黒魔術編1
一人の中年男性の前に、暁斗とふみが立つ。
「分かりました。お二人の言うことを聞きますので、どうか手荒な真似だけはしないでいただきたい」
その様子は大分怯えていた。
「俺たちはただその術を覚えたいだけです。覚えたあとでも、少なくとも俺たちがlayer2の誰かに教えたりはしません」
「少なくとも? どうか誰にも話さないでいただきたい。私の飯の種を失ってしまいます」
「俺よりもっと偉い人たちがいるので約束は出来ないが。でも心配する必要はないでしょう」
男は観念したようで、それから三人でしばらく話し合いを行っていた。
暁斗とふみが宿に戻る。
電話は大分古く、ふみは苦労してlayer1へつなぐ機器と戦っていた。
「うまく行った?」
「いえ、何が悪いのか全然わかりませんが、繋がりませんね」
「そもそも音が鳴ってない。ちょっと裏の線を確認してくるから、ふみは引き続き設定を頼む」
「わかりました」
二人はかなり苦労して機器をつなぎ、そしてハルトと会話ができるようになった。
「どうだい、そっちの様子は」
電話からはハルトの声。
「はい、本日で目的の能力を手に入れました」
ふみがハルトに返答した。
「早いね。あっという間に終わってしまったな」
「なんかすぐ見つかって、すぐ捕獲して、すぐに教えてくれたという、全く苦労しない案件だった」
後ろから暁斗が言った。
「それはめでたい」
「でも、これって」
ふみが横から割り込んだ。
「この術って、何の役に立つんですか?」
「それを言われるとねぇ」
暁斗が少し困ったように言った。
「なんのって、俺はそもそもどういう術だったのか詳しく知らないんだけど、どうだったの?」
ハルトが問いかけた。
暁斗とふみは固まってしまった。
仕事が終わり、一泊してから二人はすぐにlayer1に帰った。
いつものように、昼休みにはふみが休憩所でマイに会っていた。
「ちょっと待ってマイ。飲み物を買う前に、そのコインを私の手のひらに置いてくれませんか?」
「え、なになに?」
ふみがマイの目の前に、両手を上に広げていた。
自動販売機に入ようとしていたコインを持って、マイが問いかけた。
「どっちに乗せればいいの?」
「どっちでもいいよ」
何も考えずにマイに近い左手に載せた。
「よく見ててくださいね」
そう言うと、ふみは両手を握りしめた。
「種も仕掛けもあるんですが、このコインが一瞬にして右手に移動します」
「へえー、やってみて」
「もうやりました」
すぐにふみは手を開く。するとコインが見事に右に移動していた。
「ええ? どうやったの? 握っただけで何もしてないよね?」
「びっくりしました?」
「うん、すごい」
マイの驚きように、ふみは満足したようで笑顔だった。
「じゃあ、次は手を握らないでやりますので、よく見ててくださいね」
「は? 握らないの?」
ふみの両手の手のひらは上を向いており、右手にはコインが乗っている。だが、次の瞬間、コインが左手に移動していた。
「なに今の! なんで移動してるの?」
マイが驚く。
「じゃあもう一回」
今度はコインが右手に移動する。
「ずっと見ててもわかんないんだけど。手品じゃなくて能力の類?」
「うん、そうだよ」
ふみがコインを右手で持って、マイに返却した。
「これが今回の分析業務の能力。暁斗が言うには、何の訳にも立たないどうしようもない能力だそうな」
「結構ひどい言われよう」
マイはかなり驚いていたためしばらく止まっていたものの、ふと我に返って自動販売機にコインを入れた。
ふみは弁当を机にあげていた。
「でもこの能力は、マイを驚かせました。もう十分役立ったよね」
「うん、とっても楽しかったよ」
「こんな術式でも、layer1の人に教えるためには大天井の許可がいるんだって」
「大天井の人も申請を却下しそう」
二人はしばらく楽しく話していた。ふみが行ってきた分析業務の話になると、二人の話題は全く尽きなかった。
「そう言えばさ」
マイが思い出したように言った。
「なに?」
「ふみと暁斗の仲ってどんな感じなの?」
マイがそう言うと、ふみがものすごい笑顔になっていった。
「うわー、嬉しそう」
「普通だよー」
「うまく行きすぎているのは分かった」
「本当だよー」
「わかりましたー」
マイが立ち上がり、ゴミを捨ててから戻ってくる。
「今度の休みにでも聞かせてよ。じゃあ私は部屋に戻るから」
「待って」
ふみが立ち上がって、マイの近くまで歩いて行った。
「今日ってお仕事終わったら時間ある?」
「あるけど。どっか行く?」
「うん。少しだけ遅いんだけど、この時間になったら分析業務室に来て欲しいんだ」
「中途半端な時間だね。まあいいよ。詳しくはそのとき聞くから」
マイは全然気にせずに了解して、そのまま部屋に戻っていった。
分析業務では前回の業務を報告するための資料を作っていた。
数日かかる予定だが忙しくはないため、余裕を持って仕事を行っていた。
日が暮れて仕事終了の時刻が近づくが、二人は仕事をやめようとしなかった。ただ無言のまま仕事に集中する。そして残業が一時間を越えようとしたとき、沈黙の中でふみが口を開いた。
「ねえ暁斗」
ふみが立ち上がりソファーの方に移動する。ふみの顔を見て、暁斗もまた立ち上がり、ふみの隣りに座った。
「今日はお願いがあるんです」
「なに? めずらしいね」
「とっても素敵なお願いなんですが」
そういいながら、ふみが暁斗の体に横から抱きつく。
「ふみ。ここじゃ人が来るから」
「そうですよね」
ふみはやめようとせず、ただ暁斗にしがみついて微笑んでいた。
そのとき、分析業務室の扉が開く音が聞こえた。暁斗はその音に驚いたが、ふみは何も気にせず、暁斗にしがみついたままだった。
「ふみ、いる〜?」
その声はマイであった。
「いないの〜? こんな時間に来てって言っといてさぁ」
マイが部屋に入ってきて、ソファーの方を見て固まる。ふみが暁斗にしがみついて甘えている姿を見たからだ。暁斗は気まずそうにしていたが、ふみはマイに笑顔で手を振っていた。
「あ、ごめんなさい! すぐ出ていきますので!」
「待って、マイ」
すぐに後ろを向いたマイに、ふみが話しかける。
「マイ、こっちに来て。話があるんだ」
「ええー?」
ふみは相変わらず暁斗にしがみついたままであった。マイはふみの声に従って、ソファーの方に行き、暁斗とふみの対面のソファーに腰を下ろした。
(暁斗がいるんだし、殺される心配はないよね。)
少しだけマイは気になったものの、今までのふみとの付き合いからも、そんな様子はなかったため、最悪な自体だけはあまり考えないようになっていた。
「ふみと暁斗の仲はうまく行ってるようだね」
マイは少し気を楽にして、二人に話しかけた。気まずくしている暁斗に対する気遣いという意味もあった。
「うん」
「変なところを見せてしまってゴメンな、マイ」
暁斗が少し笑って言った。ふみは相変わらず楽しそうであった。
「マイに聞いて欲しいんだけど」
「なに?」
「最近私ね、暁斗とセックスしてるんだ」
ふみの言葉にマイと暁斗が固まる。
「へ、へぇ・・・」
マイがかろうじて返答するものの、暁斗は少し怒ったようにして言った。
「ふみ、そういう事はあまり俺の前で言ってほしくないんだけど」
すぐにふみが真面目な顔をして暁斗に言い返した。
「そういうことは暁斗とマイにしか言わないよ。暁斗とマイはどっちも私にとって大切な人だもの」
なにか言いたいことがあるんだろうと考えて、暁斗は黙った。
「マイに知って欲しいのは、セックスしても私は暁斗を殺したいって思わなかったこと。殺したいっていう衝動は、もっと私の理性を吹き飛ばすかのように襲ってくるものかと思ってたけど、そうじゃなかったの」
「ああ、そう言うこと。私にも関係がある話なのね」
マイがふみに返答した。殺されるという心配は、マイにとっては十分関係のある話だったため、素直にふみに頷いてしまった。
「そうなの!」
ふみが立ち上がってマイの隣に座る。そして今度はマイの体に抱きついた。
「ちょっと、ふみ、どうしたの?」
殺される心配は無いものの、ふみの行動について行けて無かった。
「今日はこれから暁斗とホテルに行ってエッチするんですが、マイも一緒にどうかなって」
「はいい?」
暁斗とマイが驚いて止まってしまった。
「ねえ暁斗。お願いってこれなんです。今日はマイも入れて三人でしたいなって。もちろん、暁斗とマイがいいって言ってくれないなら諦めるよ」
「ちょっと! ふみ、本気なの?」
「本気だよ。私がマイを、暁斗の目の前でいっぱい犯してあげる」
ふみの言っている意味が飲み込めてきたマイは急速に心臓が加速していた。顔が真っ赤になってしまい、体も震えてきているようだった。
「でもマイが嫌って言うなら、強要はしないよ」
暁斗がふみに話しかける。
「ふみ、そのお願いは普通じゃないぞ」
「あれ暁斗、怒っちゃった? だとしたらごめんなさい。でも私にとって、マイってすごく大切な友達なんだ。だから暁斗とも仲良くなって欲しくて」
「怒ってないけど、マイだって困るだろう」
暁斗がマイの方を向く。
「いや! こここここ困っては無いですけど!」
「マイ、落ち着けよ。大丈夫か?」
「ハイ!」
マイは見るからに動揺している。だが極端に嫌がっているという訳ではないようだった。
「暁斗はマイが一緒だとイヤ?」
ふみが暁斗に問いかける。
「うーん、そうだな」
しばらく暁斗は考えていた。
ただの性の遊びではなく、ふみと言う人物の本質まで考えなければいけない。
やがて顔をあげて、はっきりと二人に返答した。
「イヤじゃないよ。もしマイが了解してくれるなら、よろしくお願いします」
言い終わると、暁斗はふみとマイを見て少し笑ってしまった。
「良かった! 暁斗がいいってさ。ねえマイこっち向いて」
真っ赤になって慌てているマイの顔をふみが両手で包みこむ。それはいつの日か見た光景である。ふみが目を閉じてマイと長いキスをした。その様子を暁斗はずっとながめていた。
「落ち着いた?」
口を離してふみが問いかける。
「あの、ふみ」
マイがふみの両手をつかむ。そしてふみと暁斗の顔を交互に見つめて、そして更に顔が赤くなる。
「気持ちはすごく嬉しい。嬉しいけど。どうしよう、私、こんなにドキドキしてる」
「マイ、すごく、すごく可愛い!」
ふみが笑顔で話しかけた。もはや会話になっていなかった。
「でででも、ごめんなさい! 二人の邪魔は出来ないし!」
マイが勢い良く立ち上がる。
「あ、待ってマイ」
「ごめんなさい! 二人の邪魔なんて出来無いし!」
そして二人の方を見向きもせず、マイは一目散に出口にかけ出して、外へ飛び出して行ってしまった。
「待ってよー、マイー」
残されたふみと暁斗。マイの行動に驚いて、お互い顔を見つめてしまった。
「ねえ暁斗。怒ってない?」
少し落ち込んだようにふみが言った。
「びっくりしたけど、怒ってはないよ。でもマイは大分びっくりしただろうな」
「私ね、暁斗と同じように、マイとも愛し合いたいんだ。これって浮気かな。でもマイと暁斗も仲良くなってほしい」
「さあね。どうなるだろうね。マイ次第だよ。俺はふみに協力するよ」
「うん、ありがとう」
ふみの表情がパッと明るくなる。
「じゃあ暁斗さん、今日のホテルは無しです」
「え、そうなの?」
「マイは嫌がってなかったし、すごく興味があるようだったので、明日マイを口説き落とします。そして三人で一緒に行きましょ。その方がいいでしょ?」
「まあいいけど」
「一人でエッチしてもダメですよ」
「わかったって」
次の日。
昼休みにはいつもどおりふみとマイが休憩所で会っていた。
だがマイの態度は明らかに緊張しているようだった。
「マイー! お昼食べよ」
「う、うん」
しばらく弁当を食べていたが、二人は始終無言だった。
「ねえマイ、昨日のことなんだけど」
口を開いたのはふみだった。
「いきなり変なことを言ってごめんね。でもね、あのお願いはまだ諦めてないんだ」
「うん」
「昨日はマイがいなかったからホテルには行かなかった。でも今日はマイと一緒に行きたい」
「あの、ふみ」
非常に気まずそうにマイが口を開いた。
「私なんかが二人の邪魔をして、本当にいいの?」
「あ! その気になってくれた?」
ふみの顔が笑顔に変わる。
「でも」
「暁斗と一緒に話をしようよ。お弁当食べかけでいいからさ、分析業務室に移動しよ?」
「うんわかった」
ふみがマイの弁当に強制的に蓋を締めて、すぐにマイの手を握って分析業務室へと向かった。マイはずっと顔が赤いままであった。
ふみとマイは分析業務室のソファーに座って昼食を続けた。暁斗もソファーに座り、ひとりコーヒーを飲んでいた。
「マイがしてくれるって!」
ふみが嬉しそうに暁斗に行った。
「ちょっと待って。確認させて欲しいんだけど」
すぐマイが話に割り込む。
「正直に言うと私もそういうことに興味があるんです。でも二人の邪魔はしたくない。だから誘ってくれるのは嬉しいんだけど、本当にいいのかなって」
「いいよ!」
ほとんど何も考えずにふみは了承する。
暁斗がマイに話しかけた。
「楽しそうだし、いいんじゃないかな」
「そ、そうですか。なら暁斗ごめんなさい。ふみと、そういうことさせて下さい」
「ああ、いいよ」
暁斗が笑顔で答えたものの、ふみは納得していなかった。
「あれ? なんか違うよ、マイ」
ふみが二人に話しかける。
「私とマイはセックスして、暁斗にいっぱい見てもらうよ。でもマイは暁斗ともセックスするんだよ。もちろん私と暁斗のセックスをマイにも見てもらいます」
「え、暁斗とも?」
顔を上げたマイは、暁斗と目が会う。マイも暁斗も目を離そうとしなかった。
「嫌なら拒否しても大丈夫。無理矢理はしないからさ」
暁斗が優しくふみに囁く。
「イヤじゃないですけど。私って男性とそういうことした経験がないから、その」
マイが下を向いてしまった。
「初めてが暁斗って楽だと思うよ。痛くても治してもらえるし」
ふみが興奮気味にマイに言った。
「ふみ、暁斗、本当にありがとう。今日一日だけ、私にも夢を見させて下さい」
昼休みが終わり、マイが二人に手を振って部屋を出た。
その日のマイは仕事では全く使い物にならず、上司に怒られる事を通り越して心配されるまでだったものの、何とか業務を終わらせていた。
約束通り三人でホテルに向かい、一晩を過ごした。
翌日。
昼休みにふみとマイが出会う。
マイは恥ずかしさでふみとまともに目を合わせることが出来ずにいたものの、ふみは慣れたもので、そんなマイを可愛く思うようになっていた。
「昨日は楽しかったねー」
ふみに声をかけられて、マイの心臓が高まりだす。
何とか口を開いて、ふみに返答した。
「うん、本当にありがとう。すごく嬉しかったよ」
「またしようね」
「ええ!?」
その言葉に驚き、マイはふみの方を見る。
ふみの笑顔を見て、マイは顔に血が登っていく音を聞いた。
「またしようね!」
「は、はい」
「ねえ、マイ」
ふみが真剣な表情でマイを見る。
こうなると、マイにはふみに抵抗するすべはなかった。
「キスしていい?」
「え!? ここで?」
マイが驚いている最中に、ふみは深いキスをした。
ふみはちゃんと周りには誰もいない事を確認していた。
マイは非常におとなしくなってしまい、その日は仕事中もずっと夢見心地のままであった。
場所は変わり、悪魔層。
地獄地蔵とその上司の大天使が会議を行っていた。
会議室には地獄地蔵と対面してふたりの男性が座っている。
男性の一人が、地獄地蔵に向かって言った。
「治安維持層・layer2分析業務のメンバーである、佐々野暁斗室長、および瀬戸ふみ担当の二人は、合計した戦闘能力が高すぎて危険であるため、組織編成をする必要が出てきたとのこと」
地獄地蔵がそれを聞いてすぐに発言をした。
「だから暁斗とふみを引き離す、そういうことを言っているのか、大天長」
顔は動いていない。だが声色と空気からは非常に強い怒りが現れていた。
「そうだ」
大天長が少し悲しそうにして地獄地蔵へ言った。
「どうしてそのような事になったんだ。以前から私はそうならないようにと改善要求を出していたはずだ。それは大天井から概念基盤へ渡されて正式に受理されたと聞いている」
地獄地蔵が言う。それに反応して、大天長の横の男性が地獄地蔵へ言った。
「ちょっと待って。君はそう言うかもしれないが」
言葉の途中で大天長が遮った。
「いいから。地獄地蔵、続けて言いなさい」
少し間が空いたものの、地獄地蔵は続けていった。
「以前も同じように私の元からハルトと暁斗が引き離された。全く同じ理由だ。私と暁斗の二人の戦闘能力があまりに高すぎるということで、私を治安維持層・分析業務の席から外した。そうして私は悪魔層に戻り仕事をしている。何とか暁斗の上司でいることはできているものの、今は私が分析業務をすることは出来ない。それはあなたも知っているはず」
「ああ」
「ならなぜ、また同じことをくり返す? どういった理由があるのか聞かせてもらいたい。私と同じ思いを暁斗とふみにさせるつもりか。今の状況は、私、ハルト、暁斗の場合とは全く違っている。暁斗とふみは、あのとき以上に引き離すわけには行かないのだよ」
地獄地蔵の顔が怒りに満ちており、その顔が大天長に直接向いた。だが大天長は、その視線をただ受け止めるだけだった。
「君の言いたいことは分かる。いま地獄地蔵が言ったことは全て概念基盤に言った」
「そ、それは」
そんな反応に、地獄地蔵が慌ててしまった。
「君の言いたいことは本当によく分かっている。概念基盤だって君が出した要望を決して無視しているわけではないはずなんだ。あの連中はいかれている部分もあるが、なんだかんだでそう言うことに関しては真面目で熱心だから」
「なら何故?」
「わからん。あいつらは極端に真面目だが、それと同時によくわからんのだよ」
「どうにもならないという訳ですか?」
「すでに、君が感じた怒りくらいの抵抗はさせてもらっている。私だってね、地獄地蔵の嫌がることなんて、もう二度としたくないんだよ。君が私のことをどう思っているのかは知らないが、少なくとも私は、あのとき君が張り上げた怒鳴り声を未だに覚えていて反省している」
地獄地蔵の表情から怒りが一気に消え失せる。
「大変失礼なことを言ってしまい、申し訳ありませんでした、大天長」
「いいんだよ。今回に限り君が怒るのは仕方がないだろう。だがこの決断は変えられないかもしれない。私の抗議は概念基盤で審査中であり、結果がわかるのは少し時間がかかると思う。その結果が出た時点でいいから、佐々野暁斗室長と瀬戸ふみ担当に伝えてくれないか。つらいだろうがお願いしたい」
地獄地蔵が目を閉じる。
もはややれることは全てやってもらっている。そう感じ取った。
「分かりました」




