私との隔たり
2008年に書いた詩です
言葉によってのみ私はこの場に宿る
そもそも言葉なしでは存在さえ許可されない
忘却さえ確定的にもかかわらず
何も決まっていない無限の空白が沈黙する
その海に小石を投げるとき
重苦しい空から落ちてくる雨は今
いきあたりばったりの白紙に落とされた涙
消えてゆく存在と時間の距離
その空間さえも鋭利な冷たさを秘めて潜伏する
今の中に 私が存在する不思議
あなたが存在しない不条理
生まれた私と生まれていない私との隔たり
そこに時間と空間が永遠に沈黙している
これからもずっと
雨の一滴を掬う あなたの命を救うように
関係の崩壊し相転移した 粒子たちのたゆたみ
ゆるぎがたい存在を見出すとき
私は世界に存在を許可される
燦然と踊る文字たちの一字一字の外に 世界はある
海の一滴一滴の水の外にも同じように
私はそれを見つけるために 言葉を水にひたす
濁った水たちはなげくだろうか。
不純に汚した海に愛は宿るだろうか
暗黒の闇から無理矢理引きずりだした希望は
絶望と手を繋いでやってくるのだろうか
そう想えば途端
言葉はにじみ 消えてゆく
消えていったことだけを残して 消えてゆく