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怖恐 ~ 田代館の恐怖 ~  作者: くきくん
第八章 山小屋
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8-1

「問題は、この非常口を出た真下は一階の非常口や。奴らと出くわす可能性も十分考えられる。いざという時は戦う覚悟も必要や。相手は見た目老人と女二人やけど、油断は出来へん。武器持ってるかもしれへんし・・・」


すると、順が、


「こういう時はそれがしの出番や!それがしが先陣切って進むから、皆、それがしの後に続くんや!」


なんか頼もしいで!順!ここは順の申し出に従うことにして、俺は順の後ろに続いた。その後ろに麻紀、後ろには心が回った。階段は鉄製やから、慎重に下りへんかったら音がなってまう。それやのに、順と来たら・・・


――― カーン!カーン!


「こら!順!音出してどないすんねん!」


出来るだけ声を潜めたつもりやけど、この静まり返った闇夜には十分すぎるほど俺の声も大きかった・・・


「ちょ、太一!あんたの声の方がデカいねん!」


さらに俺を上回る大声で、怒鳴る麻紀・・・あかん・・・俺ら何やってんねん・・・


「心配いらへん!それがしに任せとけば何が来ても大丈夫や!・・・あひっ!ひょおぉぉぉぉぉ!」


「どないしてん!」


突然奇声を発する順・・・まあ、結構奇声は発してるけど・・・


「モウコリ!モウコリが飛んできた!そ、それがし、モウコリだけはあかんのや!」


「コウモリの事言うてんのか?って、何も見えへんけど、どんな目しとんねん!」


どうやら、このメンバーで静かに行動するんは不可能みたいや・・・。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


こ、今度は麻紀か・・・びっくりして危うく階段踏み外しそうになったわ。


「今度はなんや?」


「今日、九時から世にも簿妙な物語あったんや!録画するん忘れた!もう最悪!ありえへん!どないしてくれるん?」


そんな事俺に言われても知らんし・・・あっ、俺録画してるわ。


「大丈夫や!俺が録画した!」


「先言えよ!あほ!」


知るかっ!と、声に出さずに叫んだ。一体、下まで降りるのにどんだけかかっとんねん・・・なんとか、誰も出て来えへんまま一階に下り立つと、急いで細い通路を進み中庭に出た。順は相当目がええみたいや。真っ暗で何も見えへんのにどんどん進みよる。


「なあ、順。おまえ見えてるんか?ライト持ってるんやろ?俺全然見えへんねんけど・・・」


「今は気づかれるかもしれへんからライトはあかん!それがしに掴まって歩くんや!皆、前の人掴むんやで!」


なんや、ちゃんと考えて行動しとるやん。順に言われた通り、前の人を掴んで俺らは歩いた。すると、後ろで心が、


「うわぁぁぁ!は、離せ!離さんかいっ!」


と、叫んでる。


俺らは立ち止ると、振り返った。・・・が、辛うじて麻紀の姿が見えるくらいや。


「どないしてん!心!大丈夫か?」


「誰かに掴まれたんや!」


さすがに、順がライトを点けて心の方を照らす。


「うわっ!」


「いやぁぁぁぁっ!」


一瞬、そこには見た事もない女の姿が映し出された。が、一瞬で見えへんようになった。


「な、なんや・・・今のは・・・メイドの二人とは違ったで・・・」


「い、今のコって写真に写ってたメイドのコちゃうの?」


麻紀が俺の腕に掴まりながら言う。けど、そこまではっきり覚えてへん・・・。心も青ざめた表情で何度も振り返って後ろを確認してたけど、そこにはもう誰の姿もなかった。


「き、気のせいかもしれへんな・・・」


心は自分に言い聞かせてるようやった。


「それがしには何も見えへんかったけどな。気のせいちゃうか?」


いや、麻紀にも見えたみたいやし、俺も一瞬ではあるけど女の姿がたしかに見えた。


「とにかく、行くで!」


順は再びライトを消して歩き出した。窃盗団の恐怖と、幽霊的な恐怖が同時襲いかかってくるから、パニックになりそうや・・・。もし、これ一人やったら、耐えられへんで・・・。と、なんとか中庭に出ると、屋敷内からは明かりが漏れていた。そもそも、誰がここの電気代払ってりんやろ・・・そんなどうでもええ事を考えて気を紛らわした。


順はほんまに周囲が見えてるようで、どんどん進んで行く。やがて、門まで来た。問題はここからや。来たときにはあったはずの道が無いんやから困ったもんや・・・。せめて、あの山小屋くらいまで引き返せたら、なんとか夜明けまで過ごせそうなんやけど・・・。


門を抜けてしばらく進むと、順が足を止めた。


「それがしの考えでは、途中にあった山小屋までなんとか辿り着きたいねん。」


俺と同じ考えや。問題はどうやってそこに向かうかや。


「幸いにも電子コンパスが動作してるし、それがししっかりと歩いてくる時に方角を頭に刻み込んでたから、大体の場所はわかるんや。」


それがほんまやったら相当有難いで!


「どうやら窃盗団は通報を恐れて、電話線を抜いた後逃げ出したと思われる。」


心が突然呟いた。


「なんでわかるんや?」


「あれだけ大声で叫んでも、誰も襲ってこんかったのもあるけど、太一と俺は屋敷戻るときにこの門閉めずに開けたまま中に入ったはずや。」


そう言われてみたら、そうやった気がする・・・。


「そやけど、今門は閉まってた。っちゅうことはあの後に誰かが出入りした事になる。まあ、単に閉めただけっちゅうこともあり得るけど、普通に考えて、ほんまのメイドや執事でもない人間がわざわざ門を閉めたとは考えにくい。それに、屋敷内から人の気配も感じられへんかったしな。」


まあ、たしかに俺らをどうこうするより、ブロマイドも手に入れたんやったら逃げるんが無難やしな・・・。


「それやったら、屋敷に戻って一夜過ごす方がええんちゃうの?」


麻紀が鋭いツッコミを入れる。


「いや、この屋敷はやっぱり危険や・・・。偶然とは言え、何らかの形で俺らのじいちゃんばあちゃんがかかわったようやし、窃盗団とは別の何かが同時に起こってしもたんや。だから辻褄の合わん事が多いねん。」


それでも無理はあるものの事実、奇妙な出来事は起こってるんやし、この屋敷が危険というか奇妙なんはたしかや・・・。俺もここで一夜は勘弁してほしい。


「そうと決まれば山小屋目指してメッツボーや!」


滅亡してどないするねん・・・って、わざとか?普通レッツゴーは間違えへんし、噛まへんやろ・・・。それはさておき、さっさと歩き始めた順に俺らは急いで続いた。

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