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しばらくすると、少しだけ周囲が見えてきた。やはり、心の言う通りそこは木々に囲まれた森のようやった。しかも山の中やから、斜面になっとる・・・。
暗い上に歩きにくそうや。進む方角間違えたらエライことなってまう。ここは慎重に屋敷に向かわんとあかんで・・・。
「太一、今出てきたとこと反対側に進めば間違いなく屋敷に戻れるはずや!ええか!慎重に進むんやで!」
「そやな。廊下としては長かったけど、実際には100メートルも進んでへんし、屋敷の外壁まではすぐやろ。」
とは言え、反対側に向かって傾斜のキツい上り坂になっとる。油断してると転げ落ちてまうかもしれへん。屋敷に来た時の道に出れたらええんやけど、暗くて見えへん。
目印になるんが、今出てきた出入口だけやし、仕方ないからそのまま反対側に真っ直ぐ進む事にした。もしかしたら、何かあるんちゃうかと思ってたけど、意外にもすんなりと、壁にぶち当たった。
「この壁沿いに右に進めば、来た時の道に出るはずや。傾斜キツいから足元には注意して進まなあかんで!」
心がそう言い、先に進み始めた。屋敷からの微かな明かりが不気味に森の木々をぼんやりと浮き上がらせた。それが時々人の姿に見えて驚いた。危なく滑り落ちそうになるんを必死で堪え、なんとか道へと抜け出す事が出来た。
「なんかトラップあるかと思ったけど、拍子抜けするくらいすんなり戻れたな。とにかく急ぐで!」
俺と心は走って門の前まで行くと、門は閉ざされてたので、飛び越えて中に入った。
「なんか、最初見た時は雑草だらけで廃虚に見えたのに、今はエラい綺麗やな。あの短時間で手入れ出来るとは思われへんけど、もう何でもありな状況やし、気にせんと先を急ごか!」
心の言う通り、敷地内は驚く程綺麗や。左側にあった噴水も来た時は噴き出し口の石が崩れたりして、無惨な姿やったのに、今は綺麗に水が張られ、屋敷からの光で水面がキラキラ光ってた・・・。
やがて俺と心は玄関前まで来た。すでに心が扉をガチャガチャやってるけど、開く気配は無い。
「よし、登るで!ちょうどこの雨樋が使えそうや。」
心は俺の返事も聞かず器用に雨樋を登り始めた。俺は高所恐怖症や・・・。ほんまは勘弁してほしいとこやけど、今はそんなこと言うてられへん。意を決して、金具部分に指を引っかけた。下は見たらあかん・・・っていうかすでに足がガクガク震えとる・・・。それでも必死で足のかかりを探りながら慎重に登り続けた。まあ、高さは3メートルちょっとやろか。それほど高いわけではない。
先に登り終えた心が手を貸してくれて、なんとかバルコニーに辿り着いた。
「一番右は社長さんの部屋、左が麻紀ちゃんの部屋で、その横が俺の部屋か。小さい窓はトイレやな。さて、どこから侵入するんや?」
俺は心を見た。心は少し考えて、
「今、社長の部屋に人影が見えた気がする。しかも、あそこだけちょっと窓が開いてるように見える。」
そう言って心は社長の部屋の窓の方へ歩き出した。ちょっと警戒心無さ過ぎちゃうか?それこそトラップ・・・
「やっぱり開いてるで!罠かもしれへんけど、二人が心配や!ここから入るで!」
一応、罠っちゅうことは承知の上のようや。それやったらかまへん。心の後に続いて部屋の中に入った。部屋は電気が点いてて明るい。と、廊下で大きな音が聞こえた・・・
「急ぐで!太一!」
俺と心は部屋には目もくれず、廊下に飛び出した・・・。




