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怖恐 ~ 田代館の恐怖 ~  作者: くきくん
第八章 山小屋
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8-24

よく見たら今度は順が壁際で喋り始めた。その姿を不思議そうに、沢口と小柄が見つめる。


「あのぅ・・・。」


さすがに気になって沢口が俺に問いかけてきた。そらそうや。俺も未だに一人で喋ってるんちゃうか?と、疑いたくなる・・・。


「あれは、順にはどうも霊の姿が鮮明に見えるみたいなんですわ・・・。ただ、順には霊と人間の区別がついてへんみたいで・・・というか彼自身、霊の存在は信じてへんので、ますます意味がわかりません。」


沢口も苦笑いするしか無かった。一方の小柄は怖くなったんか、今にも悲鳴あげそうな表情のまま固まってもうた・・・。


「や、やっぱりいるのね!だから小屋には入りたくなかったのよ!ヒーッ!」


まあ、十分アンタも怖いけどな。


「何か言った?」


うっ!こ、こいつも心の叫びが聞こえるんか!いや、たまたまやろ。振り返ると心も座ったまま眠ってるようやった。まあ、俺と順が起きてるから大丈夫やろ。


それにしても順はいつまで俺らの見えへん何かと喋り続けるんや。


「ああ、あの二人はそれがし達の新しい仲間や!沢口君と小柄君。奥寺さんと雑賀さんは、小橋さんの同級生なんですか?ほう、という事は秋川さんの一コ下っちゅう事ですな・・・」


お、おいっ!一体何人おんねんっ!さっきの二人ちゃうんかい・・・。俺には手振り身振りで独り言を話してる順が、不気味過ぎるねん!ただ、あれが演技やったら、相当な役者さんや!


ずっと見てたら、なんか見えるような気がしてくるもんなぁ・・・。でも、やっぱり見えへんねんけどな。


「一人で行けるやろ!あほかっ!」


突然沢口が小柄に怒鳴る。どうやら、小柄が一人でトイレは怖いから沢口について来て欲しいと懇願してるようや。


まあ、丑三つ時やし、トイレまでは小屋から漏れる明かり以外は真っ暗や。正直俺も一人は怖い。それに、俺もトイレ行きたくなってきた・・・。


「トイレやったら、俺も行きたいし、一緒にどないですか?」


「怖いのね?仕方無いわ、あたいがついてってあげるわ!」


コラッ!なんでやねん!なんでそうなるねん!・・・まあええわ。小柄はついてってあげるとか言いながらも、俺の後ろから隠れるようにしてついてきた。ドアを開けると、やっぱり陽は上ってへん。真っ暗や。小屋伝いに微かな光を頼りに慎重に歩く。


小柄は俺の服を掴んでついてくる。


「ちょっと、ホントに真っ暗ね!きゃあああああ!何か踏んだわ!今の何?なんなの?」


とにかくやかましい小柄・・・。どうせ石でも踏んだんやろ!黙ってついてきたらええねん。俺が無視して行こうとするのに対して、小柄が凄い力で俺を引き寄せた。


「なんやねんなぁ・・・石でも踏んだんやろ?」


「石じゃないわ!きっと顔よ!」


あほかっ!なんで地面に顔が落ちてるねんっ!それに何回かここは通ってるし・・・


「うおっ!」


そこには明らかに人の顔のようなものが転がってた・・・ちょ、洒落にならん!小柄は一目散に小屋の方に走り出した。


「おいっ!待て!待ってくれ!」


さすがに心臓が止まるかと思った。慌ててその人の顔らしきもんを避けるように小柄の後を追う。もう少しで先に小屋に入った小柄にドアを閉められるとこやった。多分、人生で一番早く走ったと思う。県大会くらいなら確実に優勝かと思えるほどに・・・。

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