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「大丈夫ですか?」
奥田が慌てて布巾でテーブルを拭くと同時にエプロンのポケットからハンカチを取り出して順に渡しよった・・・あ、あかん・・・この展開は、ますます順が・・・順が・・・
「なんとやさしいお方や!ミ、ミーは・・・感動して、か、か、感動して、ハグッ!?・・・むちゃちょちゅ・・・・・・し、舌噛んだ・・・」
あ、あほや・・・この男、あほ過ぎる・・・けど面白い過ぎる・・・麻紀は横で爆笑しとる。
「ちょ、順ちゃん・・・あんた、頭大丈夫か?って、笑い過ぎて腹筋割れるやろ!?」
「本当に大丈夫ですか?」
「ま、麻呂は大丈夫!そ、それより奥田ちゃんこそ大丈夫?熱くなかった?」
麻呂?誰が麻呂や!それに、おまえがこぼしといて何を言うとんねん!むしろ、心にかかっとるがな・・・
「すぐに入れなおしてきますね!」
奥田はその場を離れたかったんもあるんか、そそくさ部屋を出て行った。そら、あんな絡まれ方したら、普通対応出来へんよな・・・その点は同情するわ。
「おいおい、俺にも詫びろよ・・・順・・・」
「す、すまぬ。それがし、ついつい奥田ちゃんのやさしさに触れて、感極まったでござった。」
「いやいや、だから普通の事しただけやろ・・・相変わらず思い込みの激しいやっちゃなぁ・・・」
と、そんな事もありながら、結局順のブロマイド盗難事件はここでは解決しそうもない事と、奥田のお蔭で順も上機嫌になったこともあって、俺らは二階に戻ることにした。着替えの件は、明日の朝六時くらいには仕上がってるそうやから、それ以降に応接室に取りに来てもらえるとありがたいそうや。
「まあ、今のやりとりで若干、あのじいちゃんやメイドに怪しい点はあったものの、立証出来へんやろし、大人しく部屋で休もか?ただ、これまで通り、一つの部屋で交代で休むっちゅう点はそのままや!」
階段を上がりながら、小さめの声で俺が提案すると、三人とも黙って頷いた。途中、麻紀がトイレに行きたい言い出したので、俺ら三人はトイレの前で、麻紀を待つことにした。
「きゃああああああああああああああ!!」
「どないしてん!?」
突然、麻紀がトイレから悲鳴を上げながら飛び出してきた。多分、手を洗ってる最中やったんか、手が濡れたままや・・・
「か、鏡に・・・鏡に知らん顔のおっさんが・・・ち、血だらけやってん!」
「心配ない。頭は血が出やすいねん。ボクシングの試合でもバッティングでよう流血してるやろ?」
また順が訳の分からん事を言い出す。それとこれとは別次元の話やろ・・・。
「そんなん言うんやったら順ちゃん見てきてや!」
「オーケーオーケー!それがしに任せるでやんす!」
そう言うと、トイレの中に入って行った。大丈夫なんか順・・・普通は入っていかへんで・・・ん?なんか中で会話が聞こえる・・・順・・・一体誰と話してるんや・・・
一瞬、俺も入ろうかと思ったけど、心が首を横に振りながら、制止する。
「こういうのはあいつに任せとけ!あいつは幽霊とか全然怖くない・・・っていうより、そもそも幽霊と思ってへんねん。」
わかる気がする。で、数分後、順がトイレから出てきた。
「だ、誰と話してたんや?」
「おう!たしかに麻紀ちゃんの言うように血だらけのおっちゃんおったけど、なんでか鏡にしか映らへんねん。多分恥ずかしがり屋なんやろ。せやから、照れずに出てきたらええっちゅうてんやけど、全然無視されてもうた。救急車呼ぼか?って言うてんやけど、しばらくしたらおらへんようになってもうたわ。」
さ、さすがの幽霊も順には敵わんと諦めたんやろか・・・。




