prologue4 写真
家に帰った私は物部さんから貰った航空関係の本を眺めていた。
どれも、専門的な用語ばかりでまともに読む気にはなるものではない。
私は半ば、この偽りの夢を諦め始めていた。
本を閉じて、最後に残った茶封筒の封を開ける。
その中には、三枚の写真が入っていた。勿論、全部白黒写真だ。
一枚目は高空から見たであろう、見知らぬ街だった。
結構、綺麗だと思ったけれど、私自身あまり興味はなかった。もしかすると、物部さんの趣味なのかもしれない。
二枚目は物部さん自身の写真だった。飛行機の固定脚に寄りかかって笑顔で写真に映っている。
写真の裏には昭和7年訓練修了と雑な字で書いてある。
今の彼女に比べると結構若い。私と同じ位だろうか?あと、髪は肩まで伸ばしてはおらずショートカットだった。
彼女の笑顔は眩しかった。それは、一体どこから来ているのだろう、一人前になれた達成感からなのか、自分の望んでいた高空へ向かう事が出来るからなのだろうか、後ろに映っている飛行機よりも彼女の笑顔に惹かれてしまった。
最後の一枚は、誰かが映っている訳でもなく、物部さんの趣味というわけでもなさそうだ。
映っているのは美しい飛行機雲の尾をループさせる二機の戦闘機だった。
ただ、どの写真より、私が感じるものは大きかった。
「この続き」が見てみたいのである。この二機は戦っているのだろうか、美しく飛行機雲の尾を引いて、抜きつ抜かれつ青空にループを描いていく。
この一枚で私は義勇軍に入ることを決めた。