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しばらく歩くと、登り坂から平地になって、開けた場所に出た。とは言うても、運動場くらいの広さやろか。周囲は木々に囲まれとる。目に飛び込んできたんは、山小屋や。ここで、心のお決まりの言葉が飛び出した。
「出た!定番の山小屋!そもそも、なんでこんなとこに山小屋があるねん!」
いや、山やからやろ・・・。
「ここで休んでるうちに、眠り込んで・・・」
もう、聞き飽きたので、適当に聞き流して俺は他に道が無いか探すことにした。順と麻紀もその辺をウロウロ捜索し始めた。心は自分の推理に酔いしれた後、山小屋の周囲を見回り出した。
山小屋には定番の薪が壁際に束で置かれてた。扉の横には『田代霊園管理』と書かれてあった。田代霊園の持ち物?よくわからんかったけど、中に入るには止めて、裏手に回ると、今度は二手に道が分かれてた。
右側は下りの道。一方、左側は見える範囲では平坦な道が続いてた。位置関係から考えると、左の道は霊園の方向やから、また霊園に戻ると思われる。
右は下ってることも考えると、方向的には県道に出ると思われた。俺は、大声で皆を呼んだ。そして、勝手な俺の想像やけど、左霊園、右県道説を告げた。すると、順が頷きながら、
「その考えは正しいと思う。ここは右やろ。」
「ウチは方向音痴やから、ようわからんわ・・・。」
そして、心はこれまでとは違う事を言い出した。
「普通に考えたら右や。そやけど、あまりにも簡単すぎて拍子抜けや。ここは左ちゃうか?と、思うんやけどな。」
こいつの頭にどないなシナリオが流れてるんか、ようわからんけど、左はあかんやろ。霊園から離れよ言うたんは心やで・・・。どう考えても霊園に戻るか、山深く潜り込むことになるで。そうなったら、霊とか以前に遭難っちゅうこともありえるで。四月も中旬やけど、さすがに食料も無い状態で遭難してもうたら、夜は気温も下がるし体力も奪われるから洒落にならん!
「そっちはさすがにマズくないか?」
「いや、県道を進まんかった時点で、すでにマズい状況や。それを打破するには意表をつくんも必要や!右は嫌な予感がするねん。」
俺は悩んだ。心の勘が鋭いかは知らんけど、県道を進もう言うた心や。そやけど結果的には山道を進んだんや。次は心の意見を聞いてもええんちゃうかと・・・。
でも・・・でもや!ここで心の言う通り進んで霊園に出てもふりだしに戻るだけやし、どう考えてもこの方向では簡単に下山するんは無理な気がする。
「あっ!あんなとこにマンホールがある・・・」
突然、麻紀が言う。振り返ると、小屋の脇にたしかにマンホールがある。別に普通やん・・・
と、スマホがブルった!
慌ててスマホを取り出す。
「え?え?えええ??」
画面を見る俺の表情はきっと引き攣ってるはずや。その異常な空気を察したのか他の連中も画面を覗き込む・・・
そう、そこには何も起動させた覚えはないのに動画が映し出された。それも、今、見ている光景。遠くにマンホールが・・・
「こ、これって、映画であったシーンちゃうの!嘘!ちょっと洒落ならんよ!」
麻紀が今にも泣きだしそうな震えた声を出す。順は冷静に、アングルを見てカメラが設置されてへんか辺りを確認してる。
そして、心は、
「来るで!きっと来るで!」
どっかで聞いたセリフを口にする。
「マンホールや!マンホールの蓋が取れた・・・」
たしかに画面に小さく映るマンホールの蓋は動いてるように見える。でも、実際には動いてへん。誰や!こんな悪質なイタズラ動画送りつけたやつは!
俺は必死に戻るをタップしたり電源を切ろうとするけど、全く反応せえへん。
「おかしいなぁ。アングルから考えてあの辺にカメラないとおかしいねんけど見当たらへんな。録画なんかな?」
相変わらず順はカメラがあるはずと、周囲を何度も見回す。
「太一!?なんか出てきた!」
そう言うと、俺の背中に隠れる麻紀。画面を覗き込むと、マンホールから何かが出てくるのが見えた。悪質にもほどがある。実際、目の前にあるマンホールは閉まったまま微動だにしてへん。
「こらやばい!頭も出てきたで!」
心も顔が蒼い・・・。もう麻紀はすでに画面を見ず、俺の背中で震えてるだけや。そして、ついにマンホールから完全に人の形をした得体のしれへん者が現れた。黒いワンピース?らしいものを身にまとった女のように見える。おいおい!マジかっ!
だんだんその女は近づいてくる。
どうするねん!まだスマホほとんど新品やねん!俺は一瞬その事が脳裏を過ぎりスマホを破壊することが出来んかった。
「太一!何してるねん!早く壊せ!」
こら!他人事やと思って無茶言うな!まだ一か月も機種代金払ってへんねんぞ!こんなことやったら、なんちゃらサポートに入っとくんやった・・・
そうこうしている間にも女はどんどん近づいてくる・・・
「もうあかん!間に合えへん!殺される・・・」
やがて、女は画面いっぱいになり、頭が・・・
『ゴンっ!』
え?何?今の音・・・
画面の向こうでは女が頭を押さえて蹲ってた。どうやらスマホの画面が小さすぎたんか、出ようとして画面の向こう側で頭を強打したらしい・・・
そんなあほな・・・
そこで、動画は終わった。その後、メールを受信している事に気付いた俺は、まだ恐怖で震える手でメールをタップした。すると、それはおかんからやった。
『おもしろい動画見つけたで!ビビりなや!』
へ?おかん?おもしろ動画???一瞬、理解できんかったけど、どうやらおかんのイタズラメールやったようや。このタイミングで、しかもこの場所?そんな偶然あるんか?腑に落ちない点は多々あったけど、とりあえずはおかんのイタズラということが判明して麻紀もその場にへなへなと崩れ落ちた。
「お、おかん、タチ悪いで・・・勘弁してくれよ・・・」
心も相当恐怖やったんか、少し声が震えてた。順はなんとなく気づいてたんか、それともこういうことには平気なんか、笑ってた。爬虫類捕まえて背中に入れたろかと思ってまうくらい爆笑してやがる・・・
「たまたま、ここにおるときにそんな動画来るんはたしかに恐怖やけど、ビビり過ぎやで!多分、誰かがここで撮影したのをME TUBEに投稿してんやろ。それにしても、太一のおかんは凄いタイミングで送ってくるわ!」
順は笑いが止まらんようで、それにイラっと来た麻紀が順の頭にゲンコツを喰らわした。今度はそれを見た順が爆笑や。なんとか場が和んだ。とは言え、なんで操作出来んかったんか、それになんで勝手に再生されたんかは謎のままやけどな・・・。




