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心がまずはドアの前で見張ってくれるという事で、俺と順で周囲を見回る事にした。
順も格闘技は色々習ったりしてたみたいやけど、心も一年程前からたしかキックボクシングをやってたはずや。まあ、体鍛えるためや言うてたから本格的ではないけど、何もしてへんよりはマシやろ。
問題は俺や・・・。と、流れ的に役立たんと見せかけて極真空手の有段者なんや・・・実は。まあ、麻紀も知らん。心は知ってるんやけど、ここ数ヶ月は稽古にも行ってへん。バイト休みの日は麻紀とおるから、なかなか一人の時間があらへん。
ただ、相手が人ならともかく、今日は人ちゃうのが絡んでるから難儀や。
「太一君は左側頼むわ!それがしは左側見てくる!」
「どっちも左側行ってどないするねん!」
「いや、実は右側は集中して集中して集中トレインしたけど、気配は感じられへんかったんや!」
「集中トレインってなんや・・・。ほんまに大丈夫なんか?」
「ノープログラムや!」
「プロブレムやけどな・・・。まあ、ええわ。とりあえず左側行ってみよか。」
順の頭が痛くなるような返答はさておき、たしかに勘は鋭そうやし、聴覚も優れてるみたいやから、ここは信じとこか。ただ肝心なとこ抜けてるからなぁ・・・。
と、心の中でブツブツと文句を言いながらも二人で注意深く辺りを散策した。気配を感じ取るのはなかなか至難の業や。静かな部屋の中とかなら目を閉じれば意外にわかるもんやけど、外では難しい。木々が揺れる音、風の音、虫の音・・・。
都会の喧騒とは違ったやかましさっちゅうんか、思いの外色んな音が聞こえてくる。
そんな自然が奏でる演奏の中、不自然なノイズを聞き分ける為、耳を研ぎ澄ませた。と、順が人差し指を口に当て、小声で呟いた。
「十二時十四分の方向や!」
実にわかりにくい・・・。普通に前方でええがな!と、思いつつも、思わず普通の声で、
「イエッサー!」
とか言うてもうた。すると、前方で明らかに不自然な木々の音が聞こえた。何がか動いた瞬間木に当たった感じや。その後、枯れ葉を踏んだような音が聞こえた。
「太一君声デカいわ!気づかれたで!」
「す、すまん・・・。」
「この闇やったら追うのは危険や。多分複数の人間やった。不覚にもライトで照らすの遅れてしもた・・・。ただ、相手も逃げたようやし、交戦は避けたいようやな。」
たしかに、こっちはライト照らしてたから、向こうからは完全に見えてたはずやのに、逃げたっちゅうことは、戦いたくはないみたいやな。とは言うても相手が誰かもわからんかった。
ただ、俺にも一人じゃない事はわかった。まあ、順の言うように追うのは止めといた方がええやろ。




