天使管轄区域3
ふみがお酒を静かに飲んでいる姿を、アマンダが正面からじっと見つめた。
「どうしました?」
「十代って、もっと子供だと思うんだけど、ふみからはそんな気がしない。老けてるって言ってるんじゃないよ。でも、天使だから100歳を超えてるって言われても信じたかもしれない」
「そうですか?」
「私も少しだけ分かるよ」
イリーナが横から割り込んだ。
「何が違うんだろう。少なくとも今まで私はこんな部下に出会ったことはない。上司にもいなかった。ふみからはね、アマンダの匂いがするんだよ。クソババアだって言いたいわけじゃないよ」
「だからその表現やめろっての」
アマンダが怒ったようにイリーナに言った。
「勘違いですよ」
ふみが言った。
二人がふみの方を向いた。
続けてふみが言った。
「私はずっと分析業務という、お二人が全く関係のない場所で働いていました。分析業務は体を動かして危険から情報を持ってくる仕事。そう言うことをしていた私と、組織を動かすために努力されてきたお二人では、どうしたって雰囲気が違ってきます」
「そうなのかもねぇ」
イリーナはとりあえず納得しておいた。
だがアマンダは更に話を続ける。
「ふみは概念基盤に行く気はあるの?」
「大天井の上ですか?」
少し悩んでみせたが、すぐに返答する。
「ないですね。これも状況次第だとは思うのですが、私の目的はそこにはありません」
「その目的ってのは、さ」
アマンダが途中まで言おうとしたがすぐに口を閉じる。
「いや、何でもない」
個人的なことをを聞いていいものか迷ったからであった。だがふみは、そんな気づかい気がついたためか、すぐにアマンダに目的を伝えた。
「私の目的は、私の存在そのものを暁斗とマイのものにすることです」
「は!?」
アマンダとイリーナが一斉に声を上げる。
「意味がわからんのだけど」
アマンダが突っ込んだ。
「わかりませんか? そもそも私の存在は暁斗のものなんです。暁斗の所有物です。マイは後から知り合ったため話は少し違ってきますが、マイもまた私を受け入れてくれた。だから、私は暁斗とマイのものになるべきだと思っています。でもそれを邪魔するやつがいる。だから私は自分の力で自分の希望する居場所を手に入れる。それが私の目的です」
「どういうこと? ふみがその二人を手に入れるんじゃないの?」
今度はイリーナが問いかけた。
「意味としては同じようなもの。私が暁斗とマイを社会的な力で手に入れると言うことは、結局の所は私が暁斗とマイの個人的な所有物になると言うことと同義です」
二人が何も言わずにふみを見ていた。
全然理解できないと言う表情をしていたため、ふみは少し意外に思って言った。
「あの、私ってそんなに変なことを言ってました?」
「変すぎるだろ」
「でも、アダムとあんずの関係もそんな感じですよ?」
「そうなの?」
ふみの言ったことは驚くべきことだったが、すでに二人は驚くことすら忘れていた。
「これって言っていいことなのかな。アダムはあんずのものなんです。組織としてはアダムはあんずの上司に当たりますが、二人の関係は逆転していまして、あんずがアダムを所有している関係となります」
「はぁー、アダムってそんな面白い人だったんだー」
イリーナがかなり興味を持って食いついてきた。
「二人が夫婦関係だってことは知っていますよね?」
「いや、知らないよ。あんずって女性も知らないし。アマンダは知ってる?」
「私は少しだけ知ってるけど」
アマンダが言った。
ふみが話を続ける。
「今度紹介してもらいましょう。あんずはお酒好きで楽しい人でしたよ」
「うん、今度そうしよう。それはそれでいいんだけどさ、分析業務をやってる人って、男女関係は所有するとか、そういった絶対的主従関係を大事にするものなの?」
「ええ? 私たちってそんなふうな関係じゃないですよ?」
ふみが慌てて弁解する。
「ふみが言ったことって、どう聞いても主人と奴隷の関係なんだけど」
「私もそういう性癖の人なのかって思っちゃった。ふみってさ、彼氏に暴力振られてたりしないよね?」
少し心配そうにイリーナが言った。
「暴力? 以前暁斗に、私の首を絞めて下さいって頼んだことがあるんですが、かなり真剣に拒絶されたことがあります」
「あれ、自分でも何を聞きたいのかわからなくなってきた」
「私と暁斗とマイの関係はノーマルです。全然変なことはありません」
「三人の関係って既に結構変だと思うんだけど」
アマンダとイリーナは適当に納得しておくことにした。
「でもどうして天使にまでなったふみが、常人層である暁斗を直接所有する気にならないの? 私はそれだけがどうしても理解できない」
イリーナが問いかける。
「私が暁斗を所有するんですか?」
「そうそう。天使が常人層を所有するって方がどう考えても自然だよね。そう言う例は嫌と言うほどあると思うよ」
すこしふみは考えているようだった。
「私が生きている理由は暁斗がいるから。暁斗がいなければ私は生きている意味も価値もありません。暁斗は私を拾ってくれた。当時の私はゴミ以下の存在だったにも関わらず、暁斗は私を選んで助けてくれたんです。私に生きる希望を与えてくれた。生きる意味を与えてくれた。だから私は暁斗に全てを捧げなければいけない。どんなに私の地位が高くなろうが、それは全て暁斗のおかげ。私は一生暁斗の所有物であることに変わりない」
ふみが真顔で二人に言った。
何の疑問も持たず、信じ切っていること。二人はそんな様子を見て寒気さえ感じた。
「わかった」
アマンダがつぶやいた。
ふみの顔に笑顔が戻り、アマンダとイリーナに言った。
「マイはまた別なんですけどね。でもマイは、自分の命をかけてまで私と一緒にいるって言ってくれたんですよ」
「そ、そうなんだ」
イリーナが控えめに返答した。
ふみの普段の行動は優等生に違いなかった。だが、ふみの内面を知るにつれて、アマンダとイリーナには理解できないことが出てくる。そういうことを二人も大分理解し始めていた。
今回のふみの話も、二人にはよくわからないことであった。
だが理解できたこともあった。それはふみは普段表に出ない性格がかなり変わっており、変わり具合が時として非常におかしな方向に飛び出していると言うことであった。
「やっぱりずっと思ってたんだけどさ」
「はい」
アマンダがふみに話す。
「ふみのような人が概念基盤に行くんだろうなって」
「えー、それはないと思いますけど」
「イリーナは概念基盤に行きたいって思ってる?」
アマンダがイリーナに話しかける。
「え、私? 一ミリも思ってないよ。ってか、概念基盤って何してるところなの?」
「全然わからない。大天井に命令するところ」
「あとlayer0の調査だっけ。ははは、道楽じゃん」
「レイヤーゼロ?」
ふみが驚いてイリーナに話しかけた。
「うん、layer0。ふみは知らない? 悪魔層の魂魄課で死んだ魂を転生させるために、概念基盤へ集めた魂を送ったりするんだけど、そのときに概念基盤と私との間に入っている大天井の奴らが、いっつもlayer0ー、layer0ーって言うんだ」
「知りません。layerって、1から3までだと思ってました」
「あってるよ。layerは1から3までで、layer0ってのは概念基盤たちがよく使ってる、正式には使われない方言だって。魂の終着点、としか私は知らないけど」
ふみがむずかしい顔をして少し考えていた。
「どうしたの?」
「あの、お聞きしたいのですが、layer2で死んだ魂も同じような扱いになるんですか?」
「そうだよ。layer2には魂が集まる特定の場所があって、悪魔層・魂魄課の連中が魂を回収するんだ。layer1は少し過程が違うけど回収するまでは同じ。回収した魂は大天井経由で概念基盤に送られて、そこで魂は再利用可能な状態に加工されてからlayer0に送って転生する」
アマンダが返答した。
「まるで魂がゴミみたいな扱いされてるんですね」
「そこまで酷い扱いじゃないけど、魂が資源のような扱いされてるのは確かだね」
「前にlayer2で魂を破壊する仕事をしたことがあるんですが、普通の魂は、一体どこに行くのか疑問に思ってたんです。今の話で納得できました」
「魂の破壊って怖すぎるんですけど。破壊されたらどうなるの?」
アマンダが興味を持ってふみに問いかけた。
「消滅します。layer2の術者は輪廻転生ができなくなるとは言っていましたが、アマンダの話を聞く限りだと合っていますね。輪廻は悪魔層・魂魄課の役人の仕事のことを意味しており、転生はlayer0のことなんですね」
「消滅ってなくなるの? それっていいことなの?」
「無くなりますよ。いいことかと言われると、かなり悪いことだと思います。だから、術者が破壊する魂は、もはや言うことの聞かなくなった鬼霊と呼ばれる特殊な魂だけです」
「鬼霊! そんなのあるんだ」
アマンダにとっては初めて聞く言葉であったため、視線をイリーナに移して無言で聞いたことがあるかを問いかけようとした。だがイリーナはかなり酔いが回っているようで、意図を全く汲み取ってくれなかった。
イリーナが立ち上がる。そして足元がふらふらと歩きだした。だが立ち上がった理由を自分でも覚えていないようで、アマンダに背中から抱きついた。
「私は知ってるんだぜ。アマンダは概念基盤に行きたいんだろ!」
「いや、全然行きたくないけど」
「嘘つくなよー。ふみと二人で、私を置いて行ってしまうつもりだろうが、そうはさせないよ」
「本当に概念基盤には興味ないし、ふみも行かないって言ってるし、イリーナを一人置いていくつもりはないから安心しなよ」
「そうやって安心させてさ! 大体どんな奴が概念基盤なんかに行くんよ。絶対、アマンダみたいなやつだろー」
べったりくっついてるイリーナとアマンダに向かって、冷静にふみが話しかける。
「私は一人だけ知っていますよ。概念基盤に行った人」
「えー?」
二人は驚いてみせたものの、すぐに出会った初日を思い出していた。
「どんな人?」
アマンダが問いかける。
「世界の平和をずっと考えていた人。その考えを確かめるために、堕天使になってまで実験を続けて、大天井になったと同時に概念基盤の昇進試験を受けて合格してました」
「それがアダムから伝言があるとか言ってた人?」
「そうです。概念基盤・松桐坊主。昇進試験で発表した持論は、人の悪意に関することだそうです。私が治安維持層の立場でアダムのお仕事をお手伝いしていたとき、その人は堕天使の身で私たちの前に現われました」
「やっぱり、ふみは全然違うなー」
アマンダの後ろから抱きついたイリーナがふみにそう言うと、アマンダからコップを奪って酒を飲み干した。
「魂の破壊とか、堕天使との出会いとか、ふみはすごいよ。私とアマンダなら絶対に出来ないことばっかり。治安維持層って本当に面白いんだね。そして、アマンダが言ったとおり、私たちよりふみのほうが概念基盤に近い人間だと思う」
「イリーナとアマンダは、私と一緒にアダムのお仕事をお手伝いしている。だから、時期にお二人もそう言う業務を体験できると思いますよ」
「楽しみだなー!」
「あと、何度もいいますが、私がすごいのではなく、環境による差異ですごく感じるだけです。イリーナとアマンダの方が、絶対に世界のためになっていたに決まっています。私からしてみれば、私はあなた達には絶対に敵わない」
「またふみが怖い顔してるー」
イリーナがアマンダから離れて、ふみの方に行こうとしたものの、途中で足に力が入らずにそのまま床に転がり動かなくなった。
治安維持層・一般警備の敷地内は広いため、暁斗は一部のスペースを借りて、そこでふみとの手合わせを行っていた。
付き添いにはエレナとフレイもいた。
エレナの元所属である第三班の人たちは、遠くでその様子を見ていた。ダイゴだけはエレナのもとに歩み寄り、一緒に暁斗とふみが戦っている姿を見ていた。
「ふみに翼がついているように見えるんだが、あれは何なんだ?」
ダイゴがエレナに聞く。
「ふみは天使になったんだそうです。で、色々あってリハビリが必要だから、暁斗に力をぶつけてるんだそうです」
そのとき、上空にいるふみの力が暁斗に向かって放たれる。それを真っ向から受けた暁斗の周りに爆発が起きた。
爆風が周りの人たちに襲いかかるが、ダイゴは気にすること無くエレナに話しかけた。
「悪魔って聞いてたんだが。天使なのか?」
「悪魔だったんですが、その後、天使になったんだそうです」
「へえ、よくわからんが、派手になったんだな」
暁斗も体を浮かせて上空に飛び上がる。
それを見たフレイが、ダイゴに話しかけた。
「俺はここに来たばかりで知らないんだが、一般警備の人たちもあんなふうに飛べるのか?」
「いや、流石にそれはない。暁斗が異常なんだよ。俺の方からあんたらに、暁斗がなんで飛んでるのか聞こうと思ってたところだよ」
エレナが二人の会話に割って話した。
「暁斗に聞いたんだけどさ、風の魔法だって。わかりますか?」
「わからんね、魔法か。一般警備にもほしいんだが」
そのとき、後ろから女性の声がした。
「こんにちは」
「ああ、ツバキ。こんにちは」
すぐ反応したのはダイゴだった。
「あれ、エレナじゃない。確か分析業務に異動になったんだよね?」
「お久しぶりです。そうです、今の私は分析業務です」
「ということは、この方も分析業務?」
ツバキがフレイに言った。
「ああ、暁斗の元で働いてる、分析業務のフレイだ」
「私は治安維持層・特殊警備の武術担当・ツバキと申します」
「武術担当?」
フレイが反応する。
「はい、暁斗やふみの武術も私が教えています。今日は暁斗の紹介で、特殊警備の立場で、天使となったふみの力を調査しにここに参りました」
そのとき、地面に何か叩きつけられる音がした為、一同が音の方を見る。空にいる暁斗が、天使を地面に叩きつけた振動であった。だがふみは何事もなかったように立ち上がり、そして上空の暁斗に攻撃をしていた。
「暁斗の力も調査したほうがいいんじゃないのか」
フレイがつぶやいた。
それからすぐに手合わせが終わり、二人でこちらに歩いてきていた。
「お久しぶりです、ツバキ、それにダイゴも!」
ふみが二人に手を振った。
「暁斗から特殊警備のことは聞いています。お願いしますね、ツバキ」
ツバキが無言で頭を下げる。
「ダイゴ、久しぶりです。元気にしていましたか?」
ふみが話しかけたため、ダイゴは自分の口を指差しながら、声を出さないようにして喋るふりをした。
「ああ、大丈夫ですよ話しても。私が裏で勝手に許可しますので」
「え? そうなんですか?」
ダイゴが声を出す。
「私もダメだと思ってた」
続けてツバキも話した。
一般警備の人たちは自分の業務に戻っていった。
借りたスペースの中央で、ふみとフレイの二人が向き合っている。ふみの翼はしまっており、二人共武器は持っていなかった。
ふみが先に仕掛けに行った。
勢い良く走り、フレイの方に駆け出す。ケリを入れて主導を握るつもりだったが、フレイがふみの足をそのまま片手で受けようとしたため、急遽蹴りをやめて距離を取る。
お互い、次の行動が取れずに牽制し合う形となった。だがフレイには大分余裕があった。だからこそ、フレイからは攻撃を仕掛けずに堂々とふみの攻撃を待った。
ふみの全身には冷や汗が流れていた。その恐怖を断ち切るために、掴みかかるようにして両手で襲いかかる。
確かにふみはフレイの体を掴んだはずだったが、なぜかふみの体が横に倒されていた。
気がつくとフレイの足がふみの顔面を蹴ろうとしている。両手でそれを受け止める。
「ぐっ!」
痛みが腕に襲いかかるものの、すぐ起き上がり距離を取ろうと後方にステップした。
だがその動きも読まれており、ふみの視界には、大ぶりで拳をふみの体に叩きつけようとしているフレイの姿があった。その拳はヒットする。ふみは何とか左腕で受け止めたものの、偉力が大きく体が中に舞った。
フレイの追加攻撃は来なかった。
ふみが上手に地面に着地する。
お互い睨み合う。しばらくそうしていたものの、ふみは右手を前に出して降参した。
「参りました」
すぐにツバキの声が聞こえてきた。
「そこまで」
ふみは体の力が抜けたようで、その場に座り込んでしまったが、フレイはまだ緊張を問いておらず、ずっとその様子を見続けていた。
暁斗がふみに近寄った。
「大丈夫か?」
「全然ダメです。左腕が折れてます。ねえ、暁斗、治して」
「天使って自己修復できるってさっき言ってなかった?」
「治して、治して」
「わかったよ」
ツバキがフレイの方に近づいて言った。
「あなた随分強いのね」
「それでも暁斗には敵わなかったよ。今と同じ条件でやっても無理だった」
「じゃあ、私にも勝てないってことだけど」
「お前、そんなに強いのかよ」
フレイは少し残念な表情を見せていた。
遠くからふみの声が聞こえてきた。
「フレイは本当に強いね!」
「ふみ姉もいい線行ってたよ」
フレイが答えた。
「天使の力を使わないとフレイには絶対勝てないみたい。何をしても無理っぽいよ。もう全然次元が違うみたいだね」
「天使の力か」
フレイはその言葉が多少気になるようだった。
「あの、ふみ姉。天使の力を使った場合はどこまでできる? 俺は勝てないのか?」
「勝てるか勝てないかといえば、うーん」
ふみが少し悩む。
「勝てないけど、なんか違うなって結果になるよ。試してみよっか」
「何だって?」
ふみが立ち上がりフレイの方を向く。
そのふみの目を見た瞬間、フレイは地面に叩きつけられていた。
「な! なんだこれ!」
体が地面から離れない。
フレイは全力で地面から体を離そうとするものの、全く身動き取れていなかった。
「解除するね」
「あれ?」
フレイが立ち上がる。
「ごめんね。天使の力ってこう言う変なのばっかりなんです。頑張ればフレイも、暁斗みたいに天使と戦えるようにはなるとは思うよ」
「ああ、わかった。教えてくれて感謝します」
フレイが言った。
その様子を見ている人たちは、多少驚いていたものの、もう慣れてきていた。
ふみが続けて話した。
「ちなみに今のを暁斗にやればこうなります」
すぐに暁斗の方を向き、睨みつける。
暁斗はずっとふみの方を見ており、いきなりのふみの行動に驚くことはなかった。
一瞬、暁斗の体が重くなったように足が曲がったが、すぐに直立する。
暁斗は何の緊張もなく、普通に立っているだけだった。
だが逆にふみは力をかなり強く使っているようで、攻撃しているふみの方が大変そうであった。
「もっと強く」
ふみが言う。
暁斗には変化がまったくなかったものの、暁斗の周りの地形が凹む。
少しバランスを崩したものの、暁斗中心にできた浅いクレーターの中からふみを見ていた。
ふみは硬い表情でそんな暁斗の様子を見たまま、横のフレイに語りかけた。
「フレイ、わかりますか? 今、暁斗に同じことをしています」
「わかるけど、なぜ暁斗は平気なんだ?」
「なぜ? それは対応策を知っているから。暁斗のすごいところは、別に特別なことをしているわけではない事にあります。どんな力にも原理がある。合わせて対応策がある。暁斗はそれを知っているのです。だからこそlayer1の中でも珍しい、神や天使を殺せる人として概念基盤に目をつけられています」
二人はしばらく睨み合っていたが、やがてふみが笑顔で暁斗に言った。
「ありがと。もう大丈夫だよ」
「うん、ふみの言っていることはそのとおりだけど」
暁斗がふみとフレイの方に近づきながら言った。
「ふみは細胞の受肉がどうのこうので、本来の天使の力を発揮できてないって言ってなかった? やったこと無いからわからないけど、普通の天使だったら俺は対応できないんじゃないか?」
「たぶん大丈夫ですよ。戦闘タイプの天使ってそんなにいるわけじゃないんです。でも、アダム相手は絶対にやめた方がいいです。本当に死にます」
「そうなんだ」
ツバキはフレイのことが気になるようで、ずっと見ていたものの、暁斗が仕事の話をする前に話しかけた。
「私ともやってみる?」
その質問に、フレイが即答する。
「是非お願いしたい」
「暁斗、ちょっと遊んでいい?」
「いいけど壊すなよ」
暁斗の言葉がフレイに重くのしかかる。こんな状況で、暁斗は冗談を言う人ではない。ということは本気なのだ。
だが、ツバキとフレイの手合わせは地味であった。
フレイの攻撃がツバキに当たらないからだ。フレイが全力で立ち向かうものの、何をやっても効果がなく、すぐ降参した。
「参りました」
「あれ、もう終わり?」
「これ以上やっても時間の無駄だし、お前たちも暇じゃないんだろう?」
フレイが少し怒ったように言う。
「私の仕事は格闘技を教えること。もしフレイがもっと強くなりたいなら、私の所に習いにきなよ。歓迎するよ」
「考えておく」
フレイは少し嫌そうにしていたものの、暁斗は既にツバキにお願いする気でいた。
「あ、私も一般警備の時みたいにツバキに習いたいんですけど!」
出番がなかったエレナが手をあげて言った。




