表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/23

9話 自業自得ですか!?

後半がちょい微えろかも…

でもすぐコメディに戻ります。

漆黒の長い髪が枕にひろがり小さな呼吸音が聞こえる。

また眠りに入ったみたいだ。

僕が近くに座っても、気付かないくらいだから余程眠かったんだろう。


「……普通。起きるだろ。普通は」


愚痴ってみても、

起きる気配を見せない。


(魔王のくせになんて無防備な……)


こんな姿を勇者の目の前にさらしたら普通は消されるだろうな。

いくら約束でも、野蛮なやつだったら即あの世じゃ……。

それをやらない僕もどうなのかと頭を抱えた。








一定した呼吸音にこちらまで眠くなってくる。

いかん。いかん。と左右に首を降って眠気を飛ばすがこのままでは寝てしまいそうだ。


(まだ面白いものとか有れば起きてられるけど……)


辺りを見渡す。

白ベースのシンプルな部屋で、ベッドの近くにある机は紙束がどっさり置いてある。

後は小さなクローゼットとベランダが有るくらいで、

良く言えばシンプル。悪く言えば殺風景って感じが取れる。


別段楽しいそうなものなんてない。

強いて言うならこの変わり者の魔王だけど。

『爆睡ですか!?』てツッコミを入れたいけどレベッカのような扱いをされるのは嫌だし……。

でもこう寝てられるとちょっかい出したくなるのも人間の性だよなぁ。

魔王が起きるまでとじっくり観察を始めた。


まつ毛がクルッとして長い。

それでいて鼻はスーっとして高めで、白く透き通る肌してるしスベスベしてそう。

唇もぷっくりしていて柔らかそう。

そう、正に美少年!!


(って何考えてんだ!!僕……。でも女として完敗だ……)


「はっ!!いやいや、完敗とか勝負してないし!!第一にこいつは男だし!!」


思わず自らツッコミをかましてしまった。

魔王は起きる気配ゼロ……。


(騒がしかったでしょ!!なんで起きないの)


ベッドを叩くが、これも無反応。

自分が虚しくなるだけだった。


でも落ち込んでばかりでもダメだと僕が首を降って、


(えい!!こうなったら!!)


意気込みを新たに、次は触ってみよう!!

実はさっきからほっぺが気になって気になって仕方なかった。

だって、柔らかそうなほっぺたが目の前にあるのは誘惑以外に他ならないし、

やましいことなんてない、ない。

自分を正当化させて優しく触ってみる。


(うわー。スベスベだ!!)


ちょっとテイションが上がる。

まだ起きそうもない魔王に、調子が乗って髪を撫でてみるが髪もさらさらで柔らかい。


(なんだこいつ!!うっ羨ましい)


ちょっと嫉妬しつつも撫でる手を止めないでいたら、撫でていた手が小さな手と重なった。


「えっ!?」


魔王が起きたのかと思い急いで手を引いたが、それは出来なくて腕を引き込まれた。

突然の事で驚き、目をキュッと瞑ってしまった。

体が浮く感覚があった後に弾力性があるものに、落ちた感覚がちょっと怖く。

恐る恐る目を開けてみた。

目の前をちらっと様子を伺うと魔王の顔のアップ。

それに慌て顔が赤くなる。


(かっ可愛いって今はそんなじゃなくって!!)


見とれてる場合じゃない。

自分が巻き込まれては、誰がこの状況を打破するだ!!

と意気込みんだが僕は抵抗を試みて、あることに気が付ついた。

背中に手を回され抱き抱えられているような。

いわゆる抱き枕的ポジション……。

隙間ないし密着しているため行動も制限されてしまった。


(……どうしよう)


とりあえず抵抗をしようにも、この寝顔を見ると罪悪感が否めない。


あぁ大変なことになっちゃったよと僕は項垂れた。

こんなに困ってる僕をよそに幸せそうに寝てるな、おい!!

いっその頬をつねってやろうかと、自由な右手を動かして頬をむにっと掴んだ。


意外に伸びる、伸びる。

まぁ情けない顔になったところで離してあげた。


……本当、これだけ近いとどうしていいかわからない。

なんせ顔がドアップだし。


大人しくしとけばよかったと後悔をしていたりして……。


(起きそうもなかったから行動に出たんだけど……失敗だったなぁ)


はぁ……とため息を一つ。

でも見た目(子供)に反して強い力で抱き込まれてるよな。

よくそんな力が出るもんだと感心するぐらい。もしかして魔族は力強いのか?と考えたが魔王だからかに落ち着いた。


 さっきつねっていたところが多少赤みを帯びてきた。


(あっちょっと強かったかな)


八つ当たりでやってしまったような自覚はあるので、多少の後ろめたさはある。

自分でやっといてなんだけど痛みが和らぐように頬を撫でる。

 すると一瞬、魔王が笑みを浮かた風に見えた。


(……まさか起きてる?)


でも一瞬のことだし、

「魔王?起きてます?」


問いかけてみたものの返事なし……。仕方なく撫で続けていていた。が唇が気になった。

あっ決して変な意味ではなく、形もいいし色も赤くて……

だから純粋に、


「羨ましいなぁ」


呟きながら手で触れたら、触れていた唇が動き


「そんなに羨ましいの?」


驚いて距離を置こうとしたが、自分が抱き抱えられているのを忘れていて背中に力がかかる。


「危ないよ。急に動くと床に落ちる」


「なっ…だって!?それよりいつから起きて!!」


慌てどよめいている僕を魔王は微笑んで更に引き寄せられた。

魔王の胸に収まる感じに包み込まれた。


「ハッ離せ!!」


今まで、かつてないほど暴れてみたものの。全く効かないし、魔王が多少邪魔そうな感じだけ受け取れた。

でもめげずに抵抗をしてると耳元でため息と詠唱が、


(あっこれヤバいパターンですか!?)


強ばる僕に囁くように『チャーム(魅了)』と、魔法の耐久性も実力も弱い僕には跳ね返す力もなくあっという間にかかった。


「大人しく聞かないからいけないだぞ」


更にため息を一つ、聞こえた。

それとともにだんだんと体が熱く火照ってくる。


(何これ!?)


今までに感じたことのない感覚に戸惑いを覚え魔王の服を咄嗟に掴み耐える。

シワが付くほどの引っ張っている、それでもたまに耐えきれず声が漏れそになりなんとか飲み込む。だが熱は治まるどこか更に熱くなっていく。


「勇者?」


異変に気付いたのか魔王は僕の頬を両手で挟み上に向かせられる。が今は出来るだけ魔王に顔を見せたくない僕は反らするが、やはりそんなことは出来なく藍色の瞳と見つめ合う。


「…大……じょぅぶ………気にし…なぃで……」


「全然大丈夫じゃないだろ!?」


「…ぁ……はぁ……いぃから………離して……」


強めに言い放ったが、さっきまで見ていた顔なのに、たんだん視界がぼやけて視点が定まらない。

頭の中の隅では、ずっと見ていたいのに……と思ったり……。でももう何も考えられなくなっていた。

もう火照る体が言うことをきかないから……。


 すると魔王の指が僕の目尻をすっとなぞり。透明な何かを拭われた。

きっと涙だろうかぁ少しだけ視界がはれ、困った顔の魔王が見える。と思ったら、頬と頬が当たりそうなぐらいまで近づいて耳に息を吹きかけられた。


「…ひぁ!!なっ………なぁにを!!……」


息がかかった瞬間に電気が走ったかのような衝撃が体を走る。

その様子を確かめてから魔王は離れて、


「勇者。まさか魔法の耐久性は全くないのか?」


「……………う…うん……たぶん…」


「……そう言うことは早く言え。手遅れになるぞ」


「へっ?」


問われたことに頭がついていかず、ただアホぽい返事をしてしまった。


魔王は気にせず僕の額に触れて、また呪文を唱え始める。


僕の体が余程熱いのだろう。魔王の触れた手が冷たくて気持ちいい。

そんなこと思いながら僕はただ腕の隙間から魔王を見ていた。


すっと手が離れると唱え終わっていた。


「解いたからもう大丈夫だ。……勇者あれでも初級の魔法だぞ」


「…しっ……知ら…なぃもん……」


「だからあそこまで普通の人は効かないから」


顔を片手で包みながら眉を潜めながら言う。がクスって急に笑って


「俺を触りまくった罰だなこれは」


「!!」


急に何を言い出すんだこの魔王はと起き上がろうとしたが、まだ体は言うことを利かず目だけで訴えたが……


「違うって顔してるけど俺の髪を撫でてるときから意識は戻ってた」


「なら早くいえや!!」


あっ呂律は大分戻っていたみたい。

内心安心たが魔王は頬を膨らまし、


「だって触られただけなんて損じゃないか、だったら俺だって触り返したい!!」


「どんな理屈だ!!」


「それは勇者に言われたくないよ。君がはじめにしてきたんじゃないか!!」


「っうぅ」


図星なために言い返せない。


(確かにそのとおり……だけど)


僕はキリッと睨み。


「でも寝たフリをするあんたもいけないだぞ!!それに君じゃなくてアッシュだ!!」


魔王は冷ややかな目で見下し、


「それで?」


「えっ?」


「寝ていただけがそんなに悪いのか?」


「えっと……。寝てると寝たフリとはわけが違って……

 だからもう嘘をついたのが悪い!!」


半ば叫びぎみに言い放つとクスって魔王は笑っていた。

冷や汗が背中を濡らす。


「でも俺は途中本気で寝ていたぞ。嘘じゃない。それに起こしたのは勇者だ」


「……」


優しい口調で言われたが目が笑ってない。

正直怖いですよ。

この魔王は……。

返事が返しづらくて無言になっちゃった僕も僕だけど。


すると魔王は急に僕の頭を撫でて、


「だから、その……。

 いくら朝だとしても男の部屋に1人でもう行くんじゃないよ」


「えっでも」


「返事は?」


「うぅ……はい」


無理やり頷かせた感が否めないけど。

どうやら心配して言ってくれたみたいだから素直に頷いとく。


よし、と魔王は満面の笑みで納得し撫でていた手が離れた。




 魔王はベットからおり、くるりと勇者の方に回る。

僕も重い体を起こして少年にみえる魔王を見る。


「じゃ朝御飯にしようかアンジュレッタ」


「!!」


一瞬、時間が僕の中で止まる。


「どうしたの?」


「その呼び方はやめて」


「可愛いのに。とうんじゃ、アンジェで」


「魔王……。人の話聞いてました?」


僕が問いかけても、笑顔でアンジェ、アンジェと言ってる。


(あーこれ……無理パターンだよね)


僕は苦笑するしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ