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怖恐 ~ 田代館の恐怖 ~  作者: くきくん
第九章 心と順と沢口
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9-1

太一が見たっちゅう顔だけの女・・・。こんな状況で他人を脅かしたりする奴ちゃうし、アイツが何かを見たっちゅうのはたしかなんやろ。それに最初の地面に転がってた顔は小柄も見たらしいし、やっぱり最初に俺が予測した通りの展開になってもうた。


このパターンは太一達には申し訳ないけど、こっちのメンバーは何事もなく、むしろ太一達の方でなんかが起きる可能性が高いんや・・・。


こればっかりは防ぎようが無いから、そっちはそっちでなんとか、耐え凌いでくれ。


とは言え、こっちには問題児の順がおるんや。まさにトラブルの火種・・・。生身の人間も幽霊も関係あらへん。ここはちょっと大人しくしててくれたらええんやけど・・・早速無理かもしれへん・・・。


「沢口君はスポーツはなんかしてたんでっか?」


唐突に順が沢口に尋ねた。不意をつかれた沢口は一瞬戸惑いを見せたが、少し考えてから、


「スポーツっちゅうか、学生時代に三年程合気道やってましたわ。」


「さ、三年も再起動ですか?相当ウイルスに感染したパソコンやったんですね。」


こ、こいつあほか!合気道や!合気道!誰が三年も再起動し続けるパソコン置いとくねん!


「は、ははは・・・。」


そら、笑うしか無いわ。


「順君は何かしてはったんですか?」


「それがしは、剣道、柔道、空手に少林寺、それに空手ですわ!」


空手二回言うたわ。


「そ、そうなんですか。かなりの格闘家なんですね。」


「夢の中で二回熊を倒してるんや!一回は南極でホッキョクグマと素手で戦って、二回目は阿蘇山でツキノワグマと日本刀で戦ったんや。どっちも無傷では済まへんかったんや。これ見て下さい!二度目の戦いで負傷した傷ですわ!」


「順!ちょっと待て!夢の中の戦いでなんで負傷するんや!」


「わからへんか?心。それだけ激しい戦いやったんや。夢から醒めた時には柱に足をぶつけてた・・・。まさに激闘やったんや。」


あかん。コイツとまともに会話したら疲れるわ。誰や!順を呼んだんは・・・俺や。俺が連れて来たんやった。


「順君は面白い人ですね。心君とは幼馴染ですか?」


「いや、専門学校で一緒やっただけですわ。幼馴染なんは、太一の方です。」


「まあ、幼馴染みたいなもんですわ。」


しばらくは、特に意味の無い会話をしながら歩いた。小屋の周りの広場を奥の方まで歩くと、森の手前で今度は外周に沿って時計回りに歩く。特に指示する訳でも無く、自然にそうなった。


手分けするには暗過ぎる上に人数も少な過ぎる・・・。各自スマホの明かりプラス順のペンライトが唯一の明かり。小屋の付近は少し明るかったけど、少し離れるとまさに漆黒の闇が広がっとる。


「これ、ライト消したら何も見えへんねやろな。」


「いっぺん試して見るか?」


そう言っていきなり順がペンライトのスイッチを切った。それに合わせるように沢口もスマホの電源をオフにした。別に試したくもなかったけど、成り行き上仕方なく俺も電源を切る。


「うわっ!なんも見えへん!これはあかん!さっさと点けろ!」


慌てて俺はスマホの電源を入れた。


「うおっ!」


その瞬間目の前に女の姿が浮かび上がって俺は驚きのあまり蹌踉よろめいた。そのまま後に倒れ込む・・・。


「痛っ!」


左手に痛みが走る・・・。何かが刺さったんか?激痛までいかへんけど、明らかに切ったような痛みや。とっさに手の平にスマホをかざすと、血が滲んでた。


「大丈夫か?心!」


順が手を差し出して俺を起こす。俺は手の痛みより女の姿が気になって周囲に目を配る・・・が、どこにも女の姿は無い・・・。そこには心配そうに俺を見てる順と沢口の姿しか無かった。


気のせいか?


「大丈夫ですか?手、痛めたんですか?」


沢口が俺の手を見て言う。


「結構血が出てるで。ちょっと待ってや。すぐに薬と包帯でなんとかするから・・・」


順はリュックから薬と包帯、それにガーゼを取り出すと、手際良く俺の手に応急処置を施してくれた。


「消毒液と言います。ちょっと染みるやろけどバイ菌入ったらえらいこっちゃ。とりあえずこれで大丈夫なはずやけど、小屋に戻ったらもう一回傷の状態みるから、今は、我慢してくれ。」


「サンキュ!助かったわ。」


こういう所はホンマに頼りになる男や。


「順君なんでも持ってはるんですね!それに見事な手際良さ。感心しますわ!」


「この程度は三時のおやつ前や!それより心、なんでコケたんや?それにめっちゃ驚いてたみたいやけど・・・。」


言うべきか・・・いや、見間違いかもしれへんし、何より順に言うても意味が無い。


「いや、いきなり暗くなって、ビックリしただけや。気にせんとってくれ。」


とは言うたけど、順も沢口も、信じてへんやろ。あれだけ派手に転倒したんや、ただ事やないんはバレバレや・・・。


それでも、それ以上は聞いてこんかったし、気を取り直して見回りを続けた。それ以降は奇妙な出来事も無く、ちょうど外周の半分の所に差し掛かった。

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