11-4
順に貰ったチョコレートを頬張りながら、起伏のなだらかな小道を俺達は休みなく歩き続けた。
周囲が木々に覆われてるせいか、同じ道を延々歩いてる気がする。ちゃんと進んでるんやろか・・・。
そんな事が気になるから、時々変わった木や植物を見かけると目印として記憶するように務めた。
今のところ目印にした植物が再び現れる事は無い。どうやらちゃんと進んでるようや。それでも、さすがに疲れてきた。麻紀は時々立ち止まり、また歩き出す。
麻紀も急がなあかん事はわかってるから、文句を言う事はない。心や順も麻紀を気遣っていっしょに一緒に立ち止まる。そんな事を繰り返しながらとにかく前進し続けた。
すると、先頭を行く順が声を挙げた。
「やっと分岐点まで戻れた。ここからはすぐや!」
俺もここは覚えてる。下から来た時は右に行くか左に行くかでちょっとした議論になったんや。位置関係から、左は田代霊園の方向やから、止めとこってなったんや。
この先もたしかに気になる。けど、今はあかん。さっさと電波の届くとこまで移動せんと、小屋に残してきた沢口と小柄に申し訳ない。
「太一も同じ事考えてたんやろ?俺もや。なんかこの先が気になるねん。」
「でも、あかんで!もうちょっとで県道に出られるんや。ここは好奇心は押し殺すんや!あっ!」
そんなやり取りを他所に、順が真っ直ぐ進んでる事に気付いた。
「おい!順!そっちちゃうやろ!左や。左!」
慌てて心が叫んだけど、聞こえてへんのか、尚も突き進む順。
「あかん、止めんとマズい!夜にもこんな感じで沢口君と順が暴走したんや!」
その場におらへんかった俺には、イマイチ想像がつかへんかった。そやけど心の表情を見たら、止めんとマズいっちゅうことは伝わった。
「麻紀も手伝ってくれ!」
俺は、心と急いで順の方へ駆け寄る。そのまま、すでに曲がらな開かん方を越えて真っ直ぐ進む順に掴みかかった。
「わかった!ウチも手伝う!」
麻紀も駆け寄り三人がかりで順を止めようとするけど、信じられへん力で三人を引きずったまま前進するのをやめへん。
「あかん!なんちゅう馬鹿力や!前に回り込め!一人じゃあかん!全員や!」
救いは順の進む速度はゆっくりや。前に回り込むんは容易い。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!ちょ、ちょっと、ホントに順ちゃん?」
前に回り込んで順の顔を見た麻紀が叫んだ。俺は角度的に順の顔が最初見えへんかったから、麻紀が叫んだ意味がわからへんかった。そやけど、ようやく順の顔が見える位置に来てその意味がわかった。
「夜の時もそやったんや。もう別人や・・・」
カッと見開かれた目はどこを見てるんかわからへん。実際にはその目以外は普段と変わらへんねやろけど、その目の迫力に別人に見える・・・。それでも、とりあえず前進するのを止めるんが今は先や。俺が順の方を前から押すように両腕を突っ張って、踏ん張る。その後ろに心、さらに後ろに麻紀と三人がかりでとにかく踏ん張って順を止めようとした。
それでもどんどん押されていく。
「おいっ!麻紀!なんとか方向変えて足を引っかけられへんか?」
地面が砂やから滑って踏ん張る事が出来へん。それやったら方向変えて木とか岩とかを背にして踏ん張った方がええはずや。
「後ろ見る余裕無いねんけど、なんとかやってみるわ!」
たしかに俺も後ろを振り返る余裕はない。少しでも気を抜いたらどんどん加速して押されそうな気がする。
「オッケーや!ちょっと向き変えたらおっきい木があったわ!でも、ウチの力で踏ん張れるかわからへん。っていうか押しつぶされへんやろな?」
「わ、わからん。ヤバくなったら横に逃げるんやで!心は大丈夫か?」
「おう!麻紀ちゃんのお蔭で踏ん張れそうや!ただ、このままじゃ埒があかん!なんとか順を倒して抑え込まんと・・・」
「わかった。なんとか頑張ってみるわ!」
とは言え、相変わらず凄い力で一向に緩む気配がない・・・。困った。
!?
もしかして前進しか出来へんのちゃうか?それやったら俺らが離れたら木でぶつかって止まるんちゃうか?
「心、麻紀!せいので横に離れろ!ええか?」
「なんか考えがあるんやな?オッケーや!」
「ウチもなんとか頑張る!」
「ほな、行くで!せいの!」
俺の掛け声で三人一斉に横に飛んだ。




