瀬戸さんですね。よろしくお願いします」

「すみません、layer1には名刺とか無いみたいで持ってないんです。ふみって呼んでくれれば嬉しいです」

「ふみさん」


 恵子が笑顔でふみへ言い返した。


「はい」


 ふみが笑顔で答える。ふみとしては敬称は省略してもいいとは思ったが、あまりこだわらないことにした。


「女性の方だったんですね。しかも僕たちの国と同じような感じの人だとは思いませんでした」


 誠司がふみに話しかけた。


「はい。後からもう一人、水影当主さんとやり取りをしてた佐々野が来ますので、私と佐々野の二人で業務を担当させていただきます」

「佐々野さんの名前はちょっと聞いてます」

「あと私はlayer2出身なんですよ。だからlayer1よりこっちの世界のほうが落ち着くんです」

「ああ、やっぱりそうなんだ」


 恵子が答える。


「でも、これ言ってよかったのかな。秘密でお願いします」


 ふみが笑顔で言った。二人は苦笑いするしかなかった。


「ふみさんはカギを取りに来たんですよね」


 誠司が問いかけた。


「そうです。水影さん所有の建物を借りたって聞いたので、そのカギを受け取りに来ました」

「なあ恵子。あそこの建物だよな。カギの場所知ってるけど」


 誠司が恵子の方を向いて言った。


「うん、建物は間違いないよ」

「取ってこようかな」

「あ、ダメなんです」


 慌ててふみが誠司を止める。


「ちょっとした手続きがありまして。水影当主にはあらかじめ本人認証の機械をお持ちかと思います。その機械で、私がlayer1の人だって認識してもらわないとダメなんです」

「認証ですか?」

「そうです。ほら、私はlayer1の人間だって言ってますけど、実は嘘をついてる全然関係ない変な人かもしれないじゃないですか。そう言うなりすましを防止するために、あらかじめ外務省経由で水影和彦さんには本人確認の元、デバイスを送付しています」

「が、外務省?」

「layer1の窓口があるんですよー。神の国の窓口が外務省だなんて面白いですよね」

「そうなんですか。外国相手じゃなくて神ともやり取りしてるのか」


 誠司が感心する。


「ジイさん、そんな所に行ってたの知ってた?」


 横を向いて誠司が恵子に問いかける。


「ちょっと前に遠出してたのは知ってるけど、誠司も一緒に行ったんじゃなかったの?」

「いや僕はノータッチだよ」


 それから三人はテーブルを囲んで着席する。

 恵子と誠司は、見たこともないlayer1の役人の前で緊張しているようだったが、ふみは二人とお話をしたくてウズウズしていたため、着席と同時に切り出した。


「お二人はこれから用事があったりするんですか?」

「いえ、特にはありませんけど」


 誠司が答える。


「もし時間があるのでしたら、私と少しお話しできませんか? 恵子さんと誠司くんのこととか、水影家のこととか知りたいです」


 ふみのお願いは、単なる興味から来ていた。だが二人は、今後のお付き合いという意味でふみとの会話が必要だと感じていた。


「僕は構いませんが、恵子も大丈夫だろう?」

「はい、私も大丈夫ですよ。でも……」


 恵子が外のほうを見る。外から車のエンジンの音が聞こえてきた。


「おじいさんが帰ってきたようですね。少々お待ち下さい」


 恵子と誠司が部屋から出て行った。ふみはその場で待つ。

 すぐに二人が男性を連れてふみのもとに戻ってきた。

 その男性は、老いてはいるものの手足は力強く動いており、まだ除霊の現役術式者として働いているのがよく分かる風貌であった。


「はじめまして。私はlayer1・治安維持層の瀬戸ふみと申します」


 立ち上がり、ふみの方から話しかけた。


「私は水影和彦と申します。水影家の当主をやっております。どうぞよろしくお願いいたします」

「お忙しい中、突然お邪魔してしまい申し訳ありません。佐々野は別の日程であとから来ますので、認証の手続きは二回になってしまいますが、お許し頂ければと思います」

「いえ、こちらこそ待たせてしまったようで申し訳ない。事前に佐々野さんから元layer2の方が来るとは聞いていましたが、これほど若い女性だとは。誠司と恵子とはお話されましたか?」

「はい。自己紹介とすこしお話しました。私と歳が近いので、お友達が出来たような感じで嬉しいです」

「はは、そうでしょうなあ。術式は私の他、誠司がほぼ完璧に使えるので、わからないことがあるなら誠司に聞くといいでしょう」


 和彦が誠司を手で指して言った。


「恵子さんは完璧じゃないんですか?」

「ああ。恵子は術式の勉強中だ」

「そうなんですか。私と一緒にこれから勉強なんですね」


 それから少し会話をした後、和彦は奥の部屋から認証機器を持ってきた。

 部屋にはふみを対面として、水影家の和彦、恵子、誠司が座っている。


「それでは認証させていただきます」


 ふみが自分のかばんを開けてティッシュなどを取り出す。


「和彦さん、誠司くん、恵子さん。認証はこのデバイスに私の血液を入れて行なうため、ナイフを使います。ここで武器を使うことをお許しください」


 そう言うと、ふみは上着を一枚脱いだ。それを見た三人は、予想外のモノが目に飛び込んできて驚いてしまった。

 ふみの胸の下には、ホルスターでがっちり固定されている銃とナイフがあった。

 ナイフを取り出し、先端を親指に押し付けて血を出した。そしてすぐにナイフを仕舞い、認証デバイスに自分の血液をつけた。


「どうぞ」


 認証デバイスを和彦の方に渡すと、上着をすぐに着直して武器を隠した。

 驚いたのは誠司と恵子だ。今まで笑顔で雑談していた女性からは、全く想像できない物騒なものが飛び出してきたため、その女性が本当にlayer1の役人であるということを、改めて認識させられていた。


「ふみさん、それは銃ですか」


 恵子が静かにつぶやいた。


「はい。拳銃とナイフです。layer2では銃の所持が禁止されていますが、layer1から出張できた人は、逆に武器の携帯が義務付けられています。とっても重いから嫌なんですけどね」


 ふみが恵子へ返答する際は、先ほど見せた笑顔で対応してみせた。


「layer1・治安維持層・分析業務担当・瀬戸ふみさん。認証は終わりました」

「ありがとうございました」


 それから当主からカギを受け取ると、ふみはすぐにその場を去ることにした。


「認証のご対応、ありがとうございました。これから向かおうと思います」

「少し距離がありますので、車で送りますよ」

「いえ」


 和彦の申し出に、ふみが返答する。


「お忙しい中、これ以上ご迷惑をお掛けするわけには行きません。それに、歩いてこの辺りを見て回ろうかと思ってまして」

「そうですか。でも少し分かりづらいかもしれませんよ」

「それなら、なあ恵子」


 ふみと和彦の会話に、誠司が割り込んだ。恵子はすでに誠司が何を言いたいのか理解しているようだった。


「僕たちがふみさんを案内しますよ」


 恵子は頷いてみせた。


「いいんですか? 本当に気にしなくて大丈夫ですよ?」

「ほら、ふみさんは私たちとお話したいって言ってましたよね」

「あ、そうですね」


 ふみは笑顔で頷いた。和彦もそっちの方がいいだろうと言う事になった。

 水影家から三人で、歩いて施設へと向かう。太陽からは強い日光が出ており、本格的な夏を迎えようとしている。


「指がいたーい」


 ふみがつぶやいた。


「ナイフで親指に傷をつけるだなんて、映画の一シーンかと思いましたよ」


 誠司が言った。


「今日の私の一大イベントだったんです。小学生の頃、健康診断なんかで注射を打たれるのが嫌で仕方がなかったんですが、そんな気分を思い出しました」

「あ、私は注射は結構好きでしたよ?」


 恵子が答えた。


「えー!」


 ふみが驚く。誠司も驚いていた。


「注射が好きなやつなんてこの世にいたのかよ」

「あれ、誠司は嫌いなの?」

「嫌いだよ」


 驚いたふみが恵子に話しかけた。


「もしかして、親指を切る血判もお好きですか?」

「それはやったこと無いし、指を切るのは嫌だなあ」


 それから三人はしばらく無言で、ゆっくりとヒビの入ったアスファルトの上を歩いた。ふみが周りの景色を楽しんでいるようであったため、二人からは話さないで、ふみの様子を観察していた。

 道に車は全く通っていなかった。そして日差しが強く、上からも下からも熱が感じられた。


「お二人は高校生ですよね?」


 やがて景色を見尽くして落ち着いたふみが、二人に話しかけた。


「はいそうです」


 恵子が答える。


「事前に家族構成は聞いているんですが、確かお二人は17歳ですよね。私は18歳なので歳が近いんです」

「すごく近いんですね」


 誠司が意外そうに驚いてみせた。


「もっと年上に見えちゃいました?」


 ふみが笑って返答する。


「いや、ただ僕たちよりすごく大人っぽいなって」


 誠司は慌てて答えた。


「ふふふ、一歳上のお姉さんですから」


 ふみを大人っぽく感じたのは年齢の差ではなく、layer1に行く前から働いていた期間が長かったからである。


「このお仕事をされて長いんですか?」


 恵子が横から質問をする。


「いえ、数カ月前まではまだlayer2でお仕事してましたよ。コンビニのバイトとかで」

「コンビニですか」

「はい。他にも色々やってましたけど」


 恵子と誠司にとっては、layer1はかなりのエリートという認識を持っていたため、コンビニのバイトでどうやってlayer1になれるのか全く想像つかなかった。そしてそれは聞くこともはばかられる思いがしていた。


「layer1で働くようになったこと、興味あります?」

「え、ええ。でも言えないのでは?」


 恵子が言った。


「ごめんなさい。そのとおり、機密なんだそうです。どこまで喋っていいのかとか全然わからないんで、今度佐々野さんに聞いてみますね」


 ふみは本当にわからなかったので話題を変えることにした。


「高校には明日も行くんですか? 私は高校に行ったことがないので、少し興味があるんです」


 すぐ誠司が反応して答える。


「今は夏季休暇中なので、登校は結構先になります。もっぱらジイさんの手伝いの除霊ばかりやってます」

「ジイさんって水影和彦当主さんのことですよね?」

「そうです」

「恵子さんも除霊の手伝いやってるんですか?」


 ふみが恵子に問いかける。


「私は」


 恵子が少し考えてみせたがすぐに答えた。


「私はたまにお手伝いします。でもほとんど誠司です」


 そう言って誠司の方を向いた。


「最近は恵子もやるようになったよな」


 誠司が言った。


「三式くらいなら結構慣れてきたよ」

「三式?」


 ふみが興味ありそうに話しかけた。おそらく術式のことだろうと予想はしていた。


「はい。除霊のときに使う術のことです。佐々野さんとふみさんは、まず裏四式から覚えてもらうことになります。その後、三式、二式、一式と覚えて終わりになると思います」


 誠司が言った。


「へえ! なんかかっこいいですね」

「でも、実際に三式を使ってる姿はあんまりかっこよくないんです」


 恵子が横から話した。


「そうなんですか?」

「はい。私が三式を使うときは、金属バットで幽霊を殴りつけるときになんです」

「ということは、私もこれから金属バットで修行を?」

「うーん、たぶん木刀になるのかな?」

「一応補足しておきますが」


 誠司がふみに話しかける。


「三式は現実の武器を幽霊に使う時のものであり、正式には刀を用います。でも刀って高いし、あと手入れとかもあるので、僕のような下っ端は使うのが面倒なんです。だから、現場には一応持っては行きますが、使うのは当主ひとりだけで、もっぱら金属バットだったり自在ほうきだったりを使うんです」

「自在ほうきって学校で使ってたやつですよね。久しぶりにその名前を聞きました」

「そうです。ほうきは安いのでよく使ってたんですが、実際は木刀の方が使いやすいんで、恵子には不評です。自在ほうきは家で本来の使い方をしなさいってよく言われます」

「あはは、やっぱり攻撃目的だと武器のほうがいいんですね」

「金属バットは武器じゃないですけどね」

「そういえば・・・」


 ふみが自分のかばんの中を探りだした。


「こういうのを持ってるんですが、現場で使ったりします?」


 ふみの手には真っ黒い警棒が握られていた。それを振ると、金属音と共に先端が伸びた。


「ふみさんっていくつ武器を持ってるんですか?」


 誠司が驚いて言った。


「これが最後です。絶対に使わないだろうと思ってたんですが、なんか役立ちそうですね」

「中学のとき男子生徒が学校にこんな武器を持って来て、先生に見つかって没収されてたのを思い出しました」


 恵子が言った。


「男の子ってこういうの好きそうですよね。それがまさか私が警棒を所有することになるとは」


 警棒を誠司の方に差し出した。


「使ってみますか?」

「武器を人に預けても大丈夫なんですか?」

「ナイフや銃と違ってただの棒ですし、殺傷能力は低いそうですよ」


 それを受け取ると、誠司は片手で構えてみせた。


「いま、警棒に表三式を使ってるんですが、コレ便利ですね」

「え、全然わかんない!」


 ふみが驚いてみせる。


「訓練しないと霊体に関わるものは全然見えないんです」


 恵子がふみを見て言った。

 誠司が続けて話した。


「大きな岩とか、木とかがあれば、実際に使って壊したりすることもできるんですが、あんまり変なことしたら警察に捕まりますからね」


 警棒で色々と試していたが、満足したようで恵子に警棒を差し出した。

 しかし恵子は興味がなかったようで、首を振った。


「ありがとうございます。これお返しします」

「はい」


 ふみが警棒を受け取りかばんに収納する。


「なんで頑なに自在ほうきなんか使ってたんだろう、って思うくらい警棒は便利だと思いましたよ。僕も買ってこようかな」

「前から思ってたけどさ、自在ほうきって武器として全く役立ってないよね。誠司はどうしてそんなにほうきが好きなの?」


 恵子が誠司に問いかけるが返答はなかった。

 ふみの人懐っこさに安心した誠司と恵子は、目的地に到着するまで楽しく話し合っていた。

 やがて目的の建物が近づいてくる。


「あの建物になります」


 誠司が指差した。建物は一軒家より大きく、駐車場も広く備わっていた。玄関には鉄の門があり、大きめの南京錠がかかっていた。


「ずいぶんと大きいんですね」

「この建物は集会所としての役割があります。また、ふみさんのように、お客様が長期にわたって滞在できるようにもなっているので、普通の家より広く、中は簡単なホテルのような作りとなっています」


 恵子が説明した。

 門の南京錠を開け、玄関のカギを開けて中に入る。電気が付き、ガスと水道、下水を確認した。


「大丈夫ですね。ここまで案内してくれて、本当にありがとうございました。本日から、ここを使用させていただきます」

「トイレットペーパーなど無いかもしれませんので、確認しておいたほうがいいと思います。このあたりに店は無くて、駅前にまで行かなければならないのですが、車がないと不便ですよね」


 恵子が心配して言った。


「まだ分析業務が始まるまで何日かありますし、実はお金は結構支給されていますので、不便だったら自転車でも買ってこようと思います。だからあまりご心配なさらずに」

「そうですか。何かありましたら、遠慮無く言ってくれれば、私か誠司が対応しますので」

「ありがとうございます」


 手を振って別れ、ふみは家に入っていった。

 誠司と恵子は来た道を引き返した。あたりは日が落ちてきており赤色に変わってきていた。

 しばらく無言で歩いていたものの、恵子が話し掛ける。


「ふみさんって、明るくて綺麗な方だったね」

「うん」

「誠司って、あんな感じで明るい女性が好みなんじゃないの?」

「そりゃそうだけど」

「そりゃそうなんだ」


 誠司が少し悩んでから、恵子の方を見て返答した。


「ふみさんはかっこ良かった」

「そうだね。鉄砲とかナイフとか、本当にあんな人ってこの世にいたんだ」

「あれで僕たちと一歳しか離れてないようだけど、恵子は来年にはふみさんみたいになれる?」

「なれるものならなりたいよ」


 二人は正面を向いてため息をついた。


「ねえ誠司、明日もふみさんの様子を見に行こっか」

「用もないのに?」

「あるでしょ。何か家に不具合があるかもしれないし」

「明日は恵子もお仕事だよ。明後日ならいいよ」

「うん、なら明後日に行きたい」


 ふみはよく笑顔を見せていたため、誠司と恵子はすっかりふみを気に入ってしまっていた。

 そんな気持ちをお互い理解していたため、ふみと関わることには積極的だった。

 二人は一言も会話せずに家に帰った。


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