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怖恐 ~ 田代館の恐怖 ~  作者: くきくん
第三章 田代館
20/90

3-1

すでに建物内で一夜を明かすことは決心したんやし、俺らは真っ直ぐに建物の入り口へと向かった。さて、普通に考えれば鍵がかかってるはずやけど、こういう状況や。開いてる可能性も高い。


扉は一枚板で出来た、多分、この扉だけでもかなりの値段がしそうな代物や。なんやようわからん紋章みたいなんが彫刻されとる。ライオンに剣?いや、はっきりとはわからん・・・とりあえずノブに手をかけた。ひんやりと冷たいそのノブは回すタイプやなくて、下に下げるタイプや。


最初、鍵がかかってて動かへんのかと思ったけど、ちょっと力を込めてみたら、バリバリ言いながらノブは下に下がった。そのまま手前に引くと扉は開いた。


「鍵はかかってへんかったな。まあ、どう考えても長い間放置されてたんやし、場所的にも普通は立ち入る人もおらへんやろ。」


扉の奥へと進んだ俺は、思わず目を疑った。


「おい!なんでや!どういうこっちゃ・・・」


外は荒れ放題で雑草が生い茂ってたし、門なんかも錆びまくってた。それやのに、中は言うたら、不思議なことに、まず電気が点いとる。広い玄関ホールがあって、段差を上がると左右に通路が伸びてて、正面には大きなショーケースがあり、高価そうな壺やら、何のトロフィーかわからんけどかなり立派なもんがいくつも並んでたり、壁には鹿の頭だけのはく製も飾られてた。


それに、埃ひとつないんちゃうか?言うくらい床も綺麗に清掃されてた。


「すごい!めっちゃ綺麗~」


麻紀はその光景に一気にテンションが上がったようや。


「なんかようわからんけど、ますます怪しい雰囲気全開やな。まず電気が通ってる意味がわからん。今にもメイドさんが『お待ちしておりました』ゆうて出てきそうや。まさか、ホラーチックな新手のメイドカフェとかちゃうやろな。」


心が訳のわからんこと言うてる。なんや、ホラーチックなメイドカフェって。メイドと冥土をかけてるつもりか?とは言え、たしかに人が住んでても何もおかしあらへんで。今にも誰かが迎えてくれそうっちゅうのはたしかや・・・。


「けど、油断は禁物や!俺的にはこの玄関ホールで一夜を過ごすんがベストや思うねんけどな。奥へ行きたい気持ちはわかるけど、ここならすぐに逃げ出せる。」


「ちょっと心ちゃん。せっかく中は綺麗やねんから、ちょっとお邪魔してもええんちゃうの?」


麻紀はすでに観光気分になっとる。よくよく考えたら不法侵入や・・・そこで、俺はとりあえず声をかけてみた。


「ごめん下さい!ごめん下さ~い!誰かいませんか?道に迷ってもうて、どないもなりませんねん!助けてもらえませんか?もしも~し!」


誰もおらへんのはわかってたけど、やっぱり無断で入るんはあかんやろ。そやからとりあえず大声で叫んでみた。


「太一。気持ちはわかるけど、無意味や。すでにここは実世界ちゃう可能性も高い。生きた人間はまずおらへん。」


そんなことはわかってるけど、やっぱり無断で入るんはやらしいやろ。声くらいは・・・


「少々お待ちを!どちら様でしょうか?」


「え?」


四人同時に声をあげた。全員がはっきりと聞こえたようや。そして声の方から足音が聞こえた。俺たちは、金縛りのように身動きが取れないままその場に立ち尽くすしかなかった。足音はどんどん近づいてくる。そして・・・


「これはこれは、どうされましたか?こんな山奥にお客様とは珍しい。」


初老の老人が姿を現した。その老人はにこやかに微笑んでいる。背筋はピンと伸び、白髪の髪は綺麗に整えられ、グレーのベストに蝶ネクタイといういでたちだった。


「い、いや、あの・・・道に迷ってしまって、ウロウロしているうちにこの建物を見つけたんで・・・あの、その・・・」


まさか、人が住んでるなんて思ってへんかった俺は、自分でも何を言っているかわからんかった。しかし、そんな俺の受け答えを理解してくれたのか、


「そうですか。もう外も暗い。これから下山するのは大変でしょう。よろしければ、ここで一夜を過ごしていかれてはいかがですか?私は執事の竹川と申します。本日は主の田代ご夫妻は旅行中でして、私と召使の沼井、奥田の三人しかおりません。大したおもてなしは出来ませんが、外で過ごされるよりは快適ですよ。」


すると、心が耳元で、


「ひつじってあのじいちゃん、羊なんか?」


あほか、こいつは・・・執事や!し・つ・じ!


「そんなことより、どうするんや?お言葉に甘えさせてもらうか?」


「出来過ぎや。きっとあのじいちゃんもすでにこの世にはおらへんで。外はあんな雑草もボーボーで人が住んでる気配なんか微塵も感じられへんのに、おかしいやろ?」


「それはそうやけど、今さら下山っちゅうの・・・」


そんなやりとりをしていると、横から麻紀が、


「是非、お世話になります!助かります!よろしくお願いします!」


勝手に申し出を受けてもうた・・・もう知らん。どうにでもなれ!俺はそう思うしかなかった。ちゃんと足もあるし、幽霊ちゃうやろ!そう言い聞かせた。


「あと少しで私たちは夕飯でした。主人もおりませんゆえ、簡単な賄い料理ですがご一緒にどうぞ。ささ、お上がり下さい。沼井!奥田!お客様だ。応接室へご案内して差し上げて。」


「かしこまりました。」


竹川言うじいちゃんが奥の方にいる二人を呼んだ。しばらくすると、奥の方からエプロン姿の俺たちと同世代と思われる女の子が現れた。順のリュックを見て、


「お持ちしましょうか?」


と、声をかけられていたが、順は、


「け、け、結構です、自分でお持ちできるます。」


言葉になってへん。まあ、順が狼狽うろたえるのも無理はない。沼井と奥田と呼ばれる二人はどちらもかなりのべっぴんさんや。どちらも長い黒髪にエプロン姿。さっき心が言うてたメイドカフェっちゅうのも事実なんちゃうか?と思えてきた。そうなると、きっと料金が発生するかもしれん。


それにお泊りとなれば、結構な額いかれるかもしれへん。まあ、もう後戻りは出来んやろし、後でこっそり料金表がないか探してみる事するとして、とりあえず俺らは導かれるままに、応接室についた。


「山奥なので、受信感度が悪いですがテレビをつけておきますので、ご自由にチャンネルは切り替えてください。食事の準備が出来ましたら、お呼びいたします。何かありましたら、私か、沼井、奥田に声をおかけください。」


それだけ言うと、三人は応接室から姿を消した。


応接室には中央にこれまた高そうな木彫りのテーブルとそれをコの字型に囲うようにソファーがあり、俺たちはひとまずソファーに腰を下ろした。


レトロな趣味があるんか、テレビのチャンネルは回すタイプでリモコンすらあらへん。しかも、どうみてもアナログや・・・なんで映ってるんか疑問やけど、それ以外にも整理せなあかんことが多すぎて後回しや。順はテーブルの上に置いてあった新聞を手繰り寄せて読み始めた。

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