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小屋を飛び出すと俺は急いで小屋の裏手にある小川へ向かった。普段ならこんな山奥のほとんど周囲も見えない暗闇を一人で出歩けば恐怖を感じるんやろけど、今は、切迫した状況や使命感からなのか、そんな事は一切考えへんかった。
小川に向かいながらペットボトルのキャップを外しといたから、小川につくと急いでペットボトルを水の中に入れる。
念の為少し入った状態でペットボトルを振って濯いだ。それにしても汲みにくい・・・。なかなか水が入ってくれへん。とりあえずペットボトルの腹を押さえて、吸引力を借りて少しでも早く入れる努力を試みた。
七分目くらい入ったところでキャップを締めると、急いで引き返す。小屋に入ると小柄が沢口の足に何かをしているようやった。
「コガッチは看護士らしいわ。医者では無いからハッキリした事は言われへんけど、沢口君の足、骨に異常は無いけど腫れが酷いから一人で歩くんは無理かもしれへんって事や・・・。」
心が状況を説明してくれた。こ、小柄は看護士やったんか!驚きながらも、俺はペットボトルを小柄に渡し、ふと、心も手を負傷してる事に気付いた。
「心も怪我したんか!大丈夫なんか?結構血が出とるがな・・・。何があったんや?」
「手は大した事あらへん。何があったんかは正直俺にもようわからへんのや。突然、沢口君と順の様子がおかしくなって、森の中をどんどん奥へ進み出して、こらあかん!思って必死で止めたんや。で、今聞いたんやけど、二人共記憶にないそうや・・・。」
イマイチその説明では状況が掴めへん・・・。つまり、早い話が映画なんかでよくある取り憑かれっちゅうやつか?いつもやったら単なる冗談やと軽く流すとこやけど、三人の姿見たらさすがになんかあったんは確かやろ・・・。
まさか、三人で喧嘩したなんて事は無いやりし・・・。
「それで順も負傷したんか?」
「いや、この手の怪我はその前に転んでしもただけや。沢口君は三人が縺れる様に倒れた時に負傷したんや。順だけはなんでか派手な倒れ方した割りには無傷やねんけどな・・・。」
「それがしは日頃から鍛え方がちゃうから、あの程度ではなんともあらへん!」
「って、その時の記憶にないんやろ?」
「・・・。不覚にも思い出されへんのや。たしか気配を感じてその方向を調べようとライトを向けたとこまでは覚えてるんや。それからは気付いたら三人地面に倒れてて、沢口君が歩かれへん言うから心と一緒に支えながらここへ来て現在に至るっちゅう訳や!」
順に取り憑くとは、ええ度胸してるわ。普通は心と沢口に取り憑くやろ・・・。いや、霊的には順の方が憑りつきやすいんかもしれへん・・・。それにしても、沢口が歩けんとなると、大変や。ホンマは助けを呼びたいんやけど、相変わらず電波は繋がらへんし、本来山小屋にある無線というのか、緊急連絡用の電話みたいなもんも、壊れてるんか使い物にならへん。
つまり、沢口を担ぐなり、支えるなりして下山する事になる。・・・いや、もしくは沢口と小柄にここで待っててもらって、俺たちが連絡出来る場所まで移動して助けを呼ぶ方がええかもしれへん。朝になったら、別に怖さも無いやろし小柄も納得するやろ。




