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「ちょっとあんた達!ボーっとしてないで手伝って頂戴!誰でもいいわ!この救急箱には切る物が無いの。ハサミかナイフを探してくれない?」
小柄が少しイライラした調子で叫んだ。順がキッチンの方へ歩いて行くと、引き出しを上から順に開け始め、二番目の引き出しを開けると、
「こ、これは!?で、伝説のラグナロクの剣!」
「ただの果物ナイフや!さっさと持ってこんかいっ!」
素早く突っ込むも、それを無視して更に順は、
「むむむ!今度はメデューサの盾!?」
これには心が、
「ただの胸板や!」
違う!心・・・。ちゃんと突っ込んでくれや・・・。まな板や!
「馬鹿な事やってないで、早く持って来て頂戴!」
小柄に怒られ順は大人しく果物ナイフを差し出した。
「これで大丈夫よ。固定したから、痛みはマシなはず。下山したら念の為病院でレントゲン検査してもらうといいわ。」
「すまん。コガッチ。助かったわ。それに皆さんご迷惑お掛けしてすんませんでした!」
沢口はまだ痛むのか、表情が強ばっとる。
「気にせんでええですわ!ただ、その足じゃ歩くのは無理やろし、日が昇ったら俺ら四人で下山して、助け呼ぼうと思うんですけど、それで構いませんか?」
「僕は全然構いません。むしろ助かります。」
「仕方無いわね。サワグチン一人にする訳にはいかないし、あんた達にその役はお願いするわ。」
小柄も了承してくれたし、夜が明けたら急いで下山や。山小屋からはそんなに距離は無かったはずや。後一時間くらいか・・・。これ以上何も起こらん事願うわ。
「今度はあんたよ!その手見せて頂戴!」
「え?俺?」
「あんた以外に誰がいるのよ!」
小柄が心の近くへ行くと、順が巻いた包帯を外し始めた。
「きちんと巻いてあるわね。なかなかやるじゃない。」
「それがしに不可能は無い。地元ではミイラ男と呼ばれるくらい包帯にはうるさい男や!」
ミ、ミイラ男?どんなあだ名や!
「っ痛!」
心の顔が苦痛に歪む。
「我慢するのよ!ちゃんと消毒しとかないと、後々面倒よ!傷は大した事無いわ。少し長いから痛む部分が多いけど深さは浅いから化膿しないように、しっかりと傷口を濯いで消毒液をかけておけば、大丈夫よ。」
「おおきに。助かったわ!」
「はい、オッケーよ。」
小柄の風貌や普段の言動から想像出来へん手際の良さで沢口と心の手当てを終えるた小柄は気のせいか、キラキラして見えた。でも、よく見ると鼻の下や顎の辺りに剣山のように硬いと思われるヒゲが伸び始め、ブルー感満載やった。
それを見てどうしても俺は我慢できず呟いてもうた・・・。
「ブ、ブルジョリ!?」
「ブルジョリ?イタリア語?どう言う意味よ!」
とっさに俺は・・・
「ご、ご苦労様っちゅう意味や!」
と、適当な事を言うた。
「あら、洒落た言い回しじゃない。覚えておくわ!」
いや、覚えんでええ・・・むしろ、忘れてくれ。今すぐに・・・。
それからは、何事も無く時間が過ぎ、長過ぎた夜はようやく終わりを告げた。




