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心は順と沢口を連れて出て行った。麻紀は床で寝てもうとる。抱えてベッドに運ぼうかとも考えたけど、面倒くさいから止めた。
また、小柄と二人か・・・。思わず溜息が漏れた・・・しまった!
「今の何よ!溜息?そんなにあたいと一緒が嫌なのなの?なの?」
待ってましたと言わんばかりに小柄が絡んできた。
「いや、別に・・・。今日という日を振り返って溜息ついただけや。」
「今日という日?まだ二時間ちょっとよ?それでもう溜息?そんな事じゃこの先生きてけないわよ!」
揚げ足取りの名人か!昨日も含めてや!
「麻紀ちゃんだったかしら?あんたの彼女?こんな時によく寝ていられるわね。どう言う神経してるのかしら。」
いちいちトゲのある言い方やな。ここはスルーや!スルー!そんな事より、なんか胸騒ぎがするで・・・。心達大丈夫なんやろか?
「外に出た連中が気になるみたいね?あたいとサワグチンが彷徨ってた時は、あたい達以外には誰とも出会わなかったけど、あんたはあたい達以外にも誰かと出会ったようね。」
「コガッチは屋敷まで行ってへんねやろ?ずっと森の中を彷徨ってたんか?」
「たしか、最初の頃は道を歩いてたのよ。ところが気が付いた時には道どころか、周りは木、木、木よ!陽があった内は、なんとか方向を把握してたんだけど、暗くなると、もうどっちがどっちだか訳わかんなくなっちゃったのよ!」
「で、そのまま彷徨ってる内にここに辿り着いたっちゅうわけか・・・。」
まあ、山中は広いから、そう簡単に出会す事も無いやろ。まさか、何千人も宝探しに来たなんて事は無いやろし・・・。せいぜい、十数人。あくまでも推測やけどな。正直、そんな情報を真に受けて動き出す連中がおるんかも眉唾もんや。
「とにかく、サワグチン達が戻ってくるまで、こっちはこっちで頑張らなきゃならないわ!そっちで寝てるコは戦力外だから、何かあった時は二人ね。足引っ張らないようにするのよ!わかったわね?」
「はいはい。仰せの通りに・・・。」
「歯切れが悪いわね!まあいいわ。それにしても何も無い小屋だわ。それなのに、ベッドだけはゴージャスだわね。」
ゴ、ゴージャス?その昭和な響きはなんや?コイツ、ホンマは何歳なんや・・・。
「ところでコガッチはどう思う?」
「何がよ?」
「さっきの顔や。たしかに俺らは見たんや。便器のは強烈やったし・・・。」
「ちょ、ちょっと、やめてくれる?必死に忘れようとエンドルフィン分泌させてるのよ!アドレナリンだけじゃ不十分なの!」
そない簡単にエンドルフィンって出せるもんなんか?
「せやけど、コガッチも見たやろ?」
「た、たしかに見たわよ。あんたは後ろ側だったけど、あたいは正面よ!正面!物凄い表情だったわ・・・きゃああああああああぁ!」
は、始まった・・・。悲鳴オブコガッチ・・・。でもたしかに位置的にコガッチは顔の方見たはずや。もしかして、俺が便器で見た顔と同じやったんやろか?
「どんな顔やった?女か?男か?」
「あれは間違いなく女だったわ。ただ、遠い昔に見たような気がするわ。でもどうしても思い出せないの・・・。誰だったかしら。」
コガッチは必死で何かを思い出そうとしているようだった。




