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8話 起床

レベッカが足を止めて笑顔で振り向かれた勇者です。


そっそんな満面の笑みでこっち見るのやめてください。

いわゆるこっち見んな的な…

げんなりしながら、此処までつれて来られた事は言うまでもない。


だっていきなり『魔王〜護衛隊長』に任命されて、

しかもここまで猛ダッシュだ……。

ありえんし!!あぁ流石魔族。


(感心するよ……。本当に)


あっそうそう、今僕が目の前にしてるのは巨大なドア。

昨日、魔王に初対面した所のドアだけど

今じっくり見ると、洒落ていて彫刻などされている。

でもここまでの大きさは無意味だと思う。

と頭の中でツッコミをかましていると、

レベッカはずっと僕の腕掴んだままドアに手のひらを向けて、


「ここが魔王様の所よ。でも……」


「でも?」


「今の時間は自室で寝てるはずだから襲…起こしに行きましょうか」


すごく輝いた笑顔で言われた……。


「えっちょっ!!今襲うって言いかけたよね!!」


「さぁLet's go!!」


「「って無視ですか!!!!」」


レベッカは片手を振り上げ意気揚々に歩き出す。

本当、パワフルですよ彼女と呆れながら。

掴まれいた腕にまた力強く引きずられていく。








広い廊下をひたすら進んでいく。

引きずられて体勢的にも辛くなってきた。


「レベッカ。もう自分で歩くから、だいじょ…」


「ここよ」


遮られた。

ってか着くの早!!

しかもまだ掴まれてるし!!

今がチャンスと腕を振るがビクともしない。恐るべし……。


そんな事はお構い無しにレベッカは、首元からネックレスらしい紐を手繰り寄せてアクセサリーらしい物を僕に見せた。


「アッシュこれ何だと思う?」


「えっ鍵だよね」


「大正解」


見せてくれた鍵を首から外し目の前のドアの鍵穴に通す。

ピッタリと鍵穴にはまり、捻るとカチャと小さな音がした。

ドアノブに手をかけて押すと少し開いた。


「ふふ。開いたわ」


「えっちょっいいの」


「いいの。いいの。

 こんな時間まで寝てる方が悪いんだから」


これまで掴んでいた腕をスルッと外し、

慎重にドアを開ける。レベッカは手引きしながら、部屋の中へ進んでいく。


そもそもなんで掴まれていたかは疑問だが、

やっと解放されてほっとする。が直ぐにその安息は絶たれた。


なぜらなら……




『お兄さま!!いい加減に起きなさい!!』




瞬時にハイジャンプして寝台の膨らみに向かって一気に距離をつめた。

たぶん寝台で寝ているであろう魔王に股がる。で、あのセリフだ。


(どんな娘だよ!!)


内心苦笑だ。

たぶん僕の顔はひきつっていたに違いない。

掛け布団がもぞもぞ動いてる。

いや、もがいてると言った方がいいかもしれない。


「〜っ!!」


なんか声が聞こえる。うめき声みたいな……。


「お兄さま。いい加減に!!」


「重いわ!!」


あっ流石の魔王も切れたらしい。

レベッカが股がっていたのにはね除けて、ベッドの上に立つ。

どこにそんな力が小柄な体に有るのかと、疑ってしまいが目の前の状況に僕は呆然としてしまう。


「痛い!!お兄さま急に立たないでよ」


レベッカは勢いよく床に落ちていた。

腰を押さえて撫でている。

まだ眠そうな藍色の目が、無理に睨みをきかしてレベッカを見ていた。

髪も息も乱れて、寝起きが最悪といた感じに表情から伺える。


「レベッカ……。今何時だ?」


「えっ6時30分だけど」


「俺は夜中の2時に寝たんだぞ」


「そっそれがどうしたって言うのよ」


どうしたもこうしたもと魔王は呟いて、更に険しい顔つきに変わりベッドを降りた。

床には同じ睨みを効かせたレベッカが座っていたがヒョイッと簡単に捕まえられていた。


「お兄さま離してよ!!」


「……」


無言で対抗する魔王はお姫様抱っこをして、廊下に連れていきレベッカを放り出す。


(って!!!!いいのか!!)


慌てて僕も扉に向かうが、魔王は小言を呟いて最後に『シールド』っと言う言葉だけは聞こえた。

駆け寄った事だけあって聞こえた言葉だが、この言葉は魔法だよね……。

勇者に冷や汗が浮かぶ。


(待ってよってことは……。閉じ込められた!!)


魔王は僕のこと気にせずまたベットに入って行く……。

ドアからは抗議の騒音が聞こえるが、これもほんの少ししか聞こえないから無意味だろう。

これも守られているおかげなのか……。

一様、こっちからも開くかと試みたもののやはり魔法で無理だ。

仕方なく脱出を諦めて魔王のベット隣にイスがあったので座った。


邪気ない寝顔ですやすやと寝ている。

このまま起きるまであとどのくらいかかるのかぁ。

僕はしばらく眺めていた。


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