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少し進むと、噴水があった。それほど大きくないけど、水も綺麗に張られてた。この時間は電源を切ってるのか、噴水の機能は停止してるようやった。それにしても奥田ちゃんはどこに行ったんや・・・。
ふいに、背後に気配を感じたそれがしは、喜びに打ち震えながら振り返る。
「奥田ちゃ~ん!」
と、そこには羊のおっちゃんが棒のような長いものを振り上げて、それがしめがけ振り下ろすとこやった。
普通なら左右にかわすとこやろうけど、それがしは違う。そのままおっちゃん目がけて突進や!誰にも話してへんけど、実はカポエラ、サンボ、ムエタイ、テコンドーに少林寺・・・どれも一週間くらいは習ってたんや。この程度の不意打ちにやられるそれがしちゃうで!
「ごばぁぁぁっぁ!ちぇちぇちぇほんがぁ!」
それがしのタックルが見事に決まって、おっちゃんとそれがしは地面に倒れ込んだ。
「大丈夫か!羊のおっちゃん!」
それがしはおっちゃんに手を差し伸べた。多分、おっちゃんは剣道の練習中やったんや。そこへ、たまたまそれがしがおったもんやから、泥棒と勘違いでもしたんやろ。申し訳ない・・・。
あれ?・・・おっちゃんは、それがしの手を借りることなく静かに立ち上がると、すーっとどこかへ消えてもうた。
おっちゃん・・・剣道の練習はええけど、ちゃんと屋敷のドアは閉めて出ようや!と、伝えたかったんやけど、もうおらへん・・・。つまり、外に出たのは奥田ちゃんやないことがわかった。残念やけど戻るしかあらへん。今頃、皆でトランプでもやってるかもしれへん・・・。それがしを放置して・・・許せん!
それがしはダッシュで玄関の前まで戻ると、力いっぱいドアを開けようと試みた。が、開かへん・・・。
「おっちゃん・・・それがしの存在忘れたんか?開けてくれ!お~い!」
二分ほど待ってみたが、開く気配は無い・・・。普通ならここでパニックになる所やろけど、それがしは違う。たしか、裏手に勝手口があったはずや。あそこは非常口も兼ね備えてる。ここは人里離れてるし、泥棒も来んやろから、開けっ放しのはずや。そっちに回ろ!
たしか、位置関係から考えると向かって右奥や。それがしは、再びペンライトで周囲を照らしながら、慎重かつ素早く移動した。それにしてもこの屋敷、二階には窓があるけど、一階には窓が見当たらへん・・・変わった造りしてるな。
やがて、屋敷を囲う壁にぶち当たった。ちょうど建物と壁の隙間に人が一人、いや、無理すれば二人通れるくらいの通路が奥へと続いてた。そこを奥へと進む。すると、左側に二階へ続く階段があり、階段の手前にも扉が見えた。どうやら一階と二階の勝手口は同じ位置にあるようや。
まあ、応接室に行くんやから一階の勝手口から入るんが妥当やろ。扉に近づいてノブを捻る・・・。




