prologue2 上官
その夜、私は先生に呼ばれた。
「先生の高校時代の友人に飛行機乗りを目指していた奴がいてなぁ」
先生は陽気に話しながら歩く。
「あの・・」
さっき言ったことは全て嘘です、と、言おうと思ったけれど陽気に歩く先生には、もうそんなことは言えそうになかった。
私たちが住んでいた小さな町からを過ぎ、暗闇に包まれた森を抜けると、開けた丘にやってきた。丘の先には海が見える。
「着いたぞ」
真正面に煉瓦と品のある装飾が付いている門が見える。そこには、佐渡義勇軍航空隊というレリーフが付いていた。だが、それは結構汚れていて、此処が飛行場という事を示すだけの物だとよく分かった。
その後、現れた飛行場も粗末なもので飛行場というよりか、除草された大きな長方形だった。
そこに大きな建物が二棟、小さな建物が二、三棟あり、そこからほんの僅かに明かりが漏れている。
正面玄関に来ると、一人の男が迎えてくれた。
「久しぶりだな、一宮」と先生が言う。
「久しぶり、その子は?」
「黒河 由里です」
緊張しながら自分の名をはっきりという
「此処は人手が足りなくてな・・先生はもう帰ってもいいぞ。そこの姉ちゃん、ぼけっと立ってないで早く来い」
「は・・はい」
そう言われて私は彼について行く。
基地内はあのレリーフや飛行場と比べて粗末な感じはしない。床も掃除されているし、蛍光灯はきちんと付いていて、机には花が置かれていた。だれか、マメな人がいるのだろうか?
「あの花・・だれが飾ってるんですか?」
思っていることをつい口に出してしまう。
「ん?あれは物部って人の趣味だ。お前の上官のな、まあ俺もそうだが・・」
「あの、あなたの名前は?」
「俺は 一宮 灯記だ。宜しく」
上官。ここは軍隊なんだ・・でも、花とかも置いてあるからみんな優しいんだろうな・・
私は勝手にそう思ってしまっていた。
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