1-4
「メール?まさか、バイト誰か休んでもうて代わりに入ってくれとかちゃうやろな?」
最近の若い者はすぐ当日欠勤しよる!お蔭でシフト出してもシフト通りに勤務出来る事はほとんどあらへん。きっと、山田か川端辺りがサボりよったな・・・。
「ちゃうちゃう!また迷惑メールや!なんか住所と日付が書いてあるわ。」
日付?記憶では昨日のメールには日付なんか無かったで・・・たしか・・・
「ちょっと貸して!」
麻紀の手からスマホを奪い取ると俺はメールを確認した。はっきり記憶している訳ではなかったけど、多分、番地まで同じようや。それに麻紀の言う通り、住所の下に日付が入ってる。
「2013年4月19日午後1時・・・・・・って、今日やん!?」
「ただの迷惑メールやろ!あほちゃうか!」
「せやけど、墓の住所しか載ってへんし、怪しいリンク先もあらへんで?こういうのって普通どっかに誘導するリンクとかあるはずやろ。きっと大事な法事とかの待ち合わせ場所やって!やっぱりここは人として送信者に教えたるべきやろ?どうせメールなんて無料やしな。」
「物好きやなぁ・・・まぁ、それで気が済むんやったら送ったたら?さっさと送ってランチ行くでぇ!もうお腹ペコペコやし・・・」
俺は、とりあえず、『誰かと間違って送信してませんか?』とだけ文章を添えて返信をタップした。ところが送信してすぐに、またスマホがブルっときた。
「ん?おかしいなぁ・・・送信できませんでしたって戻ってきてんけど・・・」
同じように何度か返信を試みるが、悉くメールは送信できずに返ってきた。
「なんか操作間違ってへん?」
俺もそう思って確認しながらやってみたけど、あかんかった。メアドは返信やから入力ミスって事もありえへんし、困ったもんや。そやけど麻紀にイライラも限界に近そうやし、ひとまずファミレスに移動することにした。
俺の愛車、ママチャリン3号で出動や!駅前で二回も盗まれてもうて、すでにこいつで三代目や。ディスカウントで買うた8980円の安物やけど、バイト先と行き来するには十分や。麻紀も普段は自転車で行動してるし、車はおとんの時々借りるくらいで自分の足は自転車だけや。
ファミレスまでは自転車で10分ほどの距離で、何事もなく到着して店の中覗き込んでみたけど、すでに12時45分、客の姿もほとんどあらへん。やっぱりこのくらいの時間がベストやな。そう思いながら店内へ・・・
「いらっしゃいませ。三名様ですね?店内は全席禁煙と・・・」
え?三名?思わず振り返って周囲を確認する。俺と麻紀以外見当たらへん。たしかに歩道にはおっさんが歩いてるけど、どう考えてもただの通行人や。俺らと結びつけるもんなんかなんもあらへん。この店員・・・さてはボケてんな?
「そうそう、三人三人!って、なんでやねん!どうみても二人やん!」
ボケにはツッコミを入れんと失礼。それが関西の礼儀、流儀や!しかし、店員のお姉ちゃんの顔は真顔・・・しかもドン引き・・・
「ちょっと、太一!言い間違えただけやのにツッコミ入れてどないすんねん!店員さんに恥かかす気かっ!あほ!」
そう、ツッコミは時と場合によっては単なる揚げ足取りになりかねない・・・なんでもかんでもツッコミ入れたらええってもんちゃう。それはわかってるんやけど、あまりにも堂々と三名様とか言うから思わず・・・
気を取り直して俺らは窓際の席についた。窓の向こうの大通りにはビジネスマンが昼食を終えて、また仕事に戻らなあかんって悲壮感漂わせながら歩いとる。交通量の多い目の前の国道も相変わらずの大渋滞や。確実に自転車の方が速いで・・・
「あんた、ボーっと外なんか見てんと、さっさと食べるもん決めや!もう押すで!」
「待て待て待て待て!待たんかいっ!」
俺は慌ててメニューを取った。それやのに・・・
『ピンポ―――ン』
押しよった・・・
「少々お待ちください。すぐに係りの者が伺います。」
まだ伺わんでええわ!と、心のツイッターで呟きつつも、大急ぎでメニューに目を通す。
「お待たせしました。ご注文でしょうか?」
おしぼりと水をおぼんに載せた案内の時とは違う、ちょっと年配・・・多分30代後半?の女性が注文を取りに来た。まずは俺の前におしぼりと水を・・・わかってるな!このお姉さん!ちゃんと男を立ててくれとる!で、麻紀の所へ・・・え?
なんでか俺の隣の席にもおしぼりとお水を置いた。しかし、麻紀は注文に夢中で気づいていないのか、それには触れず、デザートまでしっかり注文している。
「あんた、決まってないとか言わせへんで?」
一瞬真っ白になって、思わず、
「あっ、これで・・・」
「飛騨牛の特選牛丼ミニうどんセットですね?かしこまりました。お連れさんは戻られましたら伺った方がよろしいですか?」
「え?お連れさん?二人やけど、ウチら。」
「さようでございますか。大変失礼しました。では、少々お待ちください。」
そう言うと、首をかしげながら俺の隣に置いたおしぼりとお水を下げて、カウンターへ消えていった・・・