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多分、これ以上この話題触れても悲鳴の繰り返しになるだけやろ。遠い昔・・・見た感じ年齢不詳系なコガッチやけど、沢口の見た目を考えれば俺らと大体同じくらいの年代のはずや・・・。
それやのに遠い昔って、ちょい気になるけど、普段の言動も訳わからん事多いし、いちいち気にせえへん方がええんかもしれへん。
「ちょっと、今何か聞こえなかった?微かに叫び声・・・いえ、悲鳴だわ。悲鳴が聞こえたような気がするんだけど、あんた何も聞こえなかった?」
少し怯えたような表情の小柄がそう言いながら扉の方に近付いて耳をあてた。
「俺には何も・・・。」
「しっ!静かにしてよ!聞こえないでしょ!」
いや、あんたが聞いてきたんやろ?って、俺には何も聞こえんかったけど、もしかして俺が耳悪いんか?たしかに、音楽聴く時結構大音量やし、声もデカい・・・。
「たしかに聞こえたんだけど、あんた達二人だけ置いて行く訳にもいかないし、何かあったら小屋に逃げてくると思うわ。」
一応俺らの事も気遣ってくれてるみたいや。実際小柄が外に出て行ったら、爆睡中の麻紀を一人で守るんは難しい。向こうは三人おるんやし、多分大丈夫やろ。そう言い聞かせた。
「ただ、何かあったらすぐ飛び出せるようにあたいはここにいるわ!あんたは何時でもそのコ連れて逃げれるようにしとくのよ!」
「わかった!窓から逃げれるように鍵は開けとくわ!」
俺は一番近くにある窓に近付くと鍵を外した。と、同時にもし窓から侵入されたらどうするねん!とも思ったけど口にはせんかった。
小柄は扉に耳を当て、外の様子を探ってたけど、しばらくすると、
「人が近づいて来る気配は無いわね。」
と言い、扉から離れた。
「多分、叫び声は気のせいやろ。二人共あんなもん見た後やし、過敏になってるんや。」
「そうかもしれないわね。今日は色々あり過ぎて、さすがに疲れてるんだわ。そうよ!そうに違いないわ!」
なんで小柄はいつも語尾に近付くにつれて声のトーンが上がるんやろ・・・。その後、十分ほど他愛の無い会話が続いた。と、小柄が突然立ち上がる。
「今度はたしかに聞こえたわよ!」
「おう!今のは俺にも聞こえた!けど声じゃなく音ちゃうか?」
「そうね、たしかに音だったわ。それも鈍い音だったわ。屋根から雪が落ちるような音と言えばいいのかしら?」
分かり易い表現や。ドスンっちゅう感じやった。ただ、どの方向から聞こえたんかイマイチわからへん。小柄が一番近い俺が鍵を外した窓に近寄り、窓を開けると身を乗り出して周囲を確認する。
「こっちは何も無いわ。」
小柄が覗いた窓の方にはトイレがある。俺は反対側の窓へ急いだ。鍵を外すと窓を開けて、左右を見回す。しかし、小屋から漏れる明かりの範囲以外は真っ暗で何も見えへん。
耳も澄ませて見た。
ん?
微かに話し声が聞こえる・・・。これは心の声?なんか息遣いも荒い・・・。俺は窓から身を乗り出すと、大声で声をかけた。
「そこにおるんは心か?」
すると、
「そ、そうや!ちょっと色々あって負傷したんや!今から小屋に戻るから、救急箱あったら用意しといてくれ!」
怪我したんか?とりあえず小柄に・・・
「大変や!誰か聞けへんかったけど怪我したみたいや!コガッチその辺に救急箱あらへんか?」
「傷の程度は?」
「わからへん!暗くて見えへんねん!とりあえず救急箱無いか探してくれって言うるねん!」
小柄と反対側の棚を俺は片っ端から調べた。山小屋やったら救急箱くらいあるはずや!
あった!これや!
俺は救急箱を手にすると、部屋の中央付近まで移動する・・・と、扉が開いて心と順に両脇を抱えられた沢口が苦痛に表情を歪めてた。
「サワグチン!大丈夫?とりあえず真ん中辺りまで連れてきて!太一ちゃん、悪いけど裏手の小川で水を汲んできて頂戴!」
なんや、小柄はこれまで見せた事ないくらい冷静かつ的確に指示出し始めたで。せやけど、水を入れる容器があらへん・・・。すると順が、
「とりあえずこれに入れたらええんちゃうか?」
と、リュックから空のペットボトルを取り出した。俺はそれを受け取ると急いで水を汲みに向かった。




