prologue3 理由
「ちょっと此処で待ってろ」
私が連れてこられたのは待合室のような場所だった。
私は傍にあるソファーに座る。ソファーの隅には丸められた新聞が置いてあったのでそれを広げて読んでみる。
一面、二面くらいに世界情勢についての見出しを読む。
「英国、高まる影響力」
記事の内容は中華民国が英国の傘下に入ったことを、軍事、経済、外交の面から見るもので
いつか、中国だけでなく、日本にも攻めてくるのではないだろうかと記事は締めくくっている。
「待たせたな」
そう言って帰ってきた一宮さんは一人の女性を連れていた。
髪は肩まで伸びる程、長く少しばかりパーマが掛かっている。いかにもお姉さんって感じだ。
「初めまして、私は物部 夕香。ようこそ佐渡義勇軍航空隊に」
彼女は落ち着いた面持ちで話し始めた。
「よろしくお願いします」
「飛行機に乗りたいと言っていると聞いたけど、ここは義勇軍って形を取っているけど軍は軍なの。この地方に有事が起これば私達は銃を取って戦わなければならない。そこは、覚悟がある?」
「はい・・」
私は少し不安になって言葉を濁してしまう。
「あら、不安なの?」
「夕香、あんまり責めるなよ。この基地、俺ら二人しかいないんだぞ」
一宮さんは頭を掻きながら話す。
「黙って。そういう関係の本を持ってきてあげるから。家に帰ってゆっくり考えて」
そういって物部さんは二、三冊の分厚い本と茶封筒を手渡してくれた。
外は雨が降っていたので、帰りは一宮さんの車で家まで帰る事になった。
「花を飾っている方があの物部さんなんですよね。私、優しい方だと思っていたんですけど」
「結構、厳しいってか?」
「はい」
「あいつ、空の怖さとかそう言うのを良く知ってるからじゃないかな?飛行機は燃料がなくなったり、故障したりすると本当に命取りだし、戦争なんかじゃ、鉛球の一つ食らっただけでも、火を噴いて派手な火葬になっちまうからな」
「それなのになぜパイロットに?」
「それは、人それぞれだけど、あいつは眺めのいい場所が好きでな。飛んでいるときの眺めは最高なんだとよ。俺にはちょっと理解出来ないけどな」