21話
「あらら~まさか鬼王を倒すなんてね」
美の女神が感慨深く言葉をきりだす。
「まぁ当然よ。彼には才能があったわ。能力の適合と言うずば抜けた才能が…まぁ彼の居た世界では全く意味のないものだけれどね」
能力適合とは本来は普通の人間には全く意味の無い才能である。
しかし紅桜のその特筆すべき能力は素晴らしい切れ味でも武器の変形でも、桜の花びらを散りばめた圧倒的攻撃力及び防御力ではない。
能力の吸収だ。
殺し倒した相手から一定の確率で。
そして傷つけた相手からでさえも能力を吸収する能力
それが紅桜の特筆すべき能力だ
「流石は人の運命を司る神ね才能も見抜けちゃうなんて」
暗い闇の部屋でその赤い髪をかきあげて美の女神はその名に恥じない美貌を向ける
「はいはい。どうもです。私は少し背中を押しただけよ。私よりあなたの加護の方が良いわよ」
美の女神の加護。
美の女神に愛された物は戦場にて一騎当千の力を受けると言われる加護である。
ちなみに運命の女神の加護は加護された人間に降りかかる災悪に抗えるようにするべく試練を与えると言うものだ。
今回の鬼王との戦いは運命の女神からの嫉妬?試練で有り。
試練を乗り越えたのはトシの力でもあるが美の女神からの加護が大きいだろう。
まぁ2人とも少しいやかなり肩入れしているが。
2人が今回のトシの戦いを話している時に神達の臣下の天使が部屋を訪ねた。
「失礼します」
「あら?なにかしら今、私忙しいですけど」
倒れて眠りにつくトシもいいわぁと眺めている運命の女神はあからさまに不機嫌に答える。
「ハッ!お忙しいところすみません!しかし急な案件が…」
顔色を青くしながら
天使は答えるが言葉に詰まる
「何かしら?」
「ハッ!アテネ様が管轄する世界にて魔界の者が動いていると情報が」
天使の報告を聞き一瞬だが顔しかめる運命の女神ことアテネ。
「わかったわ。あなたは下がりなさい」
天使を下がらせ対応を巡らさせる。
天界の神々の仇敵、魔界の魔王や魔族が動く
奴ら魔族とは何度となく矛を交えた相手だ。魔族は神々の管理する世界を破壊しまたは魔族による信仰で支配し神々の力を削ぎ落としいずれまた来るで有ろう戦争に備えて力を蓄える積もりだ。
それが今回は私の管理する世界に来たということ。
今回が初の襲来と言う訳では無い。
今回で二回目だ。
前回は神の祝福を受けた勇者達が魔族を退けた今回も同じことをすれば良いと考えたところで思考を止める。
トシに任せて見るのも一興だわと
前回の進攻はあんなにも支援してやったのに人間達は退けるだけで精一杯だったのだ。
トシなら魔王も倒してしまうのではないか?
魔王を倒せば彼は神の一員に成れる可能性が有る。
前例が無いがその功績を上げた者が居ないだけだ
そう考えていると自分が笑みを浮かべているのに気づく
楽しくなりそうだ。