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ここからは別の人物視点でお届けいたします。
男子は一階の聞く所によると、そないに広くない浴場で三人一緒らしいわ。それに引きかえウチは露天風呂や。男子は準備なんかあらへんから、さっさと一階に下りたみたいや。
まあ、ウチも残念ながら旅行に来た訳やないから、メイドさんが用意してくれた着替えとお風呂セット持って行くだけやねんけどな・・・。
と、言う訳でウチは部屋を出た。ちょうど対角線上の反対側が露天風呂や言うてたなぁ・・・。いや、その前に控え室に行かなあかんねん。
距離的には右からでも左からでも一緒くらいやろ。ウチは階段側から向かう事にした。まあ、すぐ控え室の前についたけどな。
「あのぅ・・・。風呂入りに来ました。」
ウチはノックと同時に声をかけた。
「はい、どうぞ。」
鍵は開いてるみたいやから、ドアを開けた。
「きゃあぁぁぁ!!」
一瞬や・・・一瞬だけ、メイド二人の顔が紫色に見えて、腰抜かしそうになった。それも、凄い形相で睨んでた・・・。息するのも忘れて多分数秒なんやろけど、身動きもとれず、怖くて目を閉じた。
「あ、あの、どうされました?だ、大丈夫ですか?」
へ?なんやったん、今のは?そこには、手にお風呂セット持った二人が、逆に驚いた顔でウチを心配そうに見つめてる・・・。
たしかに、さっき一瞬二人の顔が、生きてる人間の顔とはちゃうかったで・・・。まだ、心臓がバクバク言うてるわ。
「ごめん。疲れてるみたいや。気にせんと行こ!」
まだ声が震えてるんを誤魔化すんに必死や。なんとか気持ち切り換えて、すぐ向かいの扉を開けた。さすがに夜になると外は少し冷える。それがまたええねん。ウチは、急いで掛け湯して、露天風呂に向かった。
さすがに別荘やから、広い訳ではないけど、洗い場も六人分あるし、湯舟には三人やと広々や。まあ、山の中やし周りは真っ暗やから景色は楽しめへんけど、木々の音とか、虫の鳴き声なんかが、ええ雰囲気を醸し出してるわ。
「最高や!男子には悪いけど、やっぱ露天風呂最高!」
「満足頂けましたか?」
メイドの一人が尋ねてきた。あれ?このコ名前忘れた。どっちやったやろ・・・。まあええわ。
「うん!ほんま満足やわ。二人とも毎日入れるんやろ?羨ましい限りやわ。」
心からそう思た。自分ちがこんな風呂やったら毎日何回も入ってまうで・・・。
「私たちも普段は1階の浴場を利用しております。お客様で女性おひとりの時などはご一緒させて頂いておりますが。」
ウチやったらわがまま言うてでも、こっちに入らせてもらうけどな。まあ、でも一人は怖いかもしれへん。それにしても周りになんもあらへんで。昼間やったらもうちょっとなんか見えるんかもしれへんけどな。
「ええ気持ちや。残念なんは、夜景とか見えたら最高やってんけどな。」
思わず本音を言うてもうた。
「この辺りは全て木々で囲われておりますので、残念ながら夜は何も見えません。ただ、6月くらいには蛍が綺麗なんですよ。その時期には主人のお友達などがお泊りに見えられます。」
「うわぁ。その季節に来たかったわ。所で社長さんはどこに旅行行ってるん?」
「たしか、今回のご旅行は仕事も兼ねているとの事で兵庫県の淡路島へ向かわれたと思います。執事の竹川ならご存知かと・・・。私どもはこの館の事だけに専念しております故に、主人の仕事やプライベートは詳しく存じておりません。」
「そうなんか・・・。まあええか。そんなことは。そろそろのぼせてきたわ。体洗ってくるわ。」
ウチは二人を湯船に残して、先に洗い場の方へ移動した。蛍・・・見たかったなぁ。って、大阪に今時、蛍が見れる場所ってあるんやろか・・・。まあ、山やったらおるんかもしれへんな。




