齋藤麻衣Side
私は可愛いと思う。
アイドルになってもその認識は変わらなくて、世界で一番私が可愛いと思っている。
逆にそれぐらいの気持ちがないとこの世界はやっていけない。自己肯定感を高く保っておかないと
女性アイドルを男の人が推してくれたりはしない。
だから余計に彼の存在を覚えてる。
あれだけ私のことを推してくれている男の子を意識しないなんて無理に決まってる。
加藤正行くん。
北身崎高等学校に通う高校2年生、家族構成は父と母、姉、妹に正行くんを足した5人家族。好きな食べ物は味噌ラーメンで趣味は読書、出身地は埼玉県。
他にも通っていた小学校・中学校のことや背中に傷があることも知ってる。
私が正行くんのことで知らないことは何もないという自負すらある。
何より純粋に応援してくれているのは彼の目を見れば分かる。そんな彼には申し訳ないけど、私はとても不純な理由で正行くんと接している。
正行くんと結婚したい。
それが私の望み。もちろん、アイドルとして一番高いところに立ちたいという気持ちはあるけど、それと同じくらいに正行くんのことが大切。
正行くんには私だけを見ていて欲しい。
だけど、正行くんは私たちのグループ『アムール』を推してくれている。私だけを推しているわけではなく、グループを推している。ということは私以外の4人のことも同じくらいに推している。その証拠として握手会では毎回全員のところに顔を出してくれる。その度に熱い気持ちを伝えてくれているのは嬉しいし、グループとしてはありがたい。それだけ熱心に応援してくれているファンがいることはとても良いこと。
女として、正行くんのことを狙う一人の人間としては本当に止めて欲しい。私以外の女のことなんて気にしなくていい。私だけを見て欲しい。
そして、残りの4人も正行くんに対して特別な感情を抱くのは必然だった。気付いた時は、全員が同じ男の子を好きになっていた。男の子が少ない世界で、女の子と近付きたがらない男の子も多いのに、正行くんは私たちのことを恐れず、応援してくれている。
もちろん、正行くんはアイドルの私たちだからこそ応援してくれている。アイドルじゃなくなったらもう私に興味を抱いてくれないかもしれない。
それでも…私を含めて残りのメンバーも正行くんを好きになり、できれば個人的な関係も築いていきたい。
アイドルがファンと特別な関係を築くのはあまりよくないと言われている。あくまでアイドルとファンの関係でそれ以上、先の関係に行くと破滅する可能性もある。
でも…その先に行きたい。
だから、私…いや、私たちはもっと正行くんと近づけるように色々と考えた。どんなことをすれば自然と正行くんとお話したり、お出掛けしたりできるのかと。
考えた結果として一つの妙案が思いついた。
それは正行くんを私たち専属のマネージャーにすること。
正行くんはまだ高校生なので正式に仕事としてやってもらうわけにはいかない。あくまで学業が優先なので、正行くんの都合の付く日だけで構わない。
だけど、マネージャーになってもらえば近くでお話したり、二人でどこかに出かけても問題ないはず。本当は私だけのマネージャーにしたかったけど、他の4人がそれを許してくれるわけがない。他のメンバーだってあわよくば自分だけが甘い蜜を吸いたいに決まっている。
女が男に応援してくれていて、もしかしたらあんなに良い人と結婚できる可能性すらある。
こんな夢のような展開を逃すつもりはない。




