表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒百合のネイト  作者: 涼月
第二章 真夏の訓練日記
6/9

Practice2 旋回

 私は離陸した機体を一宮さんが指定した周回コースに乗せた。

すると、後席の一宮さんが私に声を掛ける。

「初飛行の感想は?」

「本当に気持ちが良いです。扇風機に当たっているみたい」

扇風機、そんな言葉が出るほど上空は涼しい風が吹き渡っている。夏の日差しは地上に居るときと同じくらい強いのに。

「じゃあ方向舵を使わずに旋回してみろ。まずは右、その次に左だ」


 操縦桿を右にゆっくりと倒す。すると機体は右に横転し、下降しながら旋回を始めた。

「あ、その調子で急旋回もやってくれ」

一宮さんは注文を追加する。

さらに機体を横転させ、操縦桿を引く。

「上出来だ。左も同じ要領で頼む」

「こんな感じですか?」

こんなの簡単過ぎるのでテキパキと一連の動作を復習するようにやってみる。

「OK、さっきの飛行ルートまで戻れ」

 真正面には佐渡の山々が近づいてきた。そろそろ旋回して飛行場へ着陸すれば訓練終了だ。

物部さんも写真で映っていたあの頃、この山々を見たのだろうか。

「英国軍機だ」

 不意に、一宮さんは私にそう叫んだ。

とっさに辺りを見渡してみたけれど、そんな影は何処にもない。

「居ませんよ、そんなの」

「見えるんだよ、俺には。相手には気付かれていないな・・」

「訓練続行だ。さっさと着陸しろ」

「その飛行機は?」

「ほっとけ、今から夕香が迎撃に出たとしても絶対に間に合わない」

 その飛行機はやはり私の目で確認することは出来なかった。

一宮さんは目が利く方なのだろうか?

「黒河、」

「はい」

「お前もいつかは彼奴らを墜とす日が来る。そのために本ばっかり読んでねえで、遠くを良く見て目をできる限り良くしておけ」

「夕香さんが宿題にして出してくるんですよ」

「・・そこは相談する」

一宮さん、夕香さんには頭が上がらないんだな、たしか基地には二人しかいないって聞いたこともあった。

「夕香さんとはどんな関係なんですか?」

「えっ、それはまあ・・先輩、後輩の仲だな」

「一宮さんが後輩?」

「いや、俺が先輩だ。お前、写真みたろ、あの頃の彼女を訓練したのは俺なんだ」

「そうなんですか。でも、あんな綺麗な人すぐに取られちゃいますよ」

「・・・別に、さっきも言った通り先輩、後輩の仲だ。そこまで首を突っ込みたくない」

そこからは二人とも終始無言だった。








  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ