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怖恐 ~ 田代館の恐怖 ~  作者: くきくん
第七章 ブロマ
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7-5

「多分繋がらへんで。」


小声で心が囁く。たしかにこの展開はドラマなんかやと確実に繋がらへん・・・。俺は受話器を取ると慣れない手付きでジーコジーコと、ダイヤルを回した。


ダイヤルの戻りが遅いのでイライラする。って言うか、これで電話が出来る事が信じられへん。コンセントさえないこの電話が・・・。しかし受話器の向こう側では、ツツツっと間があって呼びまし音が聞こえた。


「事故ですか?事件ですか?」


繋がった事に驚いて、一瞬何から話せばいいのかわからんようになってしもた。


「もしもし・・・」


俺は盗難に遭った事を伝えた。ところが、


「デジタルデータの盗難ですか・・・。ちょっとそれだけでは捜査出来ませんね。とりあえず、最寄りの警察署まで、被害に遭われたご本人と、データ盗難に遭ったパソコンをお持ち頂ければ、詳しい担当の者がお話を伺い、判断致しますので・・・その方向でお願いします。」


と、一方的に電話を切られてしもた。よう考えたら、たしかにデジタルブロマイドが盗まれた言うても、間違って本人がデータを消去してもうたり、データが破損しただけかもしれへん。そんな事で警察がいちいち捜査に乗り出してたら、税金払ってる国民からクレームの嵐や!


「データ盗難ちゅうケースは、それだけでは捜査の対象外らしいわ。ただ、被害に遭ったパソコンを警察署に持ち込めば、担当の人が話は聞いてくれるみたいやわ。そやから、こっちに出動してもらうんは無理みたいや・・・。」


順は落胆した様子で、パソコンをぼーっと見つめとる・・・。本人には大切なもんみたいやからショックは大きいみたいやけど、今は、どうする事も出来へん。


それでも心は、順に、


「まあ、警察が簡単には動かへんのも、その窃盗団は計算済みなんかもしれへんなぁ。それを見越しての犯行となると一筋縄ではいかへんで・・・。ほんまは販売元に問い合わせるんが一番なんやけどな。もしかしたら、同様の被害報告が上がってるかもしれへんし・・・。そやけど時間が時間やし営業終わってるやろ。」


すると順は、


「メールで問い合わせしよう思ったけど圏外でメールも送信出来へんねん。まあ、警察には親父経由で伝えるわ。」


そう言い終えた所で執事のじいちゃんが順に尋ねた。


「お父様は警察官なんですか?」


「そや。叔父は自衛隊の偉いさんで、親父もそれなりの地位や。」


「そ、そうでございましたか。ご立派なお父様をお持ちで・・・。」


あれ?なんかじいちゃんの様子が変や。明らかに狼狽しとる。それに、メイドの二人も顔を見合わせて挙動不審な感じや・・・。しばらく間があって、沼井が立ち上がると、


「喉が渇きましたね。お茶を煎れてまいります。」


それだけ言うと返事も待たずに出て行った。奥田と執事は座ったまま、特に動く気配はない。


「今夜はもう良い時間でございます。明日明るくなりましたら下山して警察に行かれると良いでしょう。残念ながら私共、車がありませんので、お送りする事が出来ません。申し訳ありません。」


執事は申し訳無さそうに頭を下げた。心はそれに対して、


「とんでもない。こちらこそ、突然押し掛けて食事まで頂いて有難う御座います。」


俺も、慌てて頭を下げた。それはそうと、車が無いっちゅうのも、わざわざ言う必要は無いと思うんやけどな。こんな山の中にどう考えても車が入ってくるんは不可能や・・・。まあ、敢えて突っ込まへんけど。


順はまだ諦めきれへんようで、パソコンと格闘中やし、麻紀は多分意識が半分無い・・・。


「お待たせしました。私共の主人がお茶に凝っておりまして、こちらアールグレイという紅茶でございます。是非香りも一緒にご堪能下さい。」


奥井も立ち上がると、ソーサーとカップを俺たちの前に並べ始めた。それにクッキーやチョコレートなど、色々とお菓子が楕円形の大きな皿に並べられ中央に置かれた。


「私共もご一緒させて頂きます。」


執事やメイド達も飲むみたいや。全て並べ終える奥田と沼井も席に座り、


「どうぞ、お召し上がり下さい。」


と、勧められた。あまり紅茶には詳しくないけど、たしかにええ香りや。いつの間にか麻紀は、お菓子に手を伸ばしバクバク食べ始めた。


「寝てたんちゃうんか!」


「別腹や!」


使い方おかしいで・・・。順はお菓子には目もくれずパソコンと睨み合いながらカップに手を伸ばし、口へと運ぶ・・・。おい、まだ熱いと思うで・・・。


「アッチうえっちゃ!!」


こいつアホや・・・。そら熱いに決まっとるやろ!

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