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3話 理由と誤解

静まり返った部屋。

大きなカーテンの隙間から月明かりが僅かだが差し込んで魔王を照らし、月明かりが悲しげな笑みを更に儚く見せる。



さっきまであんなに騒いでいたのに。

主に美男子と魔王だけど……



魔王が浮かべていた柔らかな笑みが苦笑に変わり


「ははぁ……これでも私は26なのに。もうこの姿は10年も変わらない」


「!!」


だから見た目が子供。なるほどそうゆうわけかと納得した。

でも自分より9歳も上なのだ。なんか聞いていて悲しくなってきた。


「でも26って信じられない……」


「信じられなくても本当だ。私だってこんなの嘘だと思いたい」


魔王は片方の腕をもう片方で包え、

黒ローブの袖にシワがつくぐらいきつく摘んだ。


表情は相変わらず苦しそう。だがその表情は子供がするものとは思えない、

大人がするものだきっと……


「でもこのままでも魔王様十分可愛いんですけどね」


「ノア!!」


この場の雰囲気を読まず、淡々という美男子さんあんた凄いよっと僕は別の意味で感心してしまう。

美男子さんを睨み付けてる魔王もたえない苦労な事だと涙が出そうだ。


「"魔王"は別に可愛いとか必要ないだろ!!」


「まぁそうですが、でも可愛い方が私にとって目の保養ですし」


「目の保養!!男に使う言葉じゃないだろ!!

ノアも男なんだから!」


美男子さんはふふっと笑って魔王に近づき軽く頭を下げた。


「お言葉ですが、私は魔王様が大好きなので男とか女とか関係ありません」


すっと顔を上げて輝く笑顔で


「"魔王"に従っている訳ではなく"貴方様"だから使えているのですから」


「……そっそうか」


はいと頷く美男子さんは何だか嬉しそうに微笑んでいる。

なんか美男子さんが勝った感じ……

う~んつまらん。

魔王頑張ってくれと心の中で応援した。


「ところでちゃんと呪いをかけた相手を教えなくていいんですか?魔王様」


「お前が言うな……」


呆れた声が響く。

なんの事かさっぱりですと言うような態度の美男子さんに魔王も頭を抱えているようだ。

恐るべし……


でも何だかんだ、この雰囲気になれてくつろぎはじめている僕も怖い。

だってこの魔王だし。ねぇ。


「勇者……。 話を戻そう」


ため息を吐き、魔王は座り直す。


「呪いをかけた相手は10年前の勇者一行だ」


「ちょっちょっ……へっ?

……今何て?勇者一行?」


真剣な顔で語られた事が頭を真っ白にさせた。

深緑の瞳が見開き、驚きを隠せなかった。


「勇者ちゃんと聞いてるか?」


魔王の声で我に返った。

危ない危ない。

気を取り直して答える。


「うん。大丈夫」


「……話を続けるぞ。

 勇者一行って言ってもその仲間の魔術師だ」


「えっでも魔王が勝ったんでしょ。なんで呪いなんか……」


疑問しか浮かんでこない。

魔王に挑んだ"勇者"はこれまで誰一人帰って来たものはいなかった。

そんな魔王が魔術師ごときに呪いなんてかかってしまうだろうか……


「そう急ぐな。確かに一戦交えて勝った。

これでも私は殺さない主義だ。それに…」


「えっ!!横暴非道で血も涙もない魔界の王。"魔王"なんじゃないの!?」


驚きを隠せず思わず叫ぶ感じに言ってしまった。

魔王の言葉を遮って……

魔王は気にせず、淡々とめんどくさそうに話す。


「魔王が誰しもそうとは限らないだろう。

 第一殺しはめんどくさい」


死体なんて真っ平ごめん何て言うように、眉にシワを寄せ首を振る。


「嘘だ!!」


思わず叫んでしまった。

だって益々信じられないから。

じゃ今までの魔王のイメージを覆すことになる。

でもそれは認められない。

いや認めたくないが正しいかも……。

でも魔王は真剣な眼差しで僕を見つめる。


「嘘じゃない」


「……」


それでも心の奥では思ってしまう。

だって実際に被害にあった所を数知れず見てきたのだ。

それも酷いものだった。

だからハイそうですかと素直に信じるわけがない。

僕は鞘に手をかける。何時でも剣を構えられるように。


魔王もその行動の意図に気が付いたのか、

更にシワを深く刻み勇者に歩み寄る。


「勇者。ちゃんと話を聞けまだ終わってない」


さっきまで可愛いと言う言葉似合う彼だったのに、

今はその言葉より凛々しいがピッタリとはまる。

何より覇気を感じる。

子供でも魔王は"魔王"って事だと思い知らされた。


どんどん距離が詰められて行く。

思わず後ろに下がろうとしたが体が動かない。

あっ時の魔法か!!

見とれている場合ではなかった。

額に汗が浮かぶ。


「大丈夫。

 何もしない。だからちゃんと聞け」


もう距離はないが身長差は否めない。

丁度腹に頭がくるし、上目遣いで話してくる。

凛々しいんだか可愛いんだかとにかく脳内はパニックだ!


「人間界に被害をもたらす奴らは反乱軍だ。

 俺の考えがまず気に食わんらしい。

 そしてこの呪いをかけた魔術師と勇者は生きている」


強い眼差しで語られ藍色の瞳が真実だと告げているような気にさせられた。

その強さは更に光を増す。


「勇者。お前が考えていることは偽りの魔王だ。

 だから不安に思ってることも何も心配することはない」


真剣なピリッとした空気だったのに落ち着かせるような優しい雰囲気に変わった。

魔王は僕に抱きついてきて笑顔で。


「勇者契約しよう。この呪いを解いてくれた暁には守ることを約束しよう」

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