11-5
「どや?順は止まったか?」
三人共、横に飛んだ勢いで転倒した。ただ、それほど激しい転倒やあらへんから、三人ほぼ同時に起き上がった。
「怪我は無いか?」
「大丈夫や。」
「ウチもちょっと擦り剥いた程度や。」
そして、肝心の順は予想した通り方向転換出来ず木にぶつかって尚進み続けようとするけど、その木はかなりの大木でさすがに押し倒す事も出来ず、やがて順はその場に倒れ込んだ。
慌てて三人が駆け寄って、心が順を起こして座らせた。順は再び前進する事は無かったけど、その目は順とは思えんかった。
「大丈夫か!順!しっかりするんや!」
俺は順に呼び掛けてみたけど、相変わらず焦点は定まらへん。手足をバタバタさせて、時折呻き声のような低い声を発した。
何度も三人で呼び掛けると、突然、順とは思えん声で話し始めた。
「ワシの名は源蔵。田代源蔵や。訳あってこの者の体にヒューイした。」
「ヒューイ?憑依の間違えちゃうんか・・・。」
鋭く心が、ツッコミを入れるも源蔵と名乗る男はスルーして尚も話し続けた。
「そう、・・・ん十・・・年前のあの日・・・」
覚えて無いんかいっ!ハッキリ喋らんかいっ!と、声に出さず突っ込んだ。
「そう、あの日ワシとファビ子は・・・」
ファ、ファビ子?奥さん外国の人?いや、噛んでるだけやろ・・・。これ以上ツッコミは止めとくわ。
「仕事も兼ねて淡路島に旅行に行く予定やったんや。仕事は神戸である人と会う約束で、それが終わったらその足で淡路島の温泉に浸かって美味いもん食うて、翌日は観光予定やった。」
どうやら自分達があの日に遭遇した出来事を話してるようや・・・。心と麻紀も大人しく聞いてるようやった。
「ところが神戸で会う人物とは電話では、面白い事業計画があるから聞いて欲しいっちゅう話やったのに、実際はワシの採掘場に金脈があるから、一枚噛ませて欲しいっちゅう話やった。金脈の話は毎日のように共同事業と称して近づいて来ると人間にうんざりしてたとこやったんや。」
一呼吸置いて、続けた。
「とにかく、ワシは金脈に関しては誰とも手を結ぶつもりはなかったし、掘るとなっても、長年付き合いのある知人の会社に頼む段取りになってたんや。それをどこで聞きつけたんかわからんけど、田代館にまで押し掛けて使用人や社員にまで、聞いて回る輩まで現れた。」
順の調べた情報や、心の予想したのと同じや。
「いつも、苦労ばっかりさせてるファビ子にも、今日と明日は仕事の事は忘れて旅行に専念すると心に決めてたんや。せやから、ワシはその男との話しを・・・」
と、まだ話の途中で麻紀が源蔵の話を遮って、
「おっちゃん、話し長いわ!要するにウチらに事件の真相を調べろって事?そんなんドラマとちゃうねんから一般人には無理やで!警察の仕事や、警察の!ちゃんと警察には伝えて真相究明してもらうから、そろそろええかな?ウチお腹空いてんねん!」
ま、麻紀・・・言うてる事はもっともやけど、そんな理屈が通用する相手ちゃうで・・・。
「・・・お嬢ちゃんの言う通りや。どうかワシらの無念を晴らしてくれるよう、頼む。殺された七人の無念を・・・」
な、七人?田代夫妻に、田代館の使用人三人で五人ちゃうんか?慌ててそれだけ聞こうとしたんやけど・・・
「あれ?それがしは何してるんや?それに三人はなんでそれがしを見てるんや?」
あかん、聞く前に消えてもうた・・・。
「太一、七人も殺されたってどういうこっちゃ?」
「わからへん。そやけど逝ってもうた。とりあえず炭鉱の人骨を警察に調べてもろたらなんかわかるやろ。昔と違って科学捜査も進歩してるんやし。」
「そ、そやな・・・。」
途中から記憶の無い順に、今起こった出来事を話したけど、納得出来てへんみたいや。
「それがしに憑依?ありえへん。きっと三人共疲れてるんや!とにかく、急ぐで!」
そう言うと、さっさと分かれ道まで引き返し俺達もそれに続いた。




