表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怖恐 ~ 田代館の恐怖 ~  作者: くきくん
第八章 山小屋
72/90

8-20

「あれ?」


心が声をあげた。心以外はドアに背を向けてたから、一瞬、心がなんで声を上げたのかわからんかったけど、心の表情が強張ってたから急いで心の視線の先、つまりドアの方を振り返った。


そこには沢口と小柄・・・!?


その後ろに見た事のない・・・いや、それは間違いや。たしか、屋敷を出ようと勝手口から通路を抜ける最中に心が誰かに掴まれたと言い出した時に順が向けたライトの明かりに浮かび上がった女やった。


「うわっ!」


俺は座ったままの状態でのけ反った。麻紀も声が出んみたいやけど明らかに恐怖に満ちた表情を浮かべてる。・・・しかし、順はと言うと、


「あれ?こんな山奥でナンパなんかしてきたんでっか?エライ清楚なレディ捕まえましたな!」


すると、沢口が首をかしげて、


「とんでもない。僕らは言われた通り裏手の小川で水飲んできただけですわ。」


笑いながら沢口が答える。と、小柄は俺たちの視線が自分たちの後ろを見ていることに気付いたのか、無言のまま振り返る・・・


「きゃああああああああああああああああああああああああっ!」


え?ちょ、そのガタイでその悲鳴は無いんちゃうか・・・。小柄は沢口に抱き着いてガタガタと震えだした。俺たちはむしろ小柄の反応に驚いて唖然となった。


「こら!離れろ!重いねんコガッチ!」


な、なんやこの男は・・・。見かけとは裏腹に脳に響くような甲高い叫び声。そして、子猫のような・・・いや、子猫に失礼や!例えようもない潤んだ瞳・・・なんか気持ち悪い・・・。


と、いつのまにか女の姿は消えていた。たしかにおったはずや。俯いたままやったけど長い黒髪の隙間から覗く瞳は何かを訴えてるようにも感じた。


「あれはたしかメイドの一人やったよな。」


心が耳元で呟く。


「そうや。間違いなくメイドの一人や。今度は順にも見えてたみたいやな。」


「もう嫌や!早く帰りたい!」


麻紀が怒ったように言う。いや、俺もさっさと帰りたい。今を楽しんでるんは順くらいのもんや。


「あれ?レディは恥ずかしがり屋さんなんかな?おらへんようになったけど・・・それがし探してくるわ!」


と、駈け出そうとする順の服を心が掴んで制止する。


「順、落ち着け!そんな女は初めからおらへんかったんや。疲れてるから幻覚見たんやろ・・・」


「いや、それがしの目にはちゃんと美女二人が映ってたで!」


「ふ、二人?」


思わず全員が同時に声を上げた。たしか、俺が見たんは一人やった。


「え?黒髪の姉ちゃんと、黒髪の姉ちゃんがおったやろ?」


どっちも一緒やがな・・・。


「たしか、一人はストレートで、もう一人のそれがしの好みど真ん中の三つ編み姉ちゃん。」


三つ編み?そんなん見てへんで。でも、たしか写真に写ってたメイドのもう一人は三つ編みやった気がする・・・。


小柄はまだ沢口を掴んだまま目を潤ませて震えてる。怖がり方は麻紀よりひどい。一方の沢口だけはその姿を見んかったのか、首をかしげて、小柄を引きはがそうと必死や。


「皆さんどないしましてん?コガッチまで・・・僕にはなんで皆さんがそんなに狼狽えてるんか、ようわかりませんわ。」


「いや、気にせんでええよ。仲間内で脅かすん流行ってるんや。それにそこの兄さんも巻き込んでしもたみたいで・・・」


誤魔化しきれてへん気はするけど、こんな事しててもしゃあないから、とりあえずドアを閉めて、部屋の中央に全員で座ることにした。そやけど、妙な出来事、取り合わせのせいでしばらく無言のまま、重たい空気だけが流れた。


最初に口を開いたのは以外にも小柄やった。


「じ、実はあたい、ここへ来る途中でも女の姿見たのよ。」


あ、あたい?・・・いや、もうそんなレベルでは驚いてられへん。それより、来る途中でも女を見たっちゅうのは、ちょっと気になるで。


「さっきの女と一緒なんか?」


「そこのそれがし君が言うてはった、三つ編みの女を見たのよ。初めはこんな山奥で女一人で何をしてるの?って不審に思いながらも、こんな所で一人は可愛そうかなって近づいたのよ。」


そこで、一呼吸おいて、何故か深呼吸をし始める。呼吸が整うと更に続けた。


「そうしたら、あたいにこう言ったの!・・・」


な、なんや!もしかして田代家連続殺人事件に関する情報かもしれへんで!心も固唾を飲んで見守っとる。で、なんて言うたんや?


「彼女は・・・『富士山麓にオウム鳴く』ってあたいに告げたのよ!」


はぁぁぁぁぁ?それルート2か3の覚え方ちゃうんか?


「それだけ言うとあたいの目の前から忽然と姿を消したの・・・いえ、消えたのよ!」


消したも消えたも一緒や!でも、待てよ。『富士山麓にオウム鳴く』はもしかしたら何かのヒントかもしれへん。この二人は当然田代家の殺人事件については何も知らへんやろし、年齢から考えても無関係やろ。


「あの時の、あの時のあたいを見る目と言ったら・・・きゃああああああぁ!」


いちいち思い出して悲鳴上げるなや!こっちまでビックリするわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ