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順の視点で進みます。
それがしの荷物は手放したくない。そやから今日はほんまは風呂は止めときたいんやけど、むふふ・・・。下の名前聞いてへんけど、あのメイドさん。たしか奥田さん・・・。せやから、この先何があるかわからへんし、風呂は入っとかなあかんと思う。
さすがにノートPCとか防水ちゃうから、防水のスマホとガラケーは持っていくか・・・。
そういう訳で、それがしはスマホとガラケーだけを持って部屋を出た。そのまま一階に下りると、さっきと反対側の通路を歩いて突き当りを右に曲がった。残念ながら奥田ちゃんとは会えんかった・・・。
ちょうど、奥の方で太一君が浴場に入って行く所やった。心はもう入ってんのやろか?そんな事考えながら、それがしは自分でもわからへんけどスキップで進んでた。これが噂の呪い?
「なんでスキップやねん!」
「ぬほぉぉぉぉぉぉぉ!!」
突然、背後から聞き覚えのある声・・・油断していたそれがしは、スキップからのサイドステップで壁に激突・・・。しかし、日頃から鍛え上げてるそれがしの足腰を舐めてもらっては困る。激突の衝撃で反対側に飛ばされたそれがしは、素早く、反対の壁をキックして、倒れないように横に飛んだ・・・。
「お、おいっ!大丈夫か?っていうか何してんねん・・・。」
「心・・・いきなりの不意打ちは卑怯でござる。」
「いきなりやから不意打ちって言うんちゃうんか?って、別に不意打ちしてへんし・・・って、おまえ、風呂の用意は?」
し、しまった。それがしとしたことが不覚。スマホとガラケーだけ持って来てもうた・・・
「別に風呂入るのに、用意も何もあらへん。それがっしーはこれで十分でござる。」
「いや、おまえがええんやったらそれでかまへんけど・・・。太一はもう入ってんの?」
「うむ。ちょうど今し方入室するのを確認したで候。」
「その語尾、変やし、使い方多分無茶苦茶やで。治らんか?」
「至って普通に相成りまする。」
「もうええわ。昔からやし、治るはずがないわな・・・ほな、行くで!」
それがしと心は、浴場の扉を開いた。横開きやった。ガラガラっと独特の音を立てて扉が開くと、
「いやん!エッチ!」
と、くだらないボケをかます太一君がおった。それがしは湯船が苦手や。それに荷物も心配や。さっさと服を脱ぐと洗い場へ直行。
「お先!」
「おい!順。浸からへんの?」
「それがしは風呂に浸かるという習慣を持ち合わせておりませぬ。御免!」
それだけ言うとダッシュで体と頭を洗った。
「おい、あいつ、石鹸で全部洗ってるがな・・・」
「二回くらい一緒に旅行に行ったことあるねんけど、その時もそうやったわ。まあ、普段からあんな感じやから気にせんでかまへん。」
太一君と心がなんか喋ってたけど、それがしは気にせず浴場を後にした。浴場を出て、廊下を歩いてると、なんか女の子の叫び声のようなものが微かに聞こえた気がした。
しかし、今はそれどころではないんや。荷物や。マイ荷物が心配や!聞かなかったことにして、それがしは階段を駆け上がった。そして、すばやく自分の部屋の前に立つと鍵を開ける。
念のため、注意深くゆっくりと扉を開ける・・・。常に警戒心は必要や・・・。部屋の電気は引っ張るタイプや。えいっ!と、手を伸ばして天井に据え付けられた電気から伸びる紐を引っ張る・・・。
―――ブチッ!
「オーマイガッ!」
切れた・・・こんなに脆いんか・・・。これはマズいぞ。まだ目が暗さに慣れてへんから、真っ暗や。どうする、それがし・・・考えろ・・・それがし。
そやっ!羊のおっちゃんに謝ってつけてもらおう。ここは他力本願上等や。おっちゃんどこや?たしか一階におるはずや・・・。




