11-3
小屋の外からは小鳥のさえずりが聞こえた。さすがにニワトリはおらへん。一応警戒しつつ扉に耳を当て、周囲に誰もおらへんか確認した俺は扉を開けて外に出た。
もしかして永久に夜が明けへんのちゃうか?とまで思ったけど、ちゃんと外は明るい。天気もええ感じやけどさすがに明け方、まだ肌寒かった。のんびりしてると、またすぐ暗くなるような気がして、俺は急いで小屋に戻ると麻紀を叩き起こした。
「朝や!やっと朝が来たで!急いで下山するから起きてくれ!」
「モーニング・・・食べる。トースト・・・食べる。コーヒー・・・食べる。」
「コーヒーは飲むんや!って、さっさと起きんかいっ!」
この時ばかりはさすがの俺も強い口調で麻紀に声をかけ続けた。そして五分・・・ようやく麻紀は目覚めた。
「あれ?あの人足どないしたん?」
「話せば長くなる。とりあえず明るくなったから急いで下山するで!」
「ウチ、めっちゃお腹空いてんけど・・・。」
「我慢してくれ!沢口君怪我してるから、助けも呼ばなあかんねん。」
「わかった。ウチと太一だけで行くん?」
「いや、コガッチと沢口君を残して、心と順も一緒に下山するで。ほな、出来るだけ早く下りて、助け呼ぶから、もうちょい我慢して待っててや。」
俺は沢口と小柄にそれだけ言うと、心と順を促して小屋を後にした。暗い内は気づかへんかったけど、よく見たら森の一部に細い道が見える。
「あんな小道あったやろか?」
俺がそう言うと順が、
「最初にここへ辿り着いたときはあそこの小道から出てきたんや。そやから、あの小道を進めば、二又の道に出るやろ。それを左に進めば道路に抜けられる。問題はそこから車の方へ行くか、歩いて下山するかやけど、そこまで行ったら電波は通じてたはずやから、とりあえず助けは呼べるわ。」
「ほな、あの道から進んだらええんやな。急ぐで!」
正直、あんまり寝てへん・・・いや一睡もしてへんから、フラフラや。それに麻紀だけじゃなく俺もお腹空いて死にそうや。すると、順がリュックから何かを取り出した。
「こんなんしかあらへんけど、食べてくれ。」
そう言って手渡してくれたんは、チョコレートやった。包み紙に包まれたチョコレートを三個ずつ皆に手渡した。
「喉が渇くかもしれへんけど、ちゃんと四人分の水は小川で確保しといたから安心して食べてくれ。甘いもんは疲れが取れるし、エネルギーに変わるんや!」
普段はチョコレートを自ら好んで食べる事は滅多にないんやけど、こんな時っちゅうんもあるんかしらへんけど、めっちゃ美味い!こんなにチョコレートが美味しかったとは・・・
「どや、美味いやろ?有名なグディバのチョコレートや。それ1個で850円もするんやで!」
は、八百五十円?聞き間違えたんやろか・・・
「グディバのチョコをなんであんたが持ってんの?」
麻紀はグディバを知ってるようで聞き返す。
「それがしはこう見えてチョコレートにはうるさいんや!」
いやいや、いくらうるさい言うてもこれ一個で八百五十円って牛丼何杯食えるんや・・・。あかん!牛丼とか考えたら余計に腹減ってきたわ。そう言えば、この包み紙高級感満載やな・・・。
「グディバなんか、年に一回女子が本命にバレンタインであげるくらいやと思ってたけど、まさか順からもらうとは予想外やったわ。たしかに百円くらいのチョコレートとは違って、苦味もあるし、味には疎い俺でもちょっとは違いわかるわ。」
心が値段を聞いて改めて味わってる。そこへ順が、
「すまん!心が今食べてるのは1個10円のチュロルチョコやったわ・・・」
うわっ!心があれだけ熱く語ったのに、チュロルチョコは無いやろ・・・って、絶対わざとやろ!
「・・・言われてみたら食べ慣れた味やったわ・・・。」
あかん、心の声が小さい・・・消え入りそうや。赤っ恥もええとこやで。こっちまで恥ずかしくなってきたわ。順、いつか痛い目に遭うで・・・。




