星民性調査
フィクション
あなたの長所は何ですか?短所は?好きな食べ物は?嫌いな食べ物は?出身地はどこですか?アメリカ?ロシア?中国?そもそも地球出身なのでしょうか?
いきなり失礼しました。私はライラー825。一端の、えっと…宇宙飛行士です。沢山の星を旅して、様々な生命体の調査をしています。地球へ来るのは初めてなもので、先程はついはしゃいでしまいました。ごめんなさいね、この星の礼儀というものを知らないもので。時間が有り余っているという訳でも無いので、早く調査を済ませてしまいましょう。ご協力をお願いします。
あなたの名前は?…ほう、美しい響きの名前ですね。ほかの星には無いようなものだ。その文字を使うということは、あなたはもしやアジアの方ですか?…そうかそうか。日本の方でしたか。いやあ、本物の日本人にお目にかかれるなんて、実に光栄だ。
年齢はいくつです?ああ、嫌じゃなかったらで。最近の地球人は年齢を聞かれることを極端に嫌うと聞きましたから。
それにしても、あなたの受け答えは素直で丁寧だ。翻訳機越しでもその星民性が伝わるのは実に良い。あなたのその姿だって、そこまで洗練されて美しい身体を持った生命体は他に居ませんよ。本当に綺麗だ。
姿といえば、私の姿はどう見えているのでしょうか?生命体によって、私たちの姿は違うように見えるらしいのです。昨日なんか、相手には私が食べ物に見えたようで、散々な目に遭いました。あなたの反応を見る限り、少なくとも食べ物には見えていないようだ。やはり、ディスプレイの中に私が居るように見えるのでしょうか。
ああ、あとこれも聞いておかないと。私の声は聞こえていますか?それとも、文字として処理されているんですか?…そうですか、やっぱり文字としてですか。ということは、まだ地球人に我々の声は届かないらしいな。参考になりました。
最後に、私たちが何者かお話してから帰りましょう。気になって仕方がないと思いますからね。
私たちは宇宙飛行士です。でも、言語によって少しずつ意味が変わって来ちゃうんですよ、私たちの仕事って。ある言語では宇宙飛行士、ある言語ではスパイ。ある言語ではテロリストと訳されちゃうんです。めちゃくちゃでしょう?私も困っているんです。
ねえ、気になったことはありませんか?何で街中にはあんなに大きなディスプレイが沢山あるのか、何故ここまでデジタル化が進んでいるのか。これはね、地球人の技術力の進歩だけが理由じゃないんですよ。 ご覧の通り、私はディスプレイの中に、文字としてあなたの目に映っている。地球人にはそうやって見えるらしい。我々はそれを利用して、交代で地球人を監視しているのです。我々の先祖が昔の地球人に接触、寄生し、ここまでの技術を創り上げ、社会のデジタル化を図った。だから、ここ最近地球では急速に大きなディスプレイ広告が増えているのです。全ては我々の侵略のために…。
でも最近、地球人の星民性が変わってきたらしくて、調査を依頼されたんです。改めて地球人を調査してこいって。どの地球人に協力してもらおうかと悩んでいたところ、あなたが目に入ったんです。あなたは言わば、現代の地球人代表ってわけでよす。でも、昔とあまり星民性は変わっていませんね。少し残念です。
…おっと、宇宙警察が追ってきたようだ。私はこれでおいとましますよ。もしかしたら数年後、いや数百年後、我々が地球を侵略できた暁には、再び会えるかもしれません。その時を楽しみにしていますよ。
それでは、また。




