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「よっしゃ!とりあえず第一の難関は突破したで!太一、車を門の近くまで移動や!」
「それより、自販機の奥に扉あったやろ?あそこ管理室かなんかちゃうの?あそこで頼めば開けてもらえるやろ?」
「あちゃあ・・・これやから素人は困るねん・・・」
心・・・おまえは一体何者や・・・そもそも何の素人なんや。
「それがしも心に同意でござんす。」
こっちにもおったわ・・・正直おまえらの方がよっぽど怖いんやけど・・・。
「あのな、あの扉の向こうはすでにこの世ちゃうで!このブービートラップがわからんか?さも、『管理室へ来てください』的な流れ・・・あかん!あかん!絶対あそこは入ったらあかん。」
そんなこと言われるとこいつの鼻を明かしたいのも含めてますます入ってみたくなるんやけどな・・・
「太一!心ちゃんの言う通りやで!絶対あそこはヤバい!早く車動かして!」
はぁ・・・。もうなんかおまえらこそ完全に呪われてるで・・・そもそも、5万歩譲って、霊的な仕業やったとしよ。大体なんで俺が呪われる訳?当然、人を殺したこともあらへんし、恨まれるような覚えもあらへん・・・
――― 本当にそうなの?
え?なんや!今の声!?
明らかに麻紀ではない女の声が多分右側の方から聞こえた・・・ゆっくりと俺は右に首を回す・・・
「うわっ!」
一瞬大声を上げてもうた・・・それはガラス越しに人の顔が映ったからや。
「どないしてん!」
心が叫ぶ。
俺はもう一度右を見た。心臓の鼓動がこれ以上早くなると、きっと血管が破裂するやろ・・・息を吸うのも辛い。あれ?顔は俺やった・・・そう、車内が反射して、ガラスに映っとただけや・・・俺としたことが不覚や・・・
「すまん!自分の顔があんまりにもイケメン過ぎて声出してもうたわ。」
「あんた、ちょっと病院で診察してもろたら?付き合ってウチが言うのもなんやけど、どっちか言うたらブサイ君やで!」
なんちゅうキツい一言や!付き合いたての頃は『イケメン!イケメン!』言いまくってたがな・・・まあ、とりあえず誤魔化せたし、ええやろ。と、思ったのに、順がいらんこと言いよった。
「今の驚き方は尋常やなかった・・・なんか見たな?」
「いや、見てへん。聞こえたような気がしただけや・・・」
「聞こえた?何が聞こえたんや?」
「いや、だから、俺になんでメールが来たんやろかって・・・。おまえらの様子では、霊的な要素が働いてるって言いたいんやろ?そやけど、俺にはなんぼ考えても恨まれるような事した覚えはないねん。そもそも霊の仕業=死んでるって事やろ?」
「まあ、生霊って事も考えられるけど、それで何が聞こえたんや?」
「過去を振り返りながら、恨まれるような覚えはないって自問自答してたらやな・・・女の声で『本当にそうなの?』って聞こえた気がしてん。それで・・・」
心は黙って考え込んでたけど、しばらくして、口を開いた。
「例え話やけどな、道を歩いてたとする。前からAさんが歩いてきた。太一とたまたま避ける方向が一緒で、Aさんは立ち止ってしまった。でも、そんなことはよくあることや。立ち止ったAさんと太一は軽く会釈して、そんなことは忘れて再び歩き出す。Aさんも同じや。」
なんかようわからんけど、まだ話は続くみたいやな。麻紀と順も黙って聞いていた。
「Aさんは、今度はBさんとぶつかってしまう。その拍子にBさんは転倒。Aさんは慌ててBさんを起こす。幸いにも怪我はなかったBさん。自分もちゃんと前を見てなかったとAさんに謝る。ところがBさんは、その出来事のせいでバスに乗り遅れてしまった。結果、Bさんはその日が大学の受験日やったのに試験を受ける事が出来ず、貧しい家庭だったBさんは志望校のみの受験だったために、止む無く浪人生活する羽目に。そんなBさんの姿を見たBさんの父は、自分の稼ぎが悪いんやと、夜も日雇いのバイトに明け暮れた。ある時不運にも、日雇いの作業現場で事故に遭い、Bさんの父は亡くなってしまった。さて、事の発端はAさんと太一・・・もし太一が反対の方向に避けて、Aさんと問題なくすれ違っていれば、AさんはBさんとぶつかることは無かった。つまりBさんの父が亡くなった原因は太一にあるっちゅうこっちゃ。世の中、自分では気づかんうちに他人の死に関わってることなんていくらでもあるで!」
む、無茶苦茶や!それを言い出したらキリあらへんで・・・そんな事で恨まれるんやったら、世の中の人間全員恨まれる事になるがな・・・




